帰路
「ハンス、酒盛りはしばしお預けじゃな・・・」
「ははは。そうでございますな。」
「それで、何かわかったか?」
「はい。それが、あの根性悪は一切口を割りません。ほかはあやつに雇われたのでしょうな。
すんなりと口を割りました。彼らについてはたいした罪には問われますまい。」
「仕方ないやつだな。まぁ、アウグストがあやつらをひぃひぃ言わせるだろうな。
お仕置きと称して。我が息子ながら末恐ろしい。」
「いやはや。エリーアス様の若い頃そっくりではありませんか?」
「ハンス??」
小太りの大男に、にらみをきかせた。口が過ぎるぞとでも言いたげな顔をしている。
「虎ににらまれてしまいましたな。この辺で逃げるとしますかな?」
「冗談だ。ハンス。」
逃げだそうと立ち上がったハンスの腕を軽く引いた。
がたごとと揺れる馬車の中、カテリーナたちは車中で見たことのない花や木々や作物、畑をみて退屈を紛らわせている。
ふとカテリーナが何かを思い出したらしく立ち上がらんばかりに背筋を伸ばした。
「あー!お土産買うの忘れたわ!」
「カテリーナ様。私がきっちり買っておりますのでご心配には及びませんわ。」
「さすが、ルーチェ。」
「休憩時間に外に出て正解でした。」
「後で代金は払うわね。」
「お給料に上乗せでお願いします。」
ルーチェがウインクしながらカテリーナのほうを向いていった。
フリードリヒたちが乗っている馬車では男性陣があやしげな相談をしていた。
「兄上。」
「クリス。無事だったんだな。コルドベキアがなにか言っていなかったか?」
「そ、そういえば”かわいい姪がしょうもない男に恋心を抱いて困っておる”と言っていたことがありましたね。その姪が利用されたのかも。」
「『かわいい姪』か・・・」
「その人物を特定するのには時間がかかりますね。」
「しょうもない男とは一体だれのことやら。」
「考えも及びません。」
「あの男がしょうもない男と言うのだからおそらくは…」
ふっと笑った。
「ともかく、表だって話すべき事ではないな。」
「はい。陛下にゆだねましょう。」
それきりこの話は一切しないままおよそ7日後王宮に到着した。




