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嫌われ王子と引きこもり令嬢  作者: 光森 璋江
第2部 第8章 ヴィルフレート帝国へ
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楽譜

遅くなりました。


「もう曲のレパートリーが・・・・」


毎日毎日同じ曲ばかりを続けて演奏するわけにもいかず、いくつかの曲を演奏してきた。


楽譜なしで演奏できる曲目にも限界があり、曲を演奏し始めておよそ二週間。


とうとう底をついてしまった。


「こ・・・こうなったら楽譜くらいいただいても問題ありませんよね?」


『そうね。”こまどりのささやき”の完全版がヴィルフレートにあると聞いたことがあるわね。』


「それ、本当ですか???」


『え・・・ほしいの?』


「もちろんです!!」


こまどりのささやきは今、伝わっているものはごく一部で、本来はもっと長い曲であった。


楽譜はすでに絶版となり手に入らない代物となっていた。


この機会を逃すまいといち早くマリユス皇子側に伝えた。


すぐさまマリユス皇子一行が尋ねてきた。


「楽譜がほしいとか。」


「えぇ。ここに来ておよそ2週間あまり。私の演奏する曲のレパートリーを増やす意味も込めて。」


「こまどりのささやきの完全版の楽譜です。ほかにもほしいものはあるのですが。」


「こまどりのささやきの完全版の楽譜だと?!」


「えぇ。この国にあると聞きましたけれど??」


「確かにあるとは耳にしたことはあるが。」


「どうしてもほしいのです。どうか・・・」


真剣な目でマリユス皇子を見つめた。


その態度にマリユス皇子も観念したように肩を落とした。


「わかった。手配しよう。ほかにも必要な楽譜があれば伝えよ。」


神妙な面持ちで一行とともに去っていった。




(やった!!!)


『さすがは私の申し子だわ。』


(早く演奏したいわ!!!)


ガッツポーズをしながら楽譜が届くのを待つことにした。




それから2日後。後から頼んだものを含め、こまどりのささやき以外の曲はこれまでにすべて手に入っていた。


(あーあ。なんでこれだけ来ないのかしら。)


『まぁ、書き写しているんじゃないの?ほかのは大して長くもないものだし。』


(そんなに長いものなのですか?)


『えぇ。演奏するのに半日くらいかかったと思うわね。』


(また長いですねぇ。)


『私が知っている中でも5本の指に入る長さだもの。』


普通曲はだいたい長くても2~3時間が相場である。


カテリーナがほしいといった楽譜のほとんどが5分程度で終わる曲の楽譜であった。


こまどりのささやきはそれのおよそ4~6倍もの長さを要する曲である。


それに加え、今や絶版になってしまったその曲を探し出すのにも一苦労であり見つからない可能性も高い。


また、おそらく見つかっても書き写したり、修復したりするのにもかなり時間が必要になることが予想される。


仕方なくカテリーナはしばらくは、手に入った楽譜から演奏していって時々楽譜なしでも演奏できる曲を織り交ぜていくことにした。

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