file2.遭遇
小説書くのは初心者なんで基本は短いです。
暑い。どれだけ歩いただろうか。
未だに村は見えてこない。
「暑い…。バスが一日一本って、死ねと言ってるようなものじゃないか…。」
そんな事をボヤきながら歩き続ける。
それに、秋だというのにとてつもなく暑い。
「本当に秋かよ畜生…」
夜宮村。そこであの怪物の正体がわかるかもしれない。
そして、俺は5ヶ月前の事件を思い出していた--
『--先輩。これで6件目ですね…』
『この死体も首が切断されていた、か』
東京都内で発生している連続殺人事件。俺たちはその事件に手を焼いていた。
鋭利な刃物で切り取られた首無しの死体。
あまりにも猟奇的過ぎるその事件に世間は恐怖を抱いていた。
『雄介。お前はこの事件についてどう思う?』
先輩が唐突にそう聞いてくる。
『とても…猟奇的だと思います。どう考えたって正気の沙汰じゃないですよ。』
『正気の沙汰じゃない、か…』
『--暖かいな。とてもあの事件が起きているとは思えない』
そんな事を呟きながら俺は家への道を辿る。
(犯人の情報は掴めないまま…。それどこらか凶器すら分かっていない…。)
(一体何の目的で犯人はこんな事を?いや目的すら無いのかもしれない…ただ快楽のために--)
事件のことを考えながらふと路地裏を見る。
そこには爛々と目を輝かせ、鋭い爪を持った怪物がこちらを見ていた。
『ーッ⁉︎』
信じられない。こんな生物がいるなんて。
恐怖で身体が動かない。殺される。そう思った。
(ヤバイ。此奴はヤバイ!早く逃げなきゃ、殺される!)
そしてその怪物はこちらに向かって--走り出した
『ッ!?』
咄嗟に持っていた鞄を投げつける。事件に関する資料が入っていたが気にしない。
そして走る。ただただ走る。
(早く、家に行かないと…!)
(いや、家に行ってどうする?ウチのオンボロ玄関じゃすぐに破られるだけだ!)
そもそも武器すら持っていないのだ。このままでは疲れたところを殺されるだけ。
(どうする…考えろ!考えろ!)
--怪物の足音が聞こえる。すぐ近くを歩いているようだ。
息を殺し、身を潜める。
何分経っただろうか。怪物の気配は消え、完全に静寂に包まれる。
廃品の山から身体を出す。
いつもは手を焼いている廃品の山に助けられた。
そんな複雑な気持ちが横切るが、急いで家への歩みを進める。
これが、上代雄介が狂気の世界に足を踏み込んだ瞬間であった。