情報交換
「ルーチェ、殿下をお通しして。」
とカテリーナは侍女にドアを開けさせ、客間にいるフリードリヒを招き入れ、椅子に座るよう促した。
「我が愛しき君にひとつ聞きたいことがあるのです。」
まじめな顔をして単刀直入に聞いた。
「貴女は先代国王陛下のご息女でいらっしゃいますね?」
すると、向かいの椅子に座ったカテリーナは、すんなりと答えた。
「えぇ、どうやらそのようですわ。なぜそれを?」
「幼子を国外に送り出すのは異常ですから。何かあったのかと調べたら出てきました。出所はいえませんが。」
「そう。それを知ったときお父様からこれを渡されたの。」
と言いつつ2冊の分厚い本を差し出した。
「これ、先代国王夫妻の日記なの…」
「少し中を拝見してもよろしいでしょうか?」
それを受け取ったフリードリヒはきりりとした顔で尋ねた。
「えぇ。王宮で出会ったときのことを覚えていますか?」
「確かセザールとか。」
「あそこにいた男はヴィルフレートの皇太子の配下の者です。・・・偵察にきたのでしょう。」
「ヴィルフレート側の不穏な動きですね。上司に伝えておきます。」
「お願いします。私、5つ位の頃ウィリアの王宮に滞在していたような気がするのです。そのときお会いしませんでしたか?」
「そうでしたかね?」
「覚えていらっしゃらない??」
「もう10年も前の話です。覚えてなど居ませんよ。」
「まぁ、昔のことですし。そうです、あの・・・」
ぱらぱらと読んでいくフリードリヒが顔を上げる。
「どうやら私名前間違ってつけられたようです。」
「王妃様の日記の最後のページ・・・ですね。シンシアとやたら多く書かれてますね。」
「どのような意味なのでしょう?」
「心当たりは?」
「いいえ。」
それっきり会話が無くなり静かな部屋で黙り込んでしまった。
日記にはたいしたことは書かれておらず日々の暮らしについての記述が多い。
何か見落とし・・・見落とし・・・するとフリードリヒが何かを思い出したように顔をきらめかせた。
「あっ!ようやく思い出しました。長い間ウィリアから離れていた上に遠い記憶のかなたにあったものですから思い出すのに時間がかかってしまいました。
シャーロット王女の見かけたという人物に身体的特徴がよく似ている人物に2人だけ心当たりがあります。
我が弟、フェルディナンドと先代国王つまり私の父です。
長い間、父と弟とはウィリアにいるころから疎遠でしたから。」
「まぁ。」
本当にそうだろうかとカテリーナは思った。
実の父と弟のことを忘れてしまうものなのだろうか。
その点においてカテリーナは疑問に思った。
「貴族の中にはほかにも合致するものがいるかもしれませんが。おそらく違うでしょう。ジザーニアに所領を持つコルドベキア一族にはそのような人物は弟だけですから。」
「ただ、王位継承者には即位した国王陛下から特別な指輪を与えられるのですが、シャーロット王女はそのことについて何もおっしゃらなかった。
まぁ、おそらく見た目年齢から行くとおそらく弟でしょう。」
「憶測で判断してはいけません。一度確認しなくては。」
「ですが、それはこの夏シャーロット王女が確認すればよいことではありませんか?」
「そうねぇ、それを踏まえてシャーロットに手紙を出しましょう。」
そこでフリードリヒは帰って行った。
このことは私たちだけの秘密ね。と約束した。
「お嬢様。あの話ですが、お嬢様より年上の王族の方々やこの屋敷の者なら全員が知っていることです。むろん私も。」
「ルーチェ。そうなの?ハロルドたちは知っているの?」
「いいえ。おそらく知りません。余り知られて良いことでもないですし。
利用されるだけ利用されて悲しい末路になるでしょうし。」
「そうね。黙っていた方が良いわね。」
二人はそっと寄り添った。




