No.13 戦う理由
廃屋に入った僕はとりあえず先程の男に麻痺を解毒出来る薬を飲まして詳しく話を聞いた。彼の名前はカイ、人間でスラッシャーは予想通り、アヴァロンからの盗品が闇市で出回りそれを手に入れたのだそうだ。そして彼が求めている『リバイブ』のカードは昏睡状態にある兄を治療する為に必要だったらしい。
「これで俺はあらかた話したからな」
「ありがとうカイ君。僕はハルっていう名前でね、黒炎会絡みの事件を調査する傍ら、スラッシャーの盗難事件を調査してたんだよ。君の事情は、把握したけど、このカードは渡せない」
僕は『リバイブ』のカードを見せながらいろいろと説明した。
「このカードはね、とても貴重な物なんだ。だからどうしても譲れないんだ。君がお兄さんのことを大切に思っているように僕も大切に思っている人がいるんだ。その人達が傷ついた時に使えるように残しておかないといけない」
「アンタの大切な人って」
僕が質問に答えようとした時にドカンと近くから爆発音がした。
「その話はまた今度だ。黒炎会の別働隊が来たみたいだ。さっき倒した構成員達と連絡がとれなくなったから何かあったと思ったんだろうね。連中は報復が目当てだ。まぁこのまま隠れてやり過ごせるとは思うけど、この先には街があるからね。僕は奴らを徹底的に潰してくるよ」
「なんで関係ない人の為にアンタはそこまで戦える。さっきも俺がアンタに攻撃を仕掛けてくるって気づいたから、ここまで俺を連れて来たんだろう。周囲に被害が出ないように」
「カイ君、僕はね誰かの幸せが乱されたり泣いたりした姿を見るのが大嫌いなんだ。だから誰かの笑顔の為に戦うんだよ。そうしたら僕は心の底から、顔がくしゃって成る程嬉しいからね。だから戦うのさ」
「そうか、じゃあ俺も行く。俺も罪の無い人達が泣いたり傷ついたりしたりする姿見たく無いからな」
「わかった。じゃあ頼むよ」
「「アーマーアクティブ」」
僕とカイ君はスラッシャーにカードをリードして鎧と武器を装備した。
「やぁ世の中のゴミ。どうせ君達の目的は仲間達への報復だろ」
僕はカイ君と共に外へ出て黒炎会の構成員を煽る。
「我らがゴミだと。貴様等我らの恐ろしさを知らないらしいな」
部隊のリーダーと思われる男が何やら言っている。
「恐ろしいも何もお前等の仲間達を殺しておいたし、僕らを殺したいんだったら幹部クラスが出てこないと無理じゃないかな」
更に僕が煽ると部隊のリーダーは、流石に我慢の限界にきたらしく部下に指示を飛ばした。
「相手はたった2人だ。殺れ」
その指示と同時に僕らの方に黒炎会の構成員達が雪崩れ込んできた。
「相手はざっと見て術者が10人近接専門が10人、遠距離専門が9人それにプラスしてあのリーダーで30人だ。ハルお前は、右から来る奴とリーダーを潰せ。俺は左を潰す」
カイが盾と剣を取り出して構成員達と戦闘を開始した。
「僕も始めるかな。けど先ずは邪魔な遠距離専門と術者を纏めて片付けるかな。汝ら自身の影によって動きを制限されよ。《影踏み》」
僕は師匠がよく使う古術《影踏み》を使用した。
《影踏み》はその名の通り影を利用した古術であり、相手の拘束や出血した場所を止血する為に相手自身の影を使って動きを制限させることが出来る術である。僕もこの術を使うことが出来るが師匠が使うこの術は僕のものと比べ物にならない程強力な物だ。
「なんだ。身体が動かない」
「どういうことだ」
黒炎会の連中が術にかかり身動きがとれなくなったところで僕は一気に加速して双剣での斬撃で次々と殺していく。
「カイ君、遠距離専門と術者は全員潰した。僕はこのままリーダーを潰すから、残りを頼むよ」
「わかった。任せろ」
僕は更に加速してリーダーの前に立った。
「君の部下は、ほぼ全員殺した。次は君の番だよ」
「ふざけるなよ。殺されるのはお前だ」
「あーあこれだから馬鹿を相手にするのは嫌なんだよ。まぁしかたないな。汝自らの影の刃により自らを貫かれよ。《影刃・刺殺》」
僕は更に古術を使いリーダーを殺した。周囲を見ると丁度カイも戦闘を終了した様子だった。
「お疲れ様。さてと僕達は、早くこの場を離れようか。先程、僕の知り合いに連絡したからもう少ししたら魔王戦士団が到着するはずだ。巻き込まれると面倒なんでさっさと離れた方がいい。それと良かったら僕と一緒に来ないかい。アヴァロンには僕専用の研究施設があるんだ。だからもしかしたらお兄さんを助ける手掛かりが掴めるかもしれないよ」
「いいのかよ」
「さっきも言ったと思うけど僕はね誰かの笑顔が見れるならそれでいいんだ。だから君が良いならついて来なよ」
僕はそう言って鎧と武器の装備を解除して先程きた方向とは反対方向に向けて歩き出した。しばらくしてからカイがついて来た。
術の説明
《影刃》
《影踏み》と同系等の古術であり暗殺に特化した古術。《影踏み》と同様の手順で術を発動する。
この術の最大の特徴は色々な型があり状況に合わせて白兵戦から暗殺と汎用性が高い所にある