No.17 相棒への想い
今回はキャラクター視点が変わります。
ハルは登場しません。
俺は蓬莱の近くの森の中で焚き火をして夕食を摂っていた。
「相変わらず彼は面倒だなぁ」
俺は焼いた魚を食べながら、先程再会したかつての相棒の顔を思い浮かべて呟いた。ハル、それが俺の元相棒の名前だ。俺は昨年まで発生していた戦争でアヴァロン側の戦士としてハルと共に幾多の敵を屠ってきた。俺が弓で後方支援を行いハルが前衛で刀を使って敵を殺す。だが、その度に俺は吐き気と、どうしようもない胸の痛みを感じた。何故、敵だからといって彼らを殺さないといけないのか。彼らだって彼らの正義があったのだ。それなのに何故自分たちの正義を理由に殺さないといけないのか。そう思いながらも俺は何人も殺してきた。けれどある時、その戦争が非合法組織に仕組まれたものであることがわかり、それを仕組ませたのはアヴァロンとヘルヘイム、両国の過激派貴族だとわかった時に、今まで抑えてきた怒りが爆発した。そして戦争が終結した時には俺の中の何かが壊れていた。俺はアヴァロンを去った。理由はくだらないことで、何の罪もない人を苦しめてきた者達へ復讐をする為だった。その時から俺はあんなにも嫌いだった殺しを自らやるようになっていた。悪徳貴族には、その悪事をバラして築き上げてきた物全てを奪い、金になる物は孤児院や貧民街に住む者達に寄付をした。非合法組織の者達は、残らず殺してきた。けれども俺はそれをする度に心が虚しくなっていった。そして今日、その虚しさの正体がわかった気がした。それは、殺して奪うのに対してハルは心を壊さずに命を奪わないやり方で弱者を救っていた。それが虚しさの正体だった。
ハルは何も変わっていなかった。アイツは自分の記憶が戻らないことでどうしようもない不安を抱えて生きているのに、困っている人がいたら助けそれに対して何も対価を求めない。だから今夜もあの伯爵の悪事の証拠を事前に掴み叩き潰す為だけにあの場にいた。俺はアイツが羨ましい。俺もあんな風に生きたいとさえ思った。けれども俺は無理だ。何故なら俺はアイツを羨むと同時に鬱陶しくそしてアイツのやり方はアイツしか出来なくて俺はアイツではないからだ。
「さてとそろそろ俺は次の仕事に行くとするか」
俺は焚き火の火を消して夜と森の闇に姿を消すことにした