守護神祭
「帰りましょ。」
試合の最後まで見届けたカテリーナは席を立ち、侍女たちを引き連れて会場を後にした。
彼女の後ろ姿を見たフリードリヒは「まってくれー」と叫んだが、観客たちの声援にかき消されてしまった。
それから、ティツィアーナの守護神祭が厳かに行われた。
祭りといっても親類が神殿に集まって彼女の名前と守護神のお披露目をするだけのことである。
万物の神が承諾し、ティツィアーナと正式に決まった。
守護神は、園芸の女神となりセカンドネームもバジルということとなった。
「ティツィアーナ。かわいいわね。」
と王妃サンドラが今日の主役をあやしている。
そばでマルティーノがうらやましそうな目をしてみている。
そんな弟の姿を見たカテリーナは彼を抱きかかえた。
「ティツィアーナみたいにしてほしいの?」
「そう・・・じゃ、ないの。」
「じゃあ、どうして?」
「ほっといてよ。」
「最近、何かあったの?」
「ふつうだよ。」
「そうは見えないんだけれど。」
ぶっきらぼうに答えるマルティーノ。
優しく問いかけたカテリーナ。
しばらく黙った後、重い口を開いた。
「ねぇ、ねえさま。もうすぐおよめにいっちゃうってほんと?」
「なぜ?」
「みんながいうんだ。『あのうわさのおかたといよいよ?』って。それってけっこんしちゃうってことでしょ?」
瞳をしっかりと見開きカテリーナに問うた。
カテリーナは、慈愛に見た顔をして答えた。
「わからないわ。」
「であってほんの1ねんくらいでしょ?ぼく、ねえさまのことあんまりよくしらないけど、ずっとそばにいてほしいの!」
めいいっぱい身振り手振りを織り交ぜながら力説するマルティーノ。
それがとてもいとおしく思えたカテリーナは目を細めた。
「お父様、そして国王陛下が許す限りはそばにいるわ。」
マルティーノをなでながら愛らしい笑顔を見せた。
それにつらえたようにマルティーノもうれしそうな笑顔を見せた。
入り口付近で待機していたピンパル夫人が安堵半分不安半分の顔をしていた。
神殿内はかなり声が響きやすい。
カテリーナとマルティーノの会話が丸聞こえのようだ。
その頃、軍の訓練所近くの寮にて、忘れ物を取りに来た気骨のありそうな男性が言い寄られていた。
「我が愛しのベルン様!」
あのあと、別邸を引き払い軍の寮に戻ったフリードリヒとフランツ。
この寮は女性厳禁である。
一人の少女と性別不詳の人物がまとわりついて離れそうもなかった。
この少女こそ、コルドベキア侯爵の姪、リタである。




