痛い休息
「何で私がこんな目に遭わなくてはいけないのかしら?」
フリードリヒとフランツは再びフェリックスたちの待つ執務室へと向かった。
残されたのはフィリアから連れてきた侍女たちと警護の面々。
いつものメンバーとハロルド、エレーナの使用人たちである。
広い室内に住人近くがぎゅうぎゅう詰めに詰めかけて、カテリーナのそばで様子を見に来た。
知の女神はカテリーナにしか聞こえない声でつぶやいた。
『あれは・・・魔術を使う者のみが効果を発揮するの。今では廃れてしまって知っている者は数少ない。そんなものが使われるなんて。』
(これ・・・どこかで・・・)
『ど・・・どこで??』
(わからないわ。)
『思い出したら呼びなさいね。』
知の女神はすっと仕事に戻ったようでそれきりこの日は声さえも聞こえなかった。
カテリーナが思い出せたのは殴られる少し前のこと。
そのとき書庫へ向かう途中であったため書庫の鍵を持っていた。
だが、どこにも鍵はないようだ。
当たりを手探りで探っているとそっとルーチェが耳打ちをする。
「かぎでございますか。それなら私がフェリックス様にお返しました。どうぞご安心を。」
「ありがとう。ルーチェ。」
「いいえ。お嬢様こそご無事で。」
少し涙声になるルーチェをよそに一人の男に問いかけた。
「ハロルド、このままだと演舞に間に合うかしら?」
「そうですねぇ。」
懐から取り出した手帳をぱらぱらとめくり予定を確認する。
「カテリーナ様の傷が治るまでは無理はさせられませんし・・・」
ふむふむと何か試算し始めてきらりと瞳が光った。
試算が出たようでにやりと笑いながら告げた。
「我々の技量と教える者次第ですね。日程通りに行けば間に合うでしょう。
が、大事を取って代役をもうけることをおすすめします。」
「そんなことできるわけないでしょ?!」
「これでしばらくは寝ていなくてはなりませんね。神々からの警告でしょう。”おとなしくしていろ”と。」
「ハーロールードォ!」
怒るカテリーナに動揺することなくポーカーフェイスのままひょうひょうと言ってのけた。
「陛下に早く帰国できるよう願い出てはいかがでしょう?ただし、早く帰国できるかは賭けですが。」
「お嬢様。そのように興奮なさいますと傷に障ります。先ほどまで意識を失っておられたそうではありませんか。」
急に起き上がろうとするカテリーナを侍女たちが押さえにかかる。
じたばたする体力も気力もないのかすぐにおとなしくなった。
横になったままハロルドやルーチェたちを見ている。
「心配をかけてごめんなさい。」
「カテリーナ様・・・」
エレーナはぼろぼろと泣き出して侍女のミーナに方を支えられている。
他の者たちも疲れ切っている者、涙をこらえる者様々いた。
「では、少し周囲の様子を見てきます。何かおもしろい話でも持ってきましょう。」
そういい残し、詰めかけた侍女たちをかき分けて部屋を後にした。




