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嫌われ王子と引きこもり令嬢  作者: 光森 璋江
第2部 第6章 嵐の前の静けさ
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剣術演舞

「えい!やあ!」


「違う違う。こうだ。こう。」


カキーンと金属と金属が当たる音が何度も聞こえている。


カテリーナとハロルドは昨年演舞を披露した人物に教えを請うている。


それは、フリードリヒとフランツの上司でガダルス将軍という名前からしてガタイのいいおじさんと同じく軍隊所属のバルディアンという男が見本演舞をしてもらいながらしているのである。


この演舞は優勝者と準優勝者のみが舞うことを許されている演舞で、口伝えでしか伝えることができないものである。


この演舞を舞うことは大変名誉なことで、剣術試合の前に剣術の神と観客に見せる。


そして、彼らは剣術の神から加護を受けるのである。


さして、ハロルドは体格もまぁまぁなようで荒くはあるができているようである。


問題はカテリーナにある。


いかんせん女性であるし、幾分華奢なので巧みな剣裁きがうまくできないようである。


いつもは小さな剣で戦うためであろう。体力と言うより筋力がついていっていない。


「お時間を割いていただきありがとうございました。」


カテリーナとハロルドは一礼をする。


今日の練習は昼の1時間ほどで終わり、明日も同じ時間から軍の練習場で行うと約束を取り付けて帰ることにした。


「ハロルド、本邸で稽古するわよ!もう本番まで日がないのだから。」


「はい。」


早々に二人は切り上げ帰って行った。




練習場所は裏庭。


本番までは人に見られるはよくないことだからである。


裏庭に来る人などほとんどいない。


『聞いた話によるとあの男も剣術試合にでるそうよ。』


という直接必要なのかどうかわからない情報を女神ユリーナは持ってきた。


どうやら、二人が演舞の練習中に小耳に挟んだらしい。


ひとしきり今日のおさらいをしていると、ちらりと小さな影が建物の向こう側に見えた。


「マルティーノ!!」


カテリーナが呼び止めたが、走って逃げていってしまった。


「あれが、お坊ちゃまですか?」


「えぇ。たぶん。あの子最近様子がおかしいそうなの。」


「確かに、何か隠しておいでなのかも知れませんね。」


「ところで、ハロルド。エレーナの体調はどうなのかしら?」


ジザーニアで熱中症の症状を見せていたエレーナを気遣うカテリーナ。


そんな元主に対してハロルドは簡潔に近況を報告した。


「毎日窓から外を眺めてはため息ばかりです。あいつがあれ以来ぱったりと姿を見せなくなったので。」


「そうなの。」


とやや、いらつきを覚えたような顔をした。


「ルーチェに休暇を1週間ほど与えたの。ここのところ全く休みをあげてなかったから。」


「ほう。」


「イルダという私とあまり年の変わらない子が侍女をしてくれているの。」


とハロルドはあまり関心の亡いような口ぶりをしていた。




あれから9日後、本番を迎えた。


その間、カテリーナの方にもフリードリヒは一切姿を現さなかった。


カテリーナにとってそれは少なからず好機であった。


演舞の練習に忙しかったし、しばらく顔を合わせたいとは思っていなかったからでもあった。


日を追うごとに練習時間が延びていき、本番前の昨日など朝から日が暮れるまで軍の練習場で演舞の練習をしていた。


休暇を取り終えたルーチェは相変わらず、きびきびと侍女の仕事をしている。


イルダもルーチェの補佐として時折カテリーナにつくことが多くなってきた。


休暇中はどのように過ごしたのかルーチェに聞いてみたが、特に代わり映えのしない休日を送ったとカテリーナに話した。




本番は王宮殿の中にある剣術の神の神殿。朝から演舞の披露がある。


剣術試合は別の広場で開催される。


そのため、本邸よりも王宮内の方が近いため特別にカテリーナは前日から王宮に泊まっている。


「男性の衣装をお召しになれるとか。」


「今まで女性が優勝、準優勝をしたことがないのだそうよ。」


「はぁ。一回戦で負けていれば・・・」


「私が負けず嫌いだって知っているでしょう?ルーチェ。」


「はい。けがのなきよう務めを果たしてくださいませ。」


カテリーナの着替えをしながらルーチェが言った。


「そうそう、おみやげはちゃんと渡してくれたかしら?」


「はい。渡しました。」


イルダが答えた。ジザーニアのおみやげを渡すよう頼んでいたのだ。


「ありがとう。じゃあ、行ってくるわね。」


「「はい。」」


「演舞が終わったら着替えて剣術試合を見ましょう。」


と二人に声をかけて出かけていった。




きれいな弧を描いて剣が舞う。


うなじで縛った髪がふわりと風を受ける。


およそ20分ほどの演舞である。


二人の姿に剣の当たる音、風を切る音しか聞こえなかった。




本番は無事に終わり、剣術の神から二人に加護が与えられた。


『今年もよき演舞であった。ほめてつわすぞ。』


とお褒めの言葉もちょうだいした。


『して、知の女神よ。おぬしの申し子はすばらしき。よきものに恵まれたのぅ。』


とカテリーナと知の女神ユリーナにだけ聞こえる声で語った。




その後、カテリーナは服を着替え少々豪華な服を着て見やすい位置に設置してある王族専用の席へとルーチェとイルダを伴ってやってきた。


そこには、レオポルドとリベラート王、リナルドなどがすでに着席していた。


いよいよ今年の剣術試合が開催される時刻が迫ってきて観客席はいつも以上に活気づいている。

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