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嫌われ王子と引きこもり令嬢  作者: 光森 璋江
第2部 第5章 ウィリア王都へ
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持て余す時間

「公爵様からです。」


ハロルドが薄手の手紙を手渡す。


中を見ると、箇条書きで書き出されたメモのような手紙が一枚同封されていた。


いすに腰掛け手紙を読むカテリーナの後ろからハロルドが読んでいる。


「なによこれ。」


「どうやらカテリーナ様がご成婚なさると聞いてこぞってそのような申し出があったようですね。」


「いい加減にしてほしいわ。」


「ではとうとう、殿下との結婚をお決めに?そうでもなければ断る理由などありませんよ。」


「そんなわけないでしょ?誰がそんなことを言ったのかしら?」


「カテリーナ様の本性をご存じでないお方が大勢おられるようですよ。命知らずな殿方ですね。」


「で、誰よ。そんな命知らず。」


「例を挙げればマルフェッタ家の子息などのようですよ。」


「あ・・・クラリアの??」


カテリーナをけだもの呼ばわりしたあの令嬢であった。


後2年ほど見習いとして罰を受けている彼女。


彼女の一件で窮地に立たされたマルフェッタ家は死にものぐるいで立て直しを図りに来たようだ。


「お父様はあの件については一切書いていらっしゃらない。先送りして良いのかしら?」


「それと早めに戻ってくるようにとのことです。剣術演舞の練習が・・・」


「あー!!!忘れてたわ!!!ハロルドあなたもよ。」


「そうですか。」


「”そうですか”じゃないわよ!!じ・・・時間がないわ!!!」


『落ち着きなさい。まだ大丈夫よ。』


女神ユリーナが近くにいたエレーナやルーチェに見えるように姿を現し、二人の会話に割って入ってきた。


「お久しぶりですね。」


『ちょっと神々の会議が急に入っちゃってねぇ。』


「へぇ。」


『近年こんなことなかったのに。』


「どんな神々がお集まりに?」


『それはひ・み・つよ。それよりもカテリーナまた命ねらわれたんでしょ?』


今は夕方近く。夕食までまだ2時間ほど時間があった。


「あれからもう3日よ。」


「足止めですね。」


「フランツまで足止めらしいわ。」


「でしょうね。」


『ハロルドまでいるせいで周りの侍女たちが色めきだっているとか。』


「あー!!!暇よ、暇。」


「いつまでかかるのでしょうか?」


お湯をポットに注ぎお茶を出す。


そのお茶よりも煮えてしまったご令嬢が一人。


「もう!私、書庫に行ってくる!!!」


ストレス発散をかね、ともをつけずに書庫まで行ったカテリーナ。


宮殿から出る前に宰相から書庫の鍵を借りて行った。


宮殿を出て庭園を歩いていると途中どこかでみたことのある後ろ姿が目に入ってきた。


(あら、おかしいわね。彼も話し合いで缶詰のはずよ。)


誰かと話をしているらしくカテリーナが影で様子を見ていることに気がついていなかった。


『怪しいわねぇ。』


(何がですか?)


『何がっていわれても・・・』


(う・・・後ろに誰かいる!!!)


カテリーナは後ろを振り向こうとしたとたん、がつんと言う音が聞こえた。


その場に倒れ込むカテリーナ。後頭部を石のような堅いもので殴られたらしい。


右手で幹部をあてがっている。そして、かすむ目で殴った相手を見た。


逆光で顔はよく見えなかったが、ウィリア王国の侍女が着る制服を身にまとった人物が見えた。


カテリーナは消えゆく意識の中で何か呪文のような声も聞こえてきたがなんと唱えていたのか一切わからないまま意識がなくなった。

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