静かなる戦
「なぜ今になってエワーズが白紙にしたいと申し出たのか。」
「わかりませんね。」
「こんな時にレオポルドがいてくれたら。な。」
「もちろん彼にもこの件は伝えますよ。」
「まずは、この話が真実かどうか確かめるべきだな。」
レオポルトの代わりにリナルド・テフィンクーレがリベラートの執務室に呼ばれた。
「カテリーナにもそのように伝えましょう。」
リナルドが言った。
「今さっき使者の方からの、やはり事実確認をまずしてからでないと。とだけ。」
リベラートから派遣された従者が頼りなさげに報告した。
「早く帰ってきて・・・」
目をつむり指をくむ。
カテリーナの瞳から一筋の涙がこぼれた。
「あと、報告があったの。ハロルド、単身でディーレに行ったって。」
「ダーニャ伯爵様が?」
「そうよね?」
「はい。」
使者と応対した執事が答えた。
「そうなの・・・損な役回りにならなければいいのだけれど。」
「エレーナ様は?」
「ジャンニ様のところにいるそうよ。」
「では、明日お会いできるのですね。」
「そうね。」
「そういえば、イレーニア様がお倒れになられたとか。」
「人づてにいたのでしょうね。かわいそうに。」
「まもなくおつきになられます。ナタリアという女の子も一緒に。」
「そうなの?」
「もう、冬休みに入りますから。」
イレーニアは挨拶もせず部屋にこもってしまった。
ナタリアは始終明るい。
「明日、一緒に神殿に行かない?」
「神殿ですか?行きます!!」
二つ返事で承諾した。
「それで、ナタリア。貴女の部屋なんだけど。」
「私は一介の侍女ですからほかの方と同じ部屋をお願いします。」
「空き部屋あったかしら?」
「私の隣はあいていました。」
「そう。じゃあ、いいのね?いつでも変わりたかったら言ってね。」
「はい。お気遣いありがとうございます。」
執事がナタリアに部屋と屋敷の中を案内している。
道具も見回るついでにおいていくらしくえっちらおっちらついて行った。
「まだあんなに幼いのに。音楽の才能にも恵まれているのよ。」
「そうなんですか。」
「シャーロットには彼女をもっとかわいがってあげてほしいわね。」
「お嬢様。」
「なに?ルーチェ。」
「おかしいと思いませんか?言い知らせも悪い知らせも一切こちらには入っていません。」
「私も気がついていたわ。」
「なぜでしょうか?」
「私が考えるに情報操作をしてこちら側に伝わらないようにしているのかも。」
「えぇ??」
「いろいろと作戦のうちよ。きっと。」
「旦那様、腹黒の中の腹黒との呼び名をほしいままにしていると聞いたことがありますが、本当だったのですね。」
「それ、どこで聞いたの?」
「さぁ?どこでしたか。」
「イレーニアの様子はこまめに見た方が良いわよね。」
「はい。」
「夫人は?最近見かけないけど。」
「自分の領地に一度戻りたいとおっしゃっておられましたし。」
「ピンパル家の治める領地は北の地よ。危険すぎるわ。」
「まさか。」
「ねぇ、夫人の子供たちは皆出征したの?」
「いえ、2番目のご子息は仕事をしていると。」
「カミッロね。」
「あの庭師?」
「そうよ。植物に詳しいし体格も申し分ないもの。いの一番に出征すると思っていたのだけれど。」
「可能性はカミッロのところかも知れないわね。わざわざ、命の危険を冒してまで行くかしら?」
「一度私、様子を。」
「何でございましょうか?お嬢様。」
「噂をすれば何とやら。ね。夫人。」
「おや、私の話でございましたか。」
「最近見かけないなぁと思って。」
「息子のところに。領地に行って領民の安否を確かめようか相談を。」
「どうすることになったの?」
「もう少し戦闘の様子を見てから判断しようと言うことになりました。」
「そう。」
「早く終わってほしいですわ。」
「私があんなことを言わなければ。」
「国民の誰もが同じことを思っていたでしょう。かくいう私もそうです。口にはしませんでしたけれど。」
「そう。なのかしら?」
「えぇ。」
「あらあら。楽しそうね。」
屋敷の入り口付近で猫を2匹抱えた女性がたっていた。
そばには犬も。
「まぁ!大奥様。」
「久しぶりね。」
「おばあさま。羊たちはどうしたの?」
「知り合いに預けてきたの。ジュリアーノがヴィルフレートに預けていたものを取りに行くと言って聞かなくて。戦になったことだし家族支え合っていかないとと思って山から下りてきたのよ。」
「おじいさま、ヴィルフレートに行っちゃったの?」
「えぇ。」
「ものすごく危険よ。」
「剣の腕に自信があるから大丈夫だといっていってしまったわ」
一同はジュリアーノの行動にあきれかえっている。
「大丈夫よ。信じて待ちましょう。」
「「「はい。」」」
「ここはまだ暖かいわね。もう、迷いの森では雪がちらほら見えていたわ。」
などという話を居間でしはじめてしまい、気がつくと夜になっていた。




