春に
「それで、何故こういうことになったのでしょうか・・・?」
ここは小屋から少し離れたところでフリードリヒが埋まっていたあたりだ。
そこへきっちりと防寒着を着たフリードリヒとカテリーナは久しぶりにやってきた。
すぐそばまでやってきたとき、抱きつかれた。
「ありがとう。」
後ろを見ると誰もいない。
ふりほどくこと無くいつも通りの口調、顔をして言った。
「当然のことをしたまでです。ですから離れてくださいませんか?」
とカテリーナは言った。
そのあとしばらくカテリーナはぼんやりとその場所を眺めていた。
いつの間にか手際よくフリードリヒに巻かれていることに気がついたが、その時にはすでにカテリーナはフリードリヒによってなめらかなショールでぐるぐる巻きにされ身動きが取れない状態でいた。
「ウィリアにしかいない特別な羊の毛で作ったショールだ。」
「ものすごく高いショールですよね?」
「そうだ。今まで一度も品物をプレゼントしたことがなかったからな。」
と大したことがないように話すフリードリヒ。
「そこらへんの宝石よりも高価なんじゃない!!」
カテリーナの怒りの声が草原中に響き渡る。
ウィリア羊と呼ばれるその羊とは、ごく希少な羊で良質な毛の量も少量の上織るのにも他の羊の毛とはけた違いに手間がかかる。
その羊の毛から作られた織物は王族の人間しか持つことを許されないとされる代物。
それを渡すのだから彼の思いは遙かに強いものを物語っている。
「私は何もしていませんし…私にどれだけ貢がれても何も出ませんよ?」
「私はこれをもらったから十分だ。」
と言ってフリードリヒはにっこりした。
まだ寒さの厳しい森の中でベルンハルトはカテリーナの手編みのセーター、マフラー、手袋を長年愛用している外套と共に身に着けていた。
「もうじき、春になりますよ?」
「来年の春まで取っておく。」
「虫食いにあわないようにしてくださいね?」
と、取り扱いの注意点もついでにしておいたカテリーナ。
「ところで、春になったら王都に戻るのだな?」
「えぇ・・・叔父様に迷惑をかけたことを詫びに行きます。殿下もご一緒ですよね?」
「カテリーナ。貴女も咎を受けるかもしれないが覚悟はできておいでかな?」
「それくらいは出来ていますよ。
それとシャーロットに手紙をまた書かないといけないわね。
こちらでいろいろとあったおかげで書けなかったし。」
「で、どうやって戻るつもりでいるのか?」
「雪解けが始まったらお父様に馬車か何かを手配していだたこうと思っています。殿下もフランツも帰ってくることを伝えますのでおそらく馬車になると思います。」
「そうか。」
「ところで、これをほどいていただけませんか?」
「すぐに逃げ出すから駄目だ。」
と、フリードリヒは言いつつ顔が近づいてきた。
「嫌ぁ!!やめて!!なぜそうなるのよ!!」
とっさに顔をそむけ左側にキスを受けたカテリーナ。
カテリーナは、ほっとした。
フリードリヒは、少々残念そうである。
「そのような方は嫌いよ!!」
その一言でフリードリヒは自身が嫌われていることを知った。
がしかし、彼の思いは募っていくのであった。
結局カテリーナは小屋に自力で戻ってジュリアーノにほどいてもらった。
やがて春になり、カテリーナたちが王都に帰る日が来た。
迷いの森のふもとの村に馬車が用意されている。
そこまでは徒歩で移動となる。
「おじい様、おばあ様お世話になりました。」
「うむ、また会えれば良いな。」
「体に気をつけてね。ルチアもルアーナも寒がりだから見送りに来なかったわね。」
「ベイリー、元気でね。」
「ワン!!」
めい一杯しっぽを振ったベイリー。
「これ、ハンカチに刺繍をしてみたんです。お礼にこれを。」
と言ってカテリーナは二人に2枚のハンカチを差し出した。
そこには色違いの蝶の図柄が刺繍されていた。
「まぁ、ありがとう。カテリーナ。」
「大事に使わせてもらおう。」
と礼を述べた二人。
馬車に乗り込んだ後カテリーナ、フリードリヒ、フランツは見えなくなるまで手を振っていた。




