No.19 知りたくなかった事実
僕はミカゲさんの話を信じられなかった。いや信じたくなかったのだと思う。カイのお兄さんがかつて僕と面識があったということ。そして彼と出会った時に、僕が彼を救えなかったこと。それは《龍魔戦争》が勃発する直前の話だった。僕はその日、いつも通りに自分勝手に行動し黒炎会の幹部を追っていた。その黒炎会の幹部は、神国アメノミハシラに向かっていた大商人の物品を強奪することが目的だった。そしてその大商人の護衛をしていたのがカイのお兄さん、ランスさんだった。僕は旅の途中でその大商人とランスさんに出会い、共に大商人の護衛を手伝う事になった。これが後の悲劇の始まりだった。僕とランスさんとはすぐに打ち解ける事が出来、僕は彼にいろいろと相談をしていた。その当時の僕は、かつて所属していた部下を黒炎会により失くして1年経つか経たないかという時期で精神的に病んでいた。そして僕は彼にその事を相談していた。彼は僕の言葉を真摯に受け止めてくれた。そして僕の心の傷を癒してくれていた。だけどそんな時間は長くは続かなかった。もう少しでアメノミハシラ直前というところで黒炎会の襲撃を受けた。襲撃をしてきたメンバーの中には、僕が追っていた幹部もいた。僕やランスさん、そして他の護衛のメンバーも黒炎会の迎撃にあたったが、大商人が殺害されてしまい、迎撃にあたったメンバー達も1人また1人と殺害されていった。そしてランスさんは僕を庇って重症の傷を負ってしまった。僕はその場からなんとかランスさんを庇いながら必死になって、アメノミハシラまで連れて行き、ランスさんを街の憲兵に事情を話して引き渡し僕は逃げるようにアメノミハシラを去った。そして襲撃を受けた場所まで戻り死んだ者達の墓を建てた。そして直ぐに《龍魔戦争》が勃発して毎日、その日の事を忘れようと戦場を駆け巡った。
僕は、そんな事を考えながら山を下山していると、近くから矢の雨が降った。
「何の用事だいロビン」
僕は矢の雨を躱しながら矢の雨を降らせてきた元相棒に話かけた。
「お前に用があってな。今のは挨拶がわりだ」
ロビンは真剣な表情で僕を見つめた。