書庫
「今日から読書三昧よ!!」
ウィリアにつて早々城下町を歩かされたカテリーナはフリードリヒにつかまらないように朝食後部屋に立ち寄ることなく、すぐさま書庫へ向かった。
初夏の陽気に心地よい風が吹いている庭園を抜けて西の塔のそのまた裂きにある5つほどある土倉のような建物が書庫群である。
事前に書庫群のかぎを借りておいたおかげでスムーズに事が進んでいる。
ガチャリとあけるとそこには、書庫一面に大量の本が所狭しと並んでいた。
(わぁ!!!すごい。やっぱり大国の書庫ともなると規模も所蔵数もけた違いだわ!!!)
『見たこともない本もありそうね。』
書庫の管理人は普段はいないが、本を借りる際または鍵を返しに行く際は管理人に言えば良い。
彼は普段、宰相として国王の執務室にいるため容易に探し出せる。会うのは朝早くか夕方がよい。
仕事が立て込んでいる場合は、警護の者に言伝をしてもらい代理を務めてもらう習わしだ。
それ以外は、基本的に本の読み放題である。
ここ一帯にこの5倍はあるのだから本好きにはたまらない場所である。
(興味そそられますよね?)
『また帰って来ちゃったわよ!!もちろん!!!』
(お姿を現してお読みになられますか?)
『当り前でしょ?!入口を閉めておきましょう。邪魔が入らないように。』
(はい。)
姿を現しながら女神ユリーナは入り口のドアを閉めた。
そして、カテリーナと向かい合わせに座った。
勢いよく部屋のドアを開ける男が一人。
そこには侍女が3人。急な訪問者に面妖な顔を一瞬したがすぐに平然として振り向いた。
「いない・・・か。」
「一足遅かったようですわ。」
「ちっ。」
「今頃は愛するものに囲まれて幸せでしょうねぇ。」
「さすがはお嬢様。」
「本日は御諦めになられては?」
と口々に言われたものの引き下がる様子を見せない。
「どこにいる??」
「お嬢様は約束を破る方と、しつこい方は御嫌いでいらっしゃいますから。」
「分が悪すぎますわねぇ。」
「ということでお引き取りをお願いしますわ。」
侍女3人がかりで言い含められ部屋から追い出されてしまった。
「くっ・・・どいつもこいつも・・・」
いらだちつつ捨て台詞をはきつつどこかへ消えた。
翌日も、例のごとく書庫に入り浸るカテリーナ。
ある本に目を止め、取り出した。
(これ・・・)
『どうかした?』
「神々についての本だぁ!!懐かしい~~。」
思わず声に出す。
これは神々の説話集で多くの神々の伝説がつづられている。
『あら。本当?』
(あ・・・これこれ!!!)
と、数ページパラパラとめくっていく。
『あっ。お母様のお話ね。』
(さすがは、古代リア王国の末裔ですねぇ。)
『あら、知ってたの?』
(きっちり学校に通っているときに調べましたわ。でも、もう血縁は途絶えてしまったとか。)
『カテリーナ。』
(知の女神にお祈りしてくる人たちが大勢やってくるときってユリーナ様は私のそばにいらっしゃらないから。話し相手もいないし。暇だったんで調べてました。)
『あぁ。その時期に調べたのね。どおりで私が知らないはずだわ。』
知の女神にお祈りをする人あれば言って駆けつけるのが神としての役目である。
特にフィリアの王立学校の合格発表前はひっきりなしに神殿を訪れるものが多くその時期だけはカテリーナのそばから離れるのだ。
(ユリーナ様。これだけの蔵書一生かかっても読み切れませんよね?)
『読んだことのある本は読まなくてもいいんじゃない?』
(ここにある本半分は読んだことのない本ばかりですよ?)
『ここにお嫁入りしたら読み放題じゃない!!!』
(ですよねぇ。気がそそられちゃいますねぇ。困りましたわ。)
『あの男カテリーナが無類の本好きだって知らないのかもね。』
(でしょうねぇ。知っていたらこれをえさに求婚してきてもおかしくないですから。)
そんな一人と一柱の楽しげな会話はその日の夜まで書庫の間で続いたのだった。




