巫女になる条件
「この前できなかった確認をしましょう。」
昼間ならばカーテンをかければ肖像画も見やすくなる。
そしてここは、庭などに通じていないので周りから見られる心配は皆無だ。
しかし、その判断が徒となってしまったのだがそれは後日判明する。
隣は図書室で絵画の間も同様に壁は厚くなっている。
誰からも聞こえることのない空間である。
人知れず肖像画を見ながらカテリーナは考えていた。
この後どう攻めるかを。
「私の両親についてよ。どんな御顔をなさっておられるか全く知らないから。」
「日記によれば、わずか三カ月の赤子でしたから覚えてはおられないでしょう。」
「やはりそっくりね。王妃マリーナ様と私。国王陛下とは顔はそっくりだわ。あら?
でも瞳の色はどちらとも違う…???変な話だわ。」
王妃マリーナは前にも出たようにレモン色とアメジストのような紫色。
そして腕には王妃と同じくレモン色の赤ちゃんを抱いている。
おそらく出産後ひと月後くらいに描かれた絵のようである。
しっかりと頭を支えて優しい母親の感じが出ている。
赤ちゃんは正面を向いておらず母であるマリーナを見ていて顔は伺い知れない。
かたや国王アレッシオは、若いころの絵らしく、はつらつとした男性で、髪の色は亜麻色で、瞳の色はコバルトブルーである。
その頃の年齢はおよそ40代であったはずである。
-立派な王様-そう思わせる絵である。
「絵画の間はあまり人が来ないところですからゆっくりしていきましょう。」
「えぇ。でもどうしてだれも来ないのかしら?」
「こちらとしては都合が良い。」
「私もそうです。」
「なぜですか?」
「私との結婚をあきらめてください。もう、祖国へお帰りいただきたいのです。」
「なにを・・・おっしゃっておられるのですか?」
「古代色はご存じでしょうか?たとえるなら私の髪の色と瞳の色がそうなのですが。」
「レモンの色の髪色は国王の中にもちらほら出ているようですね。」
明るい室内に飾られている肖像画を見つつ頷いた。
「古代リア王国の王家の血を引く証なのです。古代食を持つ王族の人物には高率で巫女や神官になる者もいたと言います。
普通の巫女や神官とは違って神職同士の結婚することはできません。
今置かれている現状から言って私が巫女になるしかないと。
私がどの殿方と婚儀を結んだとしてもこの混乱は内乱に発展します。
ですから、あきらめてください。この国の平穏のために。」
「私としても引くに引けません。」
「そこまで私を求める理由はあるのでしょうか?」
「兄上と約束したのです。貴女を妻とし、正妃に据えると。」
「そんな・・・!!」
『カテリーナ。貴女の意見は極論ね。こんなことも知らないなんて。』
「ユリーナ様?」
声色高い声が響く。
フリードリヒは声のする方向を探している。
「ユリーナ様。殿下にも見えるお姿で出てきていただけませんか?」
『わかったわよ。』
きらめく光の中、フリードリヒとカテリーナの間に立ちはだかるように幼子の姿の女神が現れた。
『自己紹介まだだったかしら?カテリーナの守護神、知の女神。カテリーナはユリーナって呼んでるけど。呼び方は好きにしなさい。』
「は・・・はい。よろしく。」
『カテリーナ。ここではっきりと言っておくわ。王族が巫女になるためには重要な条件があるの。
だけれど、貴女には当てはまらない。もう、巫女になるだなんて言わないで。』
「ユリーナ様!!」
『噂や情報は間違ったものが混じっていることがあるって言わなかったかしら?』
「真偽を確かめるまでは鵜呑みにはできません。」
そうそう、と言いながらユリーナはカテリーナに重要なことを伝えた。
『一つ言っておかなくてはいけないわね。貴女には結婚しなくてはならない大事な役目があるのよ。』
「なんですかそれ。はじめて聞きましたけれど?」
『そりゃ、はじめて言ったもの。』
「ユリーナ様私の役目って・・・?」
『秘密。あとはよろしくね。』
言いたいことだけ言って笑いながらユリーナは姿を消した。
「神出鬼没なお方だ。」
「いつものことよ。あら、そろそろ出ないともすぐお昼だわ。」
カーテンを閉める。すべてのカーテンを閉め終え、絵画の間を出ようとしたカテリーナ。
ところが、フリードリヒが腕を掴むと甘い顔をしながらこちらを見ていた。
「貴女の秘密を一つ知りました。」
フリードリヒは絵画の間を出たあと、元いた王宮の庭へと消えていった。
カテリーナは、外で待たせてたピンパル夫人らとともに帰宅の途に就いた。




