出発の日
「その節は申し訳ありませんでしたっ!!!」
ジザーニアからウィリアの王宮に向けて旅立つ前、荷物を早々とまとめ上げたカテリーナはフリードリヒを探していたところロビーで一息ついて座っていたのを見つけた。
エリーアスが事件の翌日、駐屯地に行くといって分かれたあとフェルディナンドのことでいろいろと話し合いをしていてすっかり謝る機会を逃していたのだ。
熱中症らしき病になっていたものも回復したのを機に王宮で話し合うことに決まった。
ルーチェとほかの二人の侍女たちとともにやってきて朝の挨拶もそこそこに崖でのことを詫びた。
カテリーナは怒られるのではないかと、気が気ではなくがっちがちに固まってしまう。
そんな主を心配そうに侍女たちは見つめている。
甘い顔をしたフリードリヒは立ち上がるとカテリーナを優しく包んだ。
「やっと、貯めに貯めていたことをはき出したのでしょう?怒ったりはいたしませんよ。」
そういって、しばらく抱きしめていた。
以前は力一杯抱きしめて毎度気絶させていたのだが、あの一件以来手加減をするようになったらしく軽く腰に手を回す。
「そろそろ放してくださいませんか?人目がありますので。」
フリードリヒが階段に目をやるとハロルドやエレーナ、シャーロットたちが部屋から一階に下りてきていた。
ばつが悪そうにしているカテリーナと幸せな顔で顔をほころばせているフリードリヒ。
ハロルドはエレーナの顔を見ている。エレーナはまぁどうしましょうと顔に手をあてがっている。
そこにフランツがやってきて、さわやかに告げた。
「そろそろお時間ですよ。」
と声をかけてくれたおかげでカテリーナはどうにか拘束から解放されたのだった。
ボディーガードたちはコルドベキア侯爵の跡を追うかのように陸軍駐屯地へと移送された。
屋敷にいた人物の中でフェルディナンドだけがこの宿屋に残ったのである。
「長らくお世話になりました。」
支配人に宿泊代やら何やらをカテリーナがきっちり払った後、馬車で王宮に向かった。
フェルディナンドは、兄であるフリードリヒと同じ馬車で向かうこととなった。
「やぁ。子ネズミちゃんたち。」
そういった中世的な顔立ちの男。
急にやってきた男に驚く女性たち。
「何事かしら?」
急にやってきた男にたてつくように仁王立ちした女性が腰に手を当てつつ行った。
ここは女官たちの住まう宿舎だ。
「君たちの悪事はすべて国王陛下に知れてしまったんだ。」
「何のことでしょうか?」
「おや、とぼけるつもりのようだね。」
「私たちが何かしたとでもおっしゃりたいようね。」
「証拠も証言もばっちりそろっているというのにまだいうのかい?」
「知らないわよ?」
「ここにいる全員が荷担していることくらいつかんでいるんだけど?
それよりもご家族のためにも早々に認めた方が身のためだと言っておこうか?」
「はぁ?」
「コルドベキア侯爵が反逆罪で拘束されたそうだよ。」
しれっと重大なことを言ってのけた男に皆顔が青ざめた。
「は??」
「君たちとんでもないことをしでかしてくれちゃって。
陛下も腹黒だよねぇ。自分の手を下さずにあぶり出してしまったのだから。」
いけしゃあしゃあと主について語る男。
「どうする?」
「どうするといわれても。」
「じゃあ、問答無用で君たちを牢に入れなきゃいけないんだ。抵抗しない方が痛くないし、ね。」
その中の一人が憲兵隊をかいくぐって走り去って行った。
「追え!彼女は事情を知っているはずだ!!」




