ワインは心の薬
4話目
「花も毎回懲りないよなー
くじ運が悪いというか、何と表現したらいいのか」
「そんな事言わないでよ
出会った時とか付き合いだした時とか、そういう兆候一切無かったんだから」
かなりハイペースに飲み干す私のワイングラスにコポコポと新しいワインをつぐ
そう、結局早瀬のお父さんが経営しているバーへ来てしまったのだ
お酒とおつまみがタダって言葉に妙に惹かれてしまって
というか、最後早瀬との仕事だったから半強制的に連れてこられちゃった
「もう、ワイン注ぎ過ぎだよ」
「明日土曜だし大丈夫だろ」
また飲んだ先からコポコポとワイングラスに赤い液体が私に注がれる
何だかお酒の力で心が軽くなった気がしている
早瀬に連れてきてもらって良かったかもしれない
横にいる本人には照れくさくて言えないけど心の中で思わず呟いた
「でも、今分かってよかっただろ」
少しの沈黙の後ワイングラスに満たされているワインをクルクル回しながら彼は言った
今までの雰囲気と打って違う感覚が私に伝わる
「人事だから言えるのよ
もう私なんかのキャリアになるとね」
少しの間軽い沈黙が続く
「それ俺は違うと思う
そりゃ、浮気した相手が一方的に悪いけどさ」
「何よ」
「お互いこれで分かっただろ
他にお互いもっと合う相手がいることを」
お酒で思考能力が鈍ってるのかな
いつもなら即反論してるのに
「じゃあ、合う人って何よ
私は相手に合う様に十分向き合ってきたつもりなのよ」
「それは肩張りすぎ
お互い毎日そんな事してたら疲れるだろ」
妙に説得力のある話を口にチーズを運びながら聞いた
「で、そっちは彼女どうしてんの?」
「別れた」
「ふーん、お互い様ね」
私は飲んでいたグラスを彼のグラスへカチンと当てた
「俺は浮気されてじゃないんで」
「厭味ったらし」
こうして金曜の夜が更けていく
次もできるだけ早く更新します