片付け
「ただいま。」
「お帰りなさいませ。前回の優勝者が直々に演舞を教授なさるそうですので・・・」
帰宅するなりピンパル夫人が演舞の練習についてカテリーナの部屋まで行って伝えてきた。
「すっかり失念していたわ。お父様の手紙で気がついてよかったわ。」
「しっかりしてくださいませ。」
「本番はいつだったかしら?」
「あと2週間ほど後です。」
「あ・・・あと一人預かり子がきたけれど、すぐさま学校に送っていったわ。長期休暇の折でも顔合わせしないといけないわね。」
「はい。」
「あと・・・変わったことはなかったかしら?」
「守護神祭の日程が決まったそうです。」
「いつかしら?」
「剣術大会の翌々日だそうです。」
「あら・・・タイトなスケジュールですこと。」
「それと、新年祭もご出席なさいますよね?陛下の使者から出欠を伝えるよう仰せつかりました。」
「えぇ。もちろんよ。久しぶりだもの行きたいわ。伯父様にそのようにお伝えしてね。」
「それと、お坊ちゃまが日を追うごとに気むずかしくなってきておりまして・・・」
「もう4つになったはずよね?」
「はい。」
「ここは一つ甘やかさないで厳しくしてみるとか。」
「カーラにだけは心を開いているようです。」
「困った子ね。一度直接話してみるわ。」
そう、ピンパル夫人に言ったものの返事がないのでピンパル夫人の方を見ると、近くで旅先での荷物を整理しているルーチェを見ている。
(どうやらまた、ルーチェにあれを言ったみたいね。夫人も必死すぎるわ。)
ピンパル夫人は自身の息子の嫁にとめぼしい人物にお見合いを勧めているのだ。
今のところ目立った成果はないようである。
主に同じ職場で働く女性に勧めているらしく、ルーチェはこれで4回目である。
ピンパル夫人とカテリーナの目があって聞いてた?という顔して見せた。
ピンパル夫人は一度頷いて見せたのでさらにこう伝えた。
「練習は明日から行くと伝えてね。」
「はい、そのように。」
ピンパル夫人が、一礼してカテリーナの部屋を出た。
ドアを出てすぐちらりとルーチェを見て足早に去っていった。
(夫人、ルドゥーレ家の侍女たちのほかにお見合いを進める人物がいるじゃないの?
たとえば、王宮勤めの女官とか。夫人の人脈なら造作もないと思うけれど?)
ため息をつきながら夫人の出て行ったドアを見つめつつそう思ったカテリーナだった。
「ルーチェ、これを宝石箱に入れてね。」
「はい。」
といって、鞄からシャーロットからもらったペンダントを渡した。
「時間があればこれも整理して入れたいのだけれど。」
本棚の一番下に無造作におかれた袋を指さしている。
これは、ダーニャ領内の神殿でレオポルドから両親の形見として受け取ったものである。
「守護神祭が終わりましたらいたしましょう。」
「ルーチェ、突然だけどお休みはいらないかしら?」
「はい?」
「ほら、ウィリアに行ってからずっとまとまったお休みとってないのでしょ?
今は人でも足りているし、ね?」
「は・・・はぁ。」
「いい人いるんでしょ?」
「お嬢様。そのようなことは仕事に関係ございません。」
主をにらみつけた。カテリーナはわかったわかったと言いながら、手を振っている。
「お父様にはちゃんと伝えておくから。」
「では私の代わりに、イルダを専任の侍女としてお使いください。私から彼女に伝えておきますから。」
ルーチェは自身の親しい侍女を推挙した。
「明日から1週間くらいお休みね。」
「ありがとうございます。」
「楽しんでいらっしゃい。ハロルドは私と一緒に剣術演舞の練習が入っているはずだし。
カミッロはいつものように別邸で庭師の仕事をしていると思うわ。」
カテリーナはルーチェの思い人とおぼしき人物の今後の予定をそれとなく伝えてみた。
「そうでございますか。」
いつものように顔色を変えずそれだけ返答した。




