ディーレの王女の来訪
「頭の痛いことね…」
王妃からの手紙は次のような内容だった。
まず、殿方に逆らわず大人しくすること。
父親の言うことに逆らわないことなどなどだ。
もちろん、連れの殿方に対する礼も書いてあったが。
「それが普通の淑女、いえ御令嬢の取るべき態度なんでしょうけれど。」
ふぅ。と息をついた。
「それでいいのかしら?きっと本来は私もそのようにすべきなんでしょうね。
ただ男性に媚び諂うのは性にあわないのよねぇ。」
そう言いつつ、ルーチェにお茶を持ってきてと頼んだ。
この日は書庫へ向かうのをやめた。
それから数日後。
午後からまた書庫に向かおうかと思って部屋のドアを開けた。
すると・・・飛びつくきらびやかな女性が一人。ディーレの王女シャーロットだ。
「それで・・・???」
「カテリィーナァ!!!」
と押し倒さんばかりにすり寄ってきた。
「ここで泣かなくても・・・」
と困ったなぁ。という表情を見せるカテリーナ。
ウィリアでは長雨が続くのでその前にやってきたのだろう。
カテリーナにすがりつきつつわんわんと泣いている。
ベイリー卿によるとカテリーナの食あたりおよび毒殺未遂の話を聞いてすっ飛んできたらしい。
「ディーレでも私のこと噂になっているのかしら?」
「はい。この噂でもちきりでございます。そして、カテリーナ様がいよいよ輿入れという未確認情報も。」
「はぁ。なんてことなのかしらね…。まだ私は輿入れなんてしないし。大したことなかったのに。」
驚くほど大げさな噂が立ちあきれるやらなんやら導感情を表現したらいいかわからなくなっている。
「ねぇ。もうすぐ誕生日でしょ?」
「まぁね。どうせお祝いもないでしょうけれど?」
「うふふ。私プレゼント用意してきたのよ。私にお茶のプレゼントがあったものお返しも兼ねて。」
と言って侍女に目配せした。
きびきびと手荷物から両手に収まるくらいの箱を取り出すとシャーロットの目の前に差し出した。
「部屋のテーブルに置いて。」
と一言。
カテリーナとシャーロットがテーブルに近づいた。
「カテリーナのために特注したのよ。」
そう言いつつ箱を開けた。
「きれいでしょ?」
「これ・・・まさか。」
「そう。デザインは私がしたの。」
「また、豪奢なものを。そんなにたいしたもの送ってないわよ?」
「カテリーナがくれたお茶は効果抜群だもの。それ以上の価値があるわ。
あれから一度も風邪を引かないの。
昨年、ウィリアの王妃様に少しお分けしたのよ。余りお体が丈夫ではない私欲寝込まれるとお聞きして。」
晴れやかに言った。
(もしかして・・・)
カテリーナは悟った。
はやり病で危険な状態だった王妃は風邪に効くお茶を飲んだ可能性がある。
(あのお茶・・・そんな効能があったなんて。まぁあくまで仮定だけど。)
「そう。そうなのねぇ。良かったわ。」
と言うにとどめた。
シャーロットは話を元に戻し、プレゼントについて話し始めたが、ちらちらと視線を別な方向に動かしている。
きれいなペンダントで彩色豊かなきらびやかさが目を引く一品だった。
一通り話し終えたところでこう切り出した。
「で、フリードリヒ様とは?」
「何にもないわ。いたって普通よ。」
「・・・一つ聞いていい?そこのいすに座っているのは??」
「え??」
とシャーロットの目線を追うとさも前からそこにいたようにフリードリヒがくつろいでいた。
「なんでここに?」
「ん?取り込み中のようなので気づかれないように…」
「こそっと入ってきたと?」
「まぁ。そのようなものだな。」
「淑女の部屋に堂々と入る殿方って・・・」
「カテリーナ。怒ったら顔にしわができるわよ。」
シャーロットに忠告された。
美容に悪いわよという一言もついて。
「勝手にしなさい。」
フリードリヒを捨て置いた。
「シャーロット。陛下にはもう?」
「えぇ。御挨拶は済ませたわ。カテリーナの誕生日が近いこともついでに…」
「言っちゃったの??」
「そしたら、盛大に祝おうってことになって…」
と言いかけて。はっと息をのんだ。
「あ・・・言っちゃった…。」
「そんなことなさらずとも宜しいのに。」
「へ・・・」
と驚いたようでいすから立ち上がったフリードリヒ。どうやらカテリーナの誕生日を知らなかったらしい。
「どうしてそう割って入ってくるのかしら?」
「ちょ・・・ちょっと急用を思い出した…」
言いつつ素早く部屋を出て行ったフリードリヒ。
「お互いバレバレね。ルーチェお茶をお願いね。」
と言いつつシャーロットに席を進めた。




