フィリア王立学校
「シャーロット・・・」
シャーロットは、5分前からあの調子だ。まだ時間がかかりそうなので、仕方なく広間に戻ってきたカテリーナ。
そこには、たくさんの人だかりが出来ていた。フリードリヒがその中心にいた。
フランツはと言うとかなり離れたところで主のに危険顔四羽はないか監視をしている。
どうやら今まで、社交界に出ていなかったらしく、あまたのフィリアの貴族令嬢子息から声をかけられていたらしい。
そんな二人を横目に見て、カテリーナは急いで会場の王宮の廊下に出た。人気のないところで、髪をばさっとほどいた。
どうやら、結い上げた髪が崩れてしまったらしい。カテリーナは、準備室まで急いでいたらまたしても人にぶつかった。
どうしてこうも、カテリーナは人にぶつかってしまうのだろうか。
「申し訳ございません。前をよく見ていなくて。」
と顔を上げたとたん、カテリーナは驚いた。
それは、ぶつかった人物が公爵夫人ヴェロニカのサロンにゲストとして来ていた青年だったからである。
「お久しぶりです、セザール様。」
「奇遇ですね。カテリーナ様。」
「私の成人の儀へ招待されたのでしょうか?」
「・・・まぁ、そのようなものでしょうか。おや、お連れの方ですかね。ものすごくお怒りのようですよ。」
とセザールが見ている方を見るため来た方向へカテリーナは振り向いた。
「さすらいのお方。どうかなさいましたか?」
「どちらに行かれたのかと思いまして。探したのですよ?」
「あら、私達そのような仲でしたからしら?」
「一月ほど一緒に生活したではありませんか?」
「あら、勝手に押しかけてこられたの間違いではございませんか?それほど仲良くなった覚えはありませんし。」
「・・・」
「ですから、そのようにお怒りになられませんよう。」
「・・・分かりました。」
「あっ、いたいた。姉貴~~~。どうだ、こいつ。
俺の友達で、ヴィルフレート帝国一の秀才なんだぜ。俺が招待しておいた。」
「そうだったのですか?」
「はい。申し遅れました。ですが、私は2年前に留学してきたのです。
コンスタンティーノから聞いたのですが、王立学校に通われておられたとか。
ですが、私は貴女に一度もお会いしていないのですが。」
「あっ、私は3年ほど前に何度か飛び級をして既に卒業してしまいましたの。」
うふふ。とカテリーナは笑った。
カテリーナは3年前ちょうど、引きこもり最中に卒業したのだ。
レオポルドとの約束の高等教育を受けることつまり、フィリア王立学校を卒業することであった。
もちろん、王立学校側からの家庭教師が特別に派遣されて卒業できたのであった。
カテリーナの事情が事情だけに特例で認められたのであった。
ただし、卒業試験はおよそ、近隣各国一難しいとされていて、それで留年する者も少なくない。
それを飛び級を3度したというカテリーナはわずか12歳にして一発で成し遂げてしまったのだ。
これは王立学校創立以来の快挙であった。さすが、カテリーナは知の女神ユリーナの申し子だけはある。
フィリア王立学校を卒業すれば、かなりのステータスを持っているという証明になる。
故に、入学試験の競争倍率が異常に高かったりする。
入学してからの授業料等々は国が持ち、寄宿学校であった。
ただし、進級するには厳しい・難しい試験を突破しなくてはならない。
もちろん勉強はハードである。故に自主退学してしまう者もかなりいる。
それに、定期的なテストである一定の点数をとらなくてはならないため、途中で留年決定などもあったりする。
さらに、何度も留年したりすれば学校から退学をさせられる者までいるのだ。
ただ、入学卒業に身分は問わない学校で、入学は基本7歳から。
試験は7月に行われる。
卒業するのは基本15歳までが通う男女共学の学校である。
(時には入学時年齢や卒業年齢が高いことはあったが基本的に8年間勉強する。)
その入学試験、卒業試験はどこの王族だろうが誰であろうが身分に問わず入学する者には一様に試される試験である。
ところで、何故コンスタンティーノは彼を紹介したのだろうか?そういう疑問がわいてきた。
「で、どうだ?姉貴の旦那に。相手いないんだろ?」
「・・・コンスタンティーノ、いい加減になさい!!!」
求婚者殺到で気が滅入っていたカテリーナの逆鱗に触れてしまった。
拳を振り上げて、コンスタンティーノに振り落とさんとばかりである。
「それは私が決めることだわ。コンスタンティーノ。貴方は余計なこと言わないで頂戴!!!」
その言葉を聞いてフリードリヒはコンスタンティーノをにらんだ。
コンスタンティーノとフリードリヒの一触即発の事態を避けるように「では、失礼しますわ」とお辞儀を言って男性陣を置いてカテリーナは準備室へと向かった。
準備室で髪を結い終わり、再度広間へ行くと、ぶつぶつと文句を言っていた。
すると、見覚えある少女から声をかけられた。昔、友達のクラリア・マルフェッタ伯爵令嬢である。
「あきれた・・・何やっているんだか。王太子とあろう者が。」
「あら、ごきげんよう。」
「まぁ、あのときの。ごきげんいかが?あの方とはどう?」
「あら、嫌だ。カテリーナ様。うふふ。この前の方はただのお友達ですわ。」
「お父様からの差し金でしたのね。」
カテリーナの発言に耳を貸さず、少女はあこがれの目をしてこういった。
「コンスタンティーノ様。貴方はとても自由でいらっしゃいますわ。私はそこがすてきなのです。」
「・・・自由すぎるのよ。王太子とあろう者があのような型破りとはフィリア王国も先行き不安だわ。
コンスタンティーノにはさっさと婚約者を決めて欲しいものだわ。身を固めれば少しは落ち着くでしょうに。」
「カテリーナ様は年も近いですし、仲も宜しそうですから第一候補なのではありませんか?」
「残念ながらそれはないと思うわ。現に、ウィリア王国の王太子からの熱烈アプローチ中だし。
それに血縁が濃すぎるじゃない?私。あまり血縁同士で結婚するのは止めた方が良いと聞いたことがあるわ。」
「あら、それは残念ですこと。」
ほほほと扇子で口元を隠しつつ高らかに笑うのだった。
おそらくコンスタンティーノの好みから彼女は王太子妃には選ばれないだろうな。
カテリーナはコンスタンティーノがもっとおしとやかで愛らしい女性を好んでいたのを思い出した。
髪を直し、広間を歩いているとレオポルドに出会った。
「カテリーナ???どうかしたかい?」
「・・・いろいろありまして。お父様、あの皇子の求婚は固くお断りして。
私を監禁した男の元へ等、嫁ぐことなどあり得ぬと。そう理由を申し上げてください。お父様。
今こちらにいらっしゃる方は私からあきらめてもらうように交渉してみるから。
どうにかして取り下げてもらう方法はないものかしら・・・」
カテリーナとわかれたあとコンスタンティーノと一触即発の危機を迎え、近衛たちにより引きはがされフリードリヒとフランツは仕事場へと戻っていった。
「何者だ。あやつは。私の愛しき君の夫になどふさわしくない!!!」
「押さえてください。殿下。」
「もう少し、私が本気であると見せねばならんな。」
「殿下もがんばりますねぇ・・・」
「フラン、おまえの方は・・・」
「ハロルド殿が一番の壁だろうと思います。次の壁はカテリーナ嬢でしょう・・・」
はぁ、とフリードリヒとフランツは溜息を漏らした。
カテリーナが再度テラスに行くとシャーロットが息を切らしながら走ってきた。
「カテリーナ。探したじゃない。」
「ようやく頭の中の整理が終わったみたいね。シャーロット。」
「えぇ、話せば長くなるから王宮に泊まって欲しいの。」
「お父様と伯父様にお願いしてくるわ。待っていてね。」
とレオポルドと国王リベラートを探しに広間へと戻っていった。




