目覚め
「あれから3日目ね。」
『えぇ。』
(目を開けて!!)
低体温症を起こしたフリードリヒを懸命にさするカテリーナ。
時折湯たんぽの湯を取換えることをフランツと交代で行っている。
3日経ってだいぶん体温も上がってきた。
この日は女神ユリーナも姿を見せた。
『私は医師の神ではないから断言はできないけど、そろそろ目が覚めるころよ。』
「ユリーナ様。殿下が不妊症なったりは…しませんよね?
私の推理では、ウィリアの国王陛下は不妊症のような気がするのです。
もし、殿下もそのようなことになったら・・・そう思うと・・・」
『大丈夫よ。低体温症くらいでそんなことにはならないわ。変なことを心配するのね。カテリーナ。』
「・・・そうですよね。いえ、私のせいでこのようなことになってしまったものですから。」
『そんなに知りたければハロルドにでも聞けばいいじゃない。』
のちにカテリーナはハロルドに聞いてみたが影響はないだろうと言われた。
(あの時のようだな…8歳の時に女神に助け出された…)
と夢心地のフリードリヒがうっすらと目を開けるとそこには…
「わっひゃ!!」
という声で飛び起きたフリードリヒ。
そばにいたカテリーナは今まで聞いたことのない声を聞いて驚いている。
フリードリヒを暖めるためベイリーもルチアもルアーナも眠っていた。
「目が覚めましたか?」
「あ・・・あ・・・」
「一つお聞きしてもよろしいでしょうか?殿下は死ぬ気だったのですか?」
と言いつつフリードリヒに抱きついた。
「え?」
とっさのことでどうしていいかわからない様子のフリードリヒ。
カテリーナは自分のせいで生死の境をさまよわせてしまったことを悔いて泣いていた。
突然のことでどうすればいいのか頭が真っ白になっているフリードリヒを背後でおもしろそうにフランツが見ていた。
カテリーナが、アンナに呼ばれベルンハルトから離れた後、フランツがフリードリヒの隣に座った。
「よかったですね。体調はどうでしょうか?」
「まぁまぁだな。」
とフリードリヒはフランツに言ったとき、グーッという音が聞こえた。
カテリーナが、かちゃかちゃと言わせながら何かを持ってきている。
「あれから3日経ちましたからね~。」
「お腹が空いたのでしょう?」
「あ、あぁ。」
「急にパンとかではないほうがいいでしょう。殿下、スープなら飲めるかしら?」
膝を曲げたカテリーナが小首をかしげている。
「口を開けてくださいね。」
謀らずもカテリーナはスプーンにすくったスープをふぅふぅと息を吹きかけながら少し覚まし、フリードリヒの口元に持っていった。
それはスープが空になるまでそれは続いた。
カテリーナは自身の罪滅ぼしのつもりでしているのであって恋愛感情一切なくやっていたのだが、フリードリヒにとってそれは恋しいカテリーナにそのようにされて内心ホクホクであった。
そばで見ていたフランツは恨めしそうに見ていたがそれすら見えていない二人であった。
それからは雪のせいでずっと小屋から一歩も出られない生活が3カ月にわたって続くのだった。
ジュリアーノとフランツは定期的に雪下ろしをしていたがフリードリヒは今回のこともあって本調子ではなかったのでフリードリヒの仕事と言えば歩けるようになった後は…食器の後片付けなどが主であった。
カテリーナとアンナは食事作りなどそのほかの家事全般を受け持っていた。
空いた時間などに作ったカテリーナはフリードリヒに手編みのセーターと余った毛糸で作ったマフラーとミトン状の手袋を出来上がった時点で渡した。
毛糸はもちろん、羊を飼っているのでその毛から毛糸を使ったものを使用している。
カテリーナがそれらを編んでいるとき猫たちは毛糸にじゃれついていた。
(なんとも微笑ましい情景であろうか。これが一生続いてくれたらどんなに幸せだろうか。)
とフリードリヒは穏やかに眺めていた。
カテリーナの傍らにはフリードリヒがいて、ときどき編みかけのセーターやマフラーを体に合わせながら編んでいた。
そうしないと編んでいるうちに小さすぎたり大きすぎたりするからである。
カテリーナはフリードリヒに『カテリーナのそばにいる』という格好のチャンスを与えてしまったことに全く気が付いていないのであった。




