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嫌われ王子と引きこもり令嬢  作者: 光森 璋江
第2部 第7章 帝国からの魔の手
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宿屋

「おかしいわね。ここも戦闘中のはずよ?」


「えぇ。そうですわね。」


イルダはナタリアを抱き寄せながら相づちを打つ。


ナタリアは緊張していたもののイルダに頭をなでられて少し安心した様子を見せている。


「それにしては静かよ。なんとなく普段通りの生活というか。」


「そういえば、不思議ですよね?」


「えぇ。普通なら街は火の海、人々は逃げまどい・・・というのが一般的だわ。」


「なんともないというか・・・ここはまだ実行支配の及んでいない土地なのかも知れませんよ?」


「ここは、どこ?」


難しい話をし始めた二人に素直にナタリアが聞く。


カテリーナは頭に地図を描きながらその問いに答えた。


「フィリアの北、およそ2時間位行ったところということは、まっすぐ来たのならトゥルールの町。東に来たならグニアの町。西へ来たのならバダフの町といったところかしら?」


扉の鍵穴越しに廊下を見ていたルーチェが行き交う兵たちの様子を見ていたが3人のそばにやってきた。


「見張りが多いですね。こっちは戦える戦力とするならカテリーナ様くらいですから。今出て行っても勝ち目はありません。」


「隙を見て逃げ出すしかないわね。」


『あなたたち何やっているのよ!』


(ユリーナ様。)


『姿を現すわよ。』


(かまいませんが・・・)


カテリーナの言葉を聞く前に姿を現した。


知の女神の古代長のスカートがふわりと裾が翻り床に舞い降りるように着地した。


『あら、新顔ね。』


ナタリアは目を白黒させている。


おそらく女神および神を見たことがないらしい。


イルダも驚いた顔をしている。


ルーチェは何度か見たことがあったので平然としている。


ルーチェが小声で知の女神ユリーナに尋ねた。


「女神様。何かよき案がございますか?」


『これといってないわね。ただ、お父様と連絡がついたの。それが・・・今、ここから3時間くらいのところのキロニードと言うところにレオポルトがいるそうなの。まぁ、国境地帯まではまだまだ先が長いんだけれど。』


「お父様が?!」


「ここからそう遠くもありませんよね?」


『そうなの。おそらく明日にはヴィルフレートにはいるわ。今日しかそれができないの。』


「難しいですね・・・」


『この状況から見てまず逃げ出すことは不可能ね。』


「この町が静かなのはなぜでしょうか?」


『レオポルドの作戦らしいわ。よくわからないけれど、生け捕り作戦とか何とか。』


「えげつない作戦のようですわね。」


ルーチェ、カテリーナ、イルダの顔から血の気が引くような感じがした。


彼を知っているものならおそらく全員がそのような顔をするだろう。


そんな3人をよそに急にナタリアが聞いてきた。


「えっと・・・この人だぁれ?」


小首をかしげながら知の女神ユリーナを指さした。


イルダたちが止めようとしたが間に合わなかった。


それもそうだろう、急に現れたのだから。


しーっと言いながら知の女神ユリーナは嫌な顔一つせずに教えた。


ここからは皆、小声で話している。


『私は、カテリーナの守護神知の女神よ。』


「へぇ。ユリーナ様ってお名前なの?」


『ん・・・それに近いかも??それは良いわ。次の機会はジュリアーノよ。彼ヴィルフレートに来ているのよね。逃げている間に彼と出会えれば助かるわね。』


「それはどの町ですか?」


『確か、ペレターヌという町でどこを通ってもここの町は必ず通る町だからきっとそこの町で一泊するはずよ。』


「ここからどれくらい離れているのですか?」


『そうねぇ。10日位かしら?でも雪が降り始めたらもっとかかるわよ。それまでジュリアーノがいるかどうかも・・・』


「運次第ということですね。」


『そういうこと。じゃ、私はこれで。あなたたちに何か情報が入ったらカテリーナを通して伝えるわね。』


そのように言い残して知の女神が一瞬にして消えた。


「ペレターヌの町ね・・・」


「お嬢様。それまでおとなしくしておきましょう。」


「そうね。ナタリア、イルダ、ルーチェ。私のせいでこんなことに巻き込まれてしまって・・・」


「お嬢様のせいではございません。4人で力を合わせて無事にフィリアに帰りましょう。」


ルーチェが主の冷えた手を握りながら言った。


「えぇ。」


カテリーナたちは身を寄せ合って眠り、早朝セザールたちに押し込められるように馬車に乗った。


4人はペレターヌの町まで着くまではずっとおとなしくしていた。

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