No.14 義賊の噂
僕は今、カイと共にアヴァロンの近くの小国『蓬莱』を訪れていた。なんでもここ最近、この辺りで貴族ばかりが狙われる窃盗事件が多発しているのだそうだ。そして狙われた貴族達に共通しているのは、悪徳貴族であり、裏では犯罪を揉み消したり、実際に犯罪に手を染めていたということだった。
「ハル、この新聞見てみろよ。また悪徳貴族から宝石や金が盗まれたらしい。民衆の間では、正義の味方とか義賊なんて騒がれているとも書かれてるぜ」
「まぁしかたないんじゃないかい。それに盗まれた金なんかは、孤児院とかに寄付されたりしてるようだしね」
僕達は、昼食をとりながら雑談程度に窃盗事件について話していた。
「そうなんだろうけど、今回の依頼相手に対してはかなり失礼じゃないか」
「それがどうかした。言っておくけど僕達はあくまでも、依頼相手の利益を守る為に引き受けた訳じゃないからね。依頼相手の悪事を暴く為に引き受けたからね」
僕は笑顔でそう言うとカイは呆れた顔をしながらも頷いた。
「そろそろ依頼人の自宅に伺おうか」
僕達は食事の代金を払って店を出た。
「成る程、ハルお前が依頼を受けた理由を聞いて安心したよ。今晩、君と会えるのを楽しみにしておくとしよう」
ハル達が座っていたテーブルの隣に座っていた男はコーヒーを飲みながら不敵な笑みを浮かべてスラッシャーを眺めていた