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嫌われ王子と引きこもり令嬢  作者: 光森 璋江
第1部 第4章 成人の儀
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眠れない夜

「やっぱり眠れないわ。」


部屋に戻り、湯浴みをすませ少し情報整理をして、いざ、寝ようとしたときドアをノックして部屋に入ってきたピンパル夫人からセザールについて調べたことがまとまった封書が届いた。


それを見たカテリーナは、あのときの嫌な予感はこれだったのか。と思った。


そんな情報を見て余計に眠れなくなったカテリーナは以前、レオポルドや国王リベラートの言う、実の両親という先代国王夫妻の肖像画を気晴らしに見に行くことにした。


外へ出て少しは落ち着かないと変な方向に考えが働いていきそうで怖かった。


そこは絵画の間と呼ばれ歴代の国王、王妃、側室(昔はいたらしい)の肖像画がたくさん並んでいた。


しかし、不用心にも一人赴くことにした。もちろん、護身用の短剣をガウンの懐に忍ばせてはいるが、夜中に一人で出かけるほどねらわれやすいのは常識だ。


が、ただの気晴らしに護衛の人を連れていくのは気が引けたので、部屋を抜け出すことにしたカテリーナ。


部屋のある3階の奥から1階に下りて南の奥の図書室の隣が絵画の間である。普段は人は立ち入ることのない部屋である。


「えっと・・・これだわ!!」


そこには、たくさんの肖像画が飾られている。札にはマリーナ王妃とかかれている。が、いかんせん夜中であり、はれてはいたが絵は見づらかったため持っていた燭台を上にあげてみた。


そこには、神官のジャンニの話通りのカテリーナと同じレモン色の髪にアメジスト色の細面の女性の肖像画があった。


足下の周りにはサントリナの可憐な花が絨毯のように咲き乱れている。


そして腕の中には小さな赤ちゃんもいた。


(この小さな赤ちゃんが私・・・なの???)


次いで、先代国王陛下の肖像画も全体的に見て、カテリーナはこうつぶやいた。


「変ね。似てないわ。」


ふっと、カテリーナの右側のあたりで人の気配を感じた。


「・・・誰?後ろにいるのは。」


とカテリーナは人の気配のする方へ燭台を向けた。


「あら、セザール様。何故、こちらに?」


「カテリーナ様こそ。夜分にお一人とは。」


「そうだわ。セザール様、この際だから一つ言っておきましょうか。貴方についていろいろと調べさせていただきましたわ。


貴方はヴィルフレート帝国からの留学生・・・でもそれは表向き。本当は私をヴィルフレート帝国の後宮に入れるための隠密なのでしょう?


しかも、私が7歳の頃ヴィルフレートの後宮に1ヶ月もの間閉じこめられていたときに貴方いたわよね?」


「・・・えぇ、確かに私もいました。良く覚えておられましたね。」


サロンで初めてあった夜にカテリーナがある人物達に調査を依頼した結果がこれであった。


「コンスタンティーノはお母様と一緒で鷹揚が良いんだから。」


そう、ヴェロニカのサロンに彼を紹介したのはコンスタンティーノだったのだ。




「何者かの足音が聞こえたぞ。フラン。」


またしてもカテリーナを探すフリードリヒ・・・ではなかった。今回は、用向きが違う。


実はカテリーナのストーカー・・・いや、見守りをするのは専ら休みの時のみで、彼はフィリア王立学校卒業後、フィリア王国で軍事留学をしていたのであった。


カテリーナに思いを伝えることが出来ずいろいろ考えた結果これで残留することにしたようでとりあえず一兵卒として騎士団の下っ端をフランツと同じ部隊に所属している。


そして、カテリーナ達に侵入者として別邸にとどまり、その後カテリーナの嘆願書の返答が王命であったためその後もずっと別邸に滞在し続けていたためしばらく二人は現場を離れていた。


無論、現場を離れることを上司も承諾済みであった。


で、今回は人手が足りないからと言うことで、夜、成人の儀の後王宮の警護に当たっていたのであった。


「そういえば、コンスタンティーノ様が『女性の尻を追いかけてばかりの王子』と揶揄されておられましたが・・・」


「あいつはシスコンにもほどがある。と言っても従姉弟なのだがな。姉呼ばわりしている。なれなれしい・・・」


「はぁ、カテリーナ様がピンチの時等いざとなったら心強いと周りからは良く言われておられますが。」


「フランはどちらの肩を持つのだ?」


「・・・殿下でございますよ。もちろん。」


「ならば口をつぐんでおれ。」


いらいらしながら回廊を歩いていく。その後をフランツはついて行く。




絵画の間ででセザールに出くわしたカテリーナは尋ねた。


「で、今から私を攫ってヴィルフレートまで行くのかしら?」


「いえ、それはまたいずれ。」


「そう。せっかくのチャンスでしょうに。私一人でいる事なんてそうそう無いというのに。」


「皇太子様から時期尚早との伝令がございました。その命に背くことは出来ません。」


「律儀な人ね。セザール様は。」




警護の人物か何者かが絵画の間へと近づいてきた。


「誰だ!!」


と勢いよく絵画の間のドアを開けた。


漆黒の闇に紛れた姿をカテリーナは燭台で照らすと、そこには見慣れたフリードリヒとフランツがいた。


「あら、殿下ではありませんか?別邸へお帰りかと思いましたわ。」


「今は本来の仕事中でして。」


「そうなの。」


二人の姿を目にしたセザールは、にこやかにでは、私はこれにて失礼いたします。と言って絵画の間を出て行った。


「あら、あっけない幕引きですこと。」


「そんなのんきなこと言っている場合ではないでしょう。少し会話を聞かせてもらいましたが、ねらわれているのですよ。あの男に貴女は。」


「幼いときからねらわれ続けていたら、もうとっくの昔に慣れたわ。だからこうして護身用の短剣を持っているじゃないの?」


とガウンの懐から短剣を見せたカテリーナ。


「・・・」




「そうだわ!!明日、シャーロットと王宮の中庭でお茶会をしようと思っているの。あなた方も一緒にどうかしら?」


「はい、今日だけですので。時間はありますよ。我が愛しの君。」


「私は、殿下が行くのであれば。」


と返事をした。


「約束ね。午前10時頃、王宮の中庭で会いましょう。では、戻るわ。」


とうれしそうにほほえみながらカテリーナは絵画の間を後にした。


(昼間見る方がよいかもしれない。きっときれいに見えるし、じゃまもされないはずだわ。)


と、部屋に戻る中カテリーナは思った。




「もうすぐ交代の時間だ。宿舎に戻るぞ。フラン。」


「はい。殿下。」


と二人も絵画の間を出て行った。

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