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第二話 駄女神参上

物語内の時間が、少し戻っています。

分かりにくくて、すみません

「貴方は勇者として世界から選ばれ、ここに転移されてきました。どうか、どうか。この世界をお救い下さいませ」


 目の前に乳……じゃない、爆乳女性が頭を垂れている。

 周囲全てが真っ白な空間に、白い薄布の服をゆったりと着こなす爆乳美女が一人。

 黄金色に輝く髪に青い瞳。どう見ても日本人の容貌をしていないが、何故か言葉は日本語が通じている。

 しかし、話す内容は訳が分からないものだった。


 この乳女神の言うには、俺は異世界に召喚され転移してきたらしい。

 そして、魔族に滅ぼされかけているこの世界を救う勇者という存在らしい。

 そのための力として、神より絶大な効果を持つスキルを賜っている……という事だった。

 この場合、「スキルをやるから世界をどうにかしろ!」と、神から尻拭いを押し付けられた感が強いよなぁ。 


(ああ、こいつは……。乳に栄養を取られて、頭がすっからかんの乳女なんだな)


 そう頭の中で思考を巡らせる。

 頭を垂れたまま乳女神が、俺の思考にピクリと反応を示す。

 ……俺は最大限の天使の笑顔を造作り、目の前の乳女神に話しかけた。


「私は何をすれば良いのですか?」

(俺の思考を読んでいるじゃねぇのか?)


 乳女神は顔を上げ満面の笑顔でこう答えた。


「そんなことは一切ありませんよ♪」


 訪れる沈黙。

 青ざめていく、乳女神。

 笑みに込められている怒りが増していく俺。


 やっぱりこの父女神は、バカだったよ。

 言葉ではなく、思考の語り掛けに返事をしやがった!

 やはり、乳に養分吸われてんじゃねえか!?

 語尾を上げて楽し気に返事をしやがったが、大嘘だったな。

 神でも笑顔で嘘がつけるものなんだな!


 青ざめが更に進行し、蒼白になり始めた乳女神。

 あのさあ、この白い部屋と同化して見えにくレベルになるんだけれどさ。


 自分は容赦なく、更に乳女神を追及した。


「俺にトラックを突っ込ませたのもお前の仕業……だよな?

 トラック突っ込ませて、事故死をさせる。そして「あなたは死ぬ筈ではありませんでした!」とか抜かして、異世界で転生させてあげる。

 どうせ、そんなパターンだったんじゃないか?」


 図星だと誰が見ても分かるほどに、核心を突く質問にいちいちビクリと反応する乳女神。

 流す汗の量も、コントのレベルになっている。


「んで、何台もトラックを突っ込ませても俺が死なないもんだから、広範囲異世界転移に変更し、街一つ飲み込む大規模召喚を仕掛けたんだよな?!」


 ニュースを賑わせた、大型トラックの連続暴走事故は記憶に新しい。何せ自分が当の被害者なのだから。

 俺に向かって何台も、何回も大型トラックが突っ込んで来たんだよ。最初は一回一台だったが、同時に複数台の時もあった。全部避けるたから無事だったが、死んでいてもおかしくない状況だった……。

 自分の発言に、それらをまるで肯定するかのようにビクリと体を反応させる乳女神。

 そして上げた顔の瞳には、いっぱいの涙が蓄えられていた。


「だって、だって、だって! しょうがないじゃないの! 貴方殺そうとしても死なないからいけないのよっ! 

 トラックは全部避けるし、建設現場から落ちた鉄骨も当たらないし! 

 今迄の転生召喚でこんなに苦戦したことなんて無いんだからっ!」


 ここに来て逆切れかい。

 語るに落ちるとは、正にこの事だな。

 正面からは大型トラックが突っ込んで来て、上からは鉄骨が落ちて来てたからなぁ……。

 あそこまでやられて、誰かの意図的な物を感じない方が異常だ。

 しかし、こいつ今、飛んでもない余罪を白状しやがったぞ!


「だって、しょうがないの! それもこれも私の意志ではなく……」


 乳女神が何かを重大な秘密を暴露していた最中、一瞬だけ乳女神の姿が消えかかった。


「!!」


 ひどく驚き、いきなり口を閉ざす乳女神。


「おい! じゃあ一体誰の意志なんだよ?」


 中途半端では気持ちが悪い。

 しかも今乳女神が口走ろうとした名前は、自分の怒りをぶつける真の相手となる黒幕の可能性がある人物だろう。


「……世界の強制力が働いたわ。やはり私の口から伝えることは不可能よ……」


 ふん。つまりこの乳女神に指示した黒幕がいるという事か。面白い。

 だが、実行犯は目の前にいる!


(実行犯と首謀者の両方をぶっ飛ばしても、何ら問題は無いはず。そうだよな?)


 思考の中で語りかけ、ニタリと気味の悪い笑顔を浮かべる。

 釣られて乳女神も引きつった笑みを浮かべる。


 そうだな。……よし、ためしに、乳女神をネタにしたエロい妄想をしてみる。

 乳女神の片側の広角が、痙攣を始めた。

 20年間女っ気のない人間の妄想力を舐めるなっ!

 モテないのは……伊達じゃないんだぜ。



 俺は一歩を踏み出す。

 乳女神は一歩後ずさる。



 俺は、気味悪さの上限を完全に振り切った笑みを浮かべ、乳に。もとい、乳女神に猛然と突撃したのだった。


 すると乳は、金切り声の悲鳴を上げる。


「いやぁぁぁ~!! 来ないでぇぇ!! あんた最初から生理的に受け付けなかったのぉぉ~!」


 ズブリと五寸釘。いや、電柱位の太さの何かが胸に突き刺さった感覚がある。

 思わぬカウンター攻撃を喰らい、突撃の出鼻を挫かれる。

 ……くそっ! くそっ! 乳女神のくせにっ!!


 次の瞬間、両手をこちらへと突き出し、乳女神は何やら呪文を唱え出した。

 自分の体が白い光に包まれ、異世界へ飛ばされるのだと理解出来た。


「まだ何も仕返しが出来てない!!」


 瞳に涙を溜め、こちらを睨み付ける乳女神。

 いや、既に泣いていて鼻水と涙と涎の区別も出来ない状況だった。


「あんたなんか、どっか行っちゃえ! ……死ねば良いのに!」


 女神のとんでもない捨て台詞を贈り言葉として貰い、俺は正式に異世界へと送られた。

 目の前の歪む空間を眺めながら心に誓っていた。


「あの乳、絶対にぶっ飛ばしてやる!!」

 

 

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