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【詩集】Shangri-La

帰り道のベーカリー

作者: 野鶴善明

 

 地下鉄駅へ急ぐ人の群れ

 夕暮れがあたたかく

 人懐っこく灯りはじめ

 ぼんやりとしたけだるさが

 ため息になったりして


 僕は人の川を離れ

 君の好きなベーカリーへ

 明日目覚めたとき

 君が作ってくれる朝食の

 パンを買いに行くのです


 毎朝君は

 時計を気にしながら

 パンを頬張り

 目玉焼きにかぶりつく

 僕のそばで

 やさしく僕を見てくれます


 なんだか僕は

 満ち足りた気持ちになって

 それから鞄を取って

 勤めへ出かけるのです

 パンを買う糧を得るために


 トナーを取って

 薄い紙を敷き

 わけもなくトングを

 開けたり閉めたり

 パタパタさせて

 明日のパンを選びます


 君の好きな

 干しぶどう入りの丸パンをひとつ

 僕の好きな

 栗あんぱんをひとつ

 あとは気分次第で

 クロワッサンや

 チーズフランスパンを取ったり

 チョコレートの入った

 デンマークデニッシュにしたり


 ベーカリーの袋と鞄を

 いっしょに下げて

 夕暮れの沈んだ

 地下鉄駅へ

 ささやかな生活に

 酔いしれて

 こんな暮らしもあったのだと

 ただなんとなく


 今がやすらぎなら

 神さま

 もうすこし

 しあわせでいさせてください


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― 新着の感想 ―
[良い点] 温かくて、優しい作品ですねo(^-^)o 何気ない日常が、後になれば、かけがえのない幸せだったと思い出したりします。 幸せの中に居る最中に、その幸せに気付くことができたなら、これからも…
2015/06/06 22:07 退会済み
管理
[一言] 初めまして、太ましき猫と申します。 ささやかな幸せが灯る我が家に、ベーカリーの袋と鞄を下げて家路につく光景。 何ともホッコリします(*´ω`*) 日常の中にある幸せ。 気付くと切ないまで…
2015/05/07 18:18 退会済み
管理
[一言] それから勤めに出かけるのです。パンを買う糧を得るために…というところがとても良かったです。 パンを買って、そのパンを買うためにまた働く日常の感じとか、日常の幸せとかが感じられました。
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