エワーズからの手紙
「まさか、エワーズが裏切った?」
「お嬢様?」
今まで静かだったので急に叫んだカテリーナの方を向いて不安そうに声をかけるルーチェ。
わなわなと震え出だし、手紙をぐしゃりと握りつぶした。
「なんてことなの!」
それは、いつものように軍神アルデの神殿に祈りを捧げ帰宅後、本邸のエントランスで執事から手渡された手紙を読んだ。
送り主は、エワーズの高官からで、イレーニアとテオバルドの婚約を白紙にするとの一方的な内容であった。
「事実確認をしなくてはいけないわね。」
「はい。」
執事が一言目を伏し目がちにしながら言った。
「リベラート伯父様とリナルド叔父様にこのことをご報告を。イレーニアには伝えないで。」
「畏まりました。お嬢様。」
いつも仕事をそつなくこなす彼は今回も手際よく処理をした。
カテリーナはヴェロニカにもこの一件を話すと、そう。といって数拍ぼんやりとした。
「戦況が悪いのかも知れないわね。」
遠くを見つめながら言った。
部屋に帰るとごたごたがあったおかげで気が立ってしまっていたので久しぶりにフルートを吹いてみることにした。
美しい調べ。
この曲は湖面にうっすらと霧がかかりそこに・・・
急に風が吹き霧が消えてしまう。
譜面どおりに演奏すれば、とても幻想的な曲である。
なのだが、弱く弾くべきところをかなり強い音を出してしまい曲がめちゃくちゃになってしまった。
フルートの音に耳を傾けていた知の女神ユリーナが声をかけた。
『ずいぶん荒れた曲ね。』
「でしょうね。」
『音楽は心で弾くものよ。わかっているでしょう?』
「はい。」
『そういえば、ダーニャ伯爵様は?彼、最近見かけないわね。』
「あぁ、ハロルドですか。戦火のまっただ中にはいないそうですけれど、屋敷もいないという噂がありますね。」
『そうなの。エレーナも大変ね。そいうえばあの手紙。本当にエワーズからのものだった?』
「間違いありませんよ。封蝋の印は確かにエワーズ王国の紋章でした。」
『やはり、確認を摂らないとわからないか・・・タイミングがよすぎるのが怪しいんだけど。』
腕組みをする知の女神ユリーナ。
今はカテリーナ以外部屋には誰もいないので、姿を現している。
「ユリーナ様。しばらく私の守護を離れお父様の元へ様子を見てきてはいかがでしょうか?」
『貴女ね。私は貴女の守護をするために人間界にいるの。これは契約なの。わかる?け・い・や・く!
これを違えるわけにはいかないのよ。
もっともあれが私に神殿で願い事をすれば話は別ね。そんな暇はないでしょう。』
「では、軍神アルデ様に直接お聞きになるとか。」
『できたら苦労しないわよ。カテリーナたちと々考えの人が大勢いるのは知っているでしょ?
この前も息子が出征したって言う老婦人が神殿で祈りを捧げていたのは見たでしょ?
今はてんやわんやの大忙しだってお母様がぼやいておられたわ。
まぁ、時には天界に行くことはできるけど。対して情報は手に入らないわね。当事者たちは戦火にいて支援しているもの。』
「ですよねぇ。もうすぐ冬だというのに。」
『おとなしく吉報が届くのを待ちましょう。』
カテリーナがいすに座ってフルートを心おきなく吹き終わった頃にはすでに知の女神ユリーナの姿はなかった。




