No.10 遺体
本日2本目です
「いきなり襲撃なんてヘルヘイムも治安が良いとは言えないね」
僕は其処でぶっ倒れてるワータイガーとワーウルフを見ながらレギオンとメデューサに話しかけた。
「わざわざご足労いただいているのに申し訳ない」
「まぁ貴国との戦争の後、ああいった輩が増えているのですわ。あの戦争はどちらにも非があって、どちらにも非がありません。ですがたまに逆恨みをしてああして襲撃したり、王の側近でも戦争は貴国が悪いから賠償させるべきだとか、戦争を再開させるべきと騒ぐ輩が後を絶ちません。それに貴方があの英雄である龍騎士であると判ればああもなるでしょうね、同じ魔族として情けない話ではありますが」
2人はヘルヘイムの状況を伝えてくれると同時に謝ってきたので僕はそれを制した。
「それよりもこいつらどうするんですか。ここに放置してても面倒な事になりそうですけど」
「それは問題ないですわ。もうすでに近場の詰所に連絡をいれるように蛇に遣いを頼みました。それよりも早く現場へお願いします」
僕は2人と共に言われていた場所に行くと無残な形でケットシーの女性が斬り刻まれている姿が見えた。
「よー|龍騎士やっと来たか」
「久々だな。後で酒飲もうぜ」
現場を保存してくれていたのは、ガーゴイルとグレムリンだった。
「久し振りだね。まぁ挨拶はそれくらいにして、遺体を詳しく見せてくれるかい」
僕はグレムリンに許可を請うた。
「いいよただ丁寧に扱ってくれよ」
「わかった」
僕はケットシーの遺体を前にして手を合わせた。
「それにしても酷いな。ただ間違いないのは黒炎会がやったってことくらいか。なぁグレムリン、この人って生前何やってたの」
「確か、黒炎会とか白氷会の事をかなり糾弾していた魔王様直轄の部隊の一員だった筈だぜ。なぁガーゴイル」
「確かそうだった筈」
「そうか、成る程ね。何となくわかった」
「わかったって何がだよ」
突っ掛かってくるグレムリンに対して僕は1から説明した。
「まずこの人、黒炎会のスパイだったんだよ。やたらと黒炎会や白氷会を糾弾していたのは、周りからの信頼を得る為だね。けど糾弾する余りに組織の大事な機密を意図せず話してしまった。そして、これ以上離されたら困ると思った黒炎会に始末されたんだよ。それにねこの人、着てる服はかなり高いんじゃないかなぁ。服に本物の宝石散りばめられてるし。それとこの人の部隊のごく一部の人達も調べた方が良いよ。悪いものは根っこからやらないと問題解決にならないだろうから」
僕はそう告げて遺体の側から離れた。
龍騎士
ヘルヘイムでのハルの通り名。この通り名がついたのは、ヘルヘイムとの戦争の際にハルが使っていた装備に龍の紋章が刻まれていたからである