遅めの朝食
「ルーチェ、ここであったも何かの縁だわ。侍女の服を貸してくれないかしら?」
「お嬢様、はしたないですよ。それよりもお加減は宜しいのですか?そして今までどちらにいらっしゃったのですか?」
と、諌められて強要するのをやめた。
カテリーナが自身の部屋から続いていた隠し通路を通ってやってきた場所は…使用人たちの部屋が数多くある城の北側の建物につながっていたのだ。
そこに、たまたまルーチェがカテリーナを探して走り回っていたところに出くわしたのだ。
「体調はすっかり元に戻ったわ。そうねぇ。手っ取り早く言ってしまえば身の危険を感じて逃げてたのよ。」
と言ったカテリーナのお腹がぐーっと鳴った。
「お嬢様。お食事はまだですよね?」
「え・・・えぇ。」
と恥ずかしそうに頭を垂れた。
「仕方ありませんね。今から食事を二人分とってまいります。私もまだですし。
急に帰郷した女官の食事もあるでしょうから数としては問題ないでしょうし。
でも、おかしいですね?部屋には食事がまだ残っていましたけれど。」
と訝しがっている。
「だって、私の食事に睡眠薬が入っていたみたいだもの。昨日は食あたりにあうし・・・」
「・・・お嬢様。私が様子を見に行ったときあの部屋におられたのですね。」
「危険が迫れば逃げるのが私のポリシーよ。」
と偉そうに言った。
そんなカテリーナの言葉を聞き流したようにルーチェがほほに手を当てながら考えている。
「食あたりは偶然かもしれませんが、睡眠薬が入っていたとなると話は変わりますね。」
そう言ってカテリーナを自身があてがわれた部屋へと案内し、中へ入れた。
「ここでお待ちください。くれぐれも部屋から外へは出ないよう。ご注意ください。
たとえ、何者かがドアをたたいても決して返事も応対もなさらないでください。」
「ん。もう!夫人みたいなことを言わないでよ。」
「では、行ってまいります。」
と言ってカテリーナを残し、食堂へと向かった。
部屋に残されたカテリーナはユリーナと共に今後の行動を精査している。
『敵が何者かわからない以上対応が取れないわね。』
(大人しく部屋にいるのは危険ですし・・・)
『何か対策を取らないと。』
(協力者が必要ですね。)
『誰にする?』
(信頼できる人物…信頼できる・・・フランツも殿下も視察に行って王都から遠く離れた町にいるし。
ハロルドはエレーナのそばを離れられないし。国王陛下は公務が忙しすぎるご様子だし。)
と、ここで話が途切れてしまった。
何故、帰郷したばかりのベルンハルトが視察に行ったのかと言えば答えは簡単である。
兄であり、国王であるフェリックス・アウグスト・ウィルフロードがたびたび体調を崩し日常公務が滞りがちであるためだ。
現に数週間前には済ませておかなくてはならない書類の目どうしや印押しなどが終わっていない。
そんなときに視察予定が重なってしまった。
フリードリヒがいなければ日常公務を先送りして視察に向かうのだが、一時帰郷しているためフリードリヒが名代として視察に向かったのである。
「で・・・ルーチェ。このお方は???」
食事をワゴンで持って帰ってきたルーチェと共に入ってきて一歩前に進み出た30台と思しき女性が立っていた。
「お久しぶりでございます。私は、ここで女官長を務めておりますマルレーネと申します。
一拍空いて驚きの声をあげた。
「え~!!!あの時新人女官だった?!」
「お嬢様。お知り合いでしたか?」
「もう10年くらい前にね。私がウィリアに滞在していたころ知り合ったの。」
「そんなにもなるのですね。時がたつのは早いものです。」
と感慨深げな様子である。
「ところで、女官長様が私に何の御用かしら?」
「お食事をとりながらで結構ですので。」
と言われたので、ルーチェとカテリーナは食事をし始めた。
内容は、急病人が出たので、国一番の腕のある医者が今、王宮に来ているのだそうだ。
おそらく、彼女の見立てによると食あたりを起こしたカテリーナに対する医者であろうと推測し、カテリーナが消えたとの報告があり探していたとのことであった。
「え・・・医者が来たぁ?!」
頼んでもいなかった医者が来て絶句するカテリーナであった。
話を聞き食事を楽しむことなく手早く食事を済ませると、3人はカテリーナのあてがわれた部屋へと向かった。




