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嫌われ王子と引きこもり令嬢  作者: 光森 璋江
第2部 第6章 嵐の前の静けさ
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本当の気持ち

「ティツィアーナ。ご機嫌いかがかしら?」


きゃっきゃと笑う幼児が姉に抱かれている。


あれから本邸に戻り、再び穏やかな日々を過ごしている。




机に向かって何かを書いている。


周りの声や音も聞こえないらしく一心不乱に書き続けている。


「お嬢様。」


「今良いところだから後にして。」


顔も上げず、最後の一文を書き上げた。


「やっと書き終わったわ!」


ぱっと顔を上げた。


「インクが乾いたら、挿絵担当のコンスタンティーノに渡して。」


近くにいると思っていたルーチェからの返事がない。


ルーチェを捜そうとドアを開けると不穏な話を聞いてドアを閉めた。


「お父様。何をお考えなの?」


恐怖で身震いしたものの、意を決して再びドアを開ける。


そこにはルーチェがいた。


「ルーチェ、頼み事があるの。後で部屋に来て。」


「お嬢様。」


背後から声をかけられ、驚きの顔を隠せないルーチェ。


顔は血の気が引いたように真っ青だった。


「話は聞いたわ。いよいよ、軍隊を動かすんでしょ。」


前方にいるレオポルドに歩み寄る。


「お父様。約束して。一人たりとも死者を出さないと。」


真剣なまなざしでレオポルドを見つめるカテリーナ。


「元々そのつもりの作戦だから安心してくれ。」


「その言葉が一番不安だわ。」


「ははは。僕も行くんだ。総司令官として。」


「剣の腕もおぼつかないお父様が?」


「まぁ。そうだけど。この作戦が成功してあの一体を再びフィリアの領地にした暁には、ウィリアの王子と結婚するんだよ。いいね。」


軽くしかし、しっかりとカテリーナの両肩に手を置いた。


「約束だもの。」


少しだけほほえんで見せた。




レオポルドの出立は1週間後だと知らされた。


部屋に戻り、ルーチェに本のことを頼むと一人物思いにふけっている。


『何を企んでいるのかしらね。』


「ユリーナ様。」


『ん?どうかしたかしら?』


「帰国後、殿下は一度もこちらにはお見えではないですよね?」


『みたいね。』


「きっとあのときの女性、恋人なんでしょうね。」


『どうかしら?』


「なんだか変な気持ちなんです。」


『あら、恋の再燃ってやつ?』


「でしょうかね?」


『私としては願ったりかなったりなんだけど。』


「どのみち私、殿下と政略結婚ですし。変なんですよ、剣術試合の後から胸の中でもやもやが消えなくて。つらいんです。」


『ばっちり恋の再燃ね。』


「再燃だか何だかは別にして、どっちにしたって、結婚する前に恋人との関係を切っていただきたいものですね。」


『そこはあっちが考えるべきことよ。出征する皆が無事に帰れるよう、祈りましょう。』


「そうですね。」


『父様にお願いに行きましょう。』


「ご神木のサントリナを持って。」


そのことを夕食前にルーチェ、イルダに話しておいた。

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