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嫌われ王子と引きこもり令嬢  作者: 光森 璋江
第1部 第3章 令嬢の真実
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夜空を眺めて

「「「お嬢様!!今すぐに湯浴みなさいませ!」」」


エレーナの意識が戻ってすぐ、カテリーナ付きの侍女達から言われた。


確かにこの3日間ろくに湯浴みも出来ないほど忙しかった。


ともかく庭の確認まですませてからといって出かけた。


その後、体だけでなく髪までも洗われてしまうこととなるのだった。


湯浴みも終わり、湯浴み途中から女神ユリーナがカテリーナにだけ聞こえる声でわんわん泣き叫んでいたのでなだめ終え、さあ着替えようとしたときにドアを開けた輩が1人。


気落ちしたフランツであった。


もちろんカテリーナは頭も体もきっちりとタオルが巻かれていたので大事な部分は見えていなかったが、未婚の淑女の湯編み上がりの姿を見るとは事故かもしれないが一応悲鳴と平手打ちをして差し上げた。


時々着る普段着からブルーのロングドレスに身を包んだカテリーナは、湯浴みが終わった後、男性陣に謝罪をした。


フランツは自分の失態で思い人を危険な目にさらしてしまった責任と、ほほにはカテリーナから平手打ちした手形がまだくっきりと残っていて見るからに痛々しかった。


(エレーナのことで落ち込んでおられるのね。はぁ、汚れた姿を見せてしまうとは・・・淑女として恥ずかしいところをお見せしてしまったわ・・・)


湯船の中でカテリーナは深く反省した。


「まぁ、愛しき君の新しい姿を見られたということで私は気にしておりませんよ。」


フリードリヒの優しい一言をもらえてちょっとほっとするカテリーナであった。




しかし、食事の時間になってもカテリーナは食堂へは行かず、夜空を一人で眺めていた。


夏が近づいているとはいえ肌寒いこともあるかと思い、長めの上着を肩にかけて。


「ふぅ、思った通りというか何というか。」


ここは、別邸の屋上と言うより屋根の上にある出窓から少しベランダのようにせり出しているところ。


そこは十分2~3人は横に並んで座れるだけのスペースはある。


夜空を見上げつつ、衝撃的な真実について思い返していた。


カテリーナは見上げた空から自身の足下へ目線を移し膝を抱え、顔を伏せていた。


涙がこぼれてしまいそうになるのをこらえ、ふと顔を上げると後ろに誰かいる感じがした。


「・・・誰?ハロルド???私のことは良いから、貴方ばエレーナの側にいてあげてね。」


返事がない。だが足音から察するに男性ではあるようだ。


カテリーナからは距離を置いている。


どうやら満天の星空を眺めているらしい。


『ハロルドがそう思うのも仕方がないわ。端から見れば3柱が守護神と見られても仕方が無い話ね。』


知の女神は申し子に気丈に話す。


それから今回の受験者などの傾向に対していろいろと知の女神は持論を展開し始めた。


一通り聞いてすっきりしたらしく最後は明るい声で笑いながら女神はすっと消えた。


「はぁ。どうしてこんな事に??」


泣きそうな声でため息をついた。


「寂しそうですね?」


「あら。貴方こそ。私の守護神様が少し寂しそうになさっておいででしたからお話をしていたのですわ。」


「守護神ですか。良いですねぇ。ずっと一緒にいて頂けるのでしょう?」


フリードリヒはカテリーナの右側に座った。


「なんですか?断りも無しに隣に座るだなんて。」


「ははは。すみません。何故ハロルド殿だとお思いになられたのですか?」


「いつもは、ハロルドが呼びに来てくれるから。まさか、殿下が自ら呼びに来られるとは思っていませんでしたわ。」


「ハロルド殿は今フランとけんかしていて部外者だから出てきたのです。貴女づきの侍女からここにいることを聞いて来てみたのですよ。」


「そうですか。」


「夜空を眺めていると悲しくなりませんか?」


「さほど寂しくは感じませんわ。」


「そうですか。」


「そろそろ私、成人の儀を行うことになりそうです。」


成人の儀、特に女性の場合は別名、髪上げの儀とも呼ばれるフィリア王国の貴族にとって、とても重要な儀式だ。


「どうしましょう。髪上げの儀・・・誰に頼めばよいのかしら?」


普通、髪上げの儀は父親にしてもらうのが一般的である。


だが、ここではたと困った事態になっていることに気がついた。


自分の出生の事実を知ってしまったカテリーナにとって誰が髪上げの儀をするのか。


実の父親は既になくなっているので、代わりにしてくれる人物に依頼しなくてはならない。


候補としては国王リベラート、リナルド・ティフィンクーレなど成人王族の男性がいくつか浮かぶ。


カテリーナは誰に頼もうか考えあぐね居ていると隣の男がとんでもないことを言い出した。


「私ではいけないのですか?」


「あまりおすすめいたしません。親族でなくてはいけないのです。ウィリア王国にはそのような儀式はないのですか?」


「ウィリア王国で成人の儀と言えばただ、『成人おめでとう』と祝うだけですからねぇ~」


「今日は疲れました・・・見つかって良かったですよ。この3日間ずっと探し続けていましたから。」


自然とカテリーナの肩にもたれかかっているフリードリヒ。


不意にカテリーナの膝に頭が落ちてきたので、カテリーナは仕方なく膝枕をしている。


本当に疲れているようでうつらうつらしているもうすぐ眠ってしまいそうだ。


なんとなく髪をさわってみたくなった。


コンスタンティーノもその昔よく星空を眺めては寂しそうに肩を寄せ合い優しく頭を撫でていたのでなんだか懐かしい思いになった。


「ちょっとさわりますよぉ。よろしいですか?」


小さく声をかけて、前髪のあたりをさわっていて手の中に違和感を感じたカテリーナ。


(えっ・・・ちょっ・・・か・・・鬘???)


さわっているうちに鬘がずれてしまったらしい。


少しずれた鬘から黒い色ではない別の色の髪が少し見えていた。


そう、フリードリヒは自身の髪色を隠し、普段は黒色の鬘をつけて生活していたのだ。


「殿下。何故鬘をつけておいでなのですか?とても美しい髪ですのに。」


不意に目を開け、頭の上にあるはずの鬘を触りがばっと上体を起こそうとした。


「???!!!」


前屈みになっていたカテリーナと上体を起こそうとしたフリードリヒ。見事に額と額を思いっきりぶつけてしまった。


「あっ・・・いたた・・・。今回で二回目ですね。ぶつかったのは。」


「・・・そうですね。」


「ふふふ。」


「あはは」


楽しそうに、笑い合う二人であった。

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