誘拐
「どうしてこうして私の周りだけこのような事態になるのかしら?」
「この馬車、どこまで行くんでしょうかね?」
ことは、およそ2時間前にさかのぼる。
ナタリアとルーチェ、イルダとともに神殿に行った。
軍神アルデに参拝するときには帯刀は許されておらず丸腰であった。
警護のものも大方、戦にかり出されており手薄であったところを突かれてしまったのである。
肌寒かったので上着のほかにカテリーナはフリードリヒから以前もらったショールを持ってきていたのは少しだけ幸いであったと後に思い出された。
帰りの馬車に乗ったところ御者に外側から鍵をかけられてしまった。
普段なら鍵などかけないのだが。
そして、馬車はルドゥーレ家本邸を軽く通り過ぎ北へ北へと走っている。
「馬車が止まったわ。」
御者が話しかけてきた。
「こちらで一泊しますが。逃げようなどとは思わないように。」
どこかで聞き覚えのある声。
はっとしたカテリーナとルーチェ。
「あなたは・・・セザール!」
「ようやく妃を迎えよとの皇子からの命を受けました。」
御者台から降り、一礼するセザール。
ドアの鍵を開けカテリーナの手を取る。
カテリーナは身を乗り出す格好になった。
しかし、カテリーナはセザールの手を払いのけた。
「誰がなるものですか!」
「そういっているのも今のうちですよ。」
「お嬢様。」
心配そうにイルダがつぶやいた。
「ヴィルフレートの宮殿に行くんでしょ。ここはまだフィリアよね。」
「ご名答。さすがは知の女神の申し子。」
「で?まさか誘拐犯が貴方一人って訳じゃないでしょうけど。」
「一人で4人も相手にできるわけじゃない。後ろを見てごらん。」
そこには大勢の男たちが馬に乗っていた。
「よく集めたわね。」
「まぁ。たいしたことはありません。」
身を乗り出していたカテリーナはいらだちを隠せない。
「はぁ。また?」
「お嬢様。またとは?」
「一度監禁されたことは話したわね。そのとき、見張りが不必要に多くて、お父様がすぐに感づいたの。これじゃ、目立つでしょ・・・ってそうか。今は戦闘状態だったわね。いても不思議はない、か。」
「こんなところではなんですから宿の方へ。」
「仕方ないわ。行きましょう。」
4人は馬車を降り目の前の建物に入っていった。
「さすがですね。戦闘能力があるのはカテリーナ様くらいですから。良い心がけです。」
「ここの警備をよろしく。僕は馬車をおいてくる。ご令嬢方しばしお待ちを。」
「はい。」
男の一人が言った。彼がこの隊の隊長らしい。
甘いマスクでセザールが御者台からカテリーナたちを見ている。
警備を任された男たちがカテリーナたちを取り巻いていく。




