結婚の憧れ
「やってもやってもきりがないわ」
毎日毎日が矢のように過ぎていく。
「ローズちゃん、次は子供達の着替えをお願いね。」
「は~い。わかりましたぁ~」
カテリーナは自身の名前を聞かれたとき、セカンドネームの『ローズマリー』から一部を取り『ローズ』と名乗った。
タイミング良くカテリーナが来てすぐ似たような境遇のカーラという少女もこの修道院で厄介になることになった。
この神殿には神官2人と巫女5人、そして孤児の子供達が数十人暮らしている。
あと3日で結婚式だ。
ジャンニから言われたとおり、カテリーナは人手不足なので巫女達と混じって日常のこと(孤児達の世話から食事から何から何まで)と結婚式の準備をしている。
途中聖歌隊の伴奏者が急病で出来なくなってしまったので仕方なく代わりにカテリーナが本番も引くことになってしまった事以外は順調に準備が進んでいく。
滞在2日目に、ランバートル卿と数人の男性がカテリーナのことを聞きに来たが、ジャンニは「知らない」と答えてくれたらしい。
それを人伝いに聞いてカテリーナは少し安堵した。
翌日からカテリーナは結婚式でオルガンで伴奏する。
そのために練習中の聖歌隊と何時間も一緒にいた。
(彼らの声はとても美しいわ。)と感嘆しきりなカテリーナ。
伴奏曲は、何度か弾いたことのある曲だったのでほぼ問題はないが聖歌隊と上手く合わせなくてはならない分調整に時間がかかってしまった。
(神に仕えるって・・・私が思い描いていたようなものではなかったわ。とても大変な仕事だわ。安易に神殿に行くだなんて言ってはいけないわね。聖歌隊・・・かぁ。そっちの方が私には合っているかもしれないわね。)
とここに来てからそう思った。
そして、結婚式当日を迎えた。
予想以上のきらびやかさと荘厳さにカテリーナは言葉がなかった。
結婚式は愛の女神を奉る神殿にて執り行われる。
カテリーナがお世話になっているところの一角にも情愛の女神が奉られていた。
(こんな結婚式なら・・・したいな。)
とカテリーナは来た当初よりも結婚に対して憧れが出来ていた。
「式は滞りなく進んだわね。」
「成功したのね。良かったわ。」
「お二人さん、おめでとぉ~~~!!」
彼らの親族友人たちによる質素ではある物の華やかな式は何一つ滞りなく進んだ。
式終了後式の余韻に包まれた神殿では珍しく華やかな雰囲気が漂っていた。
しばし休息をとっていたカテリーナに、初老の神官が声をかけた。
「ローズさん、ちょっとお話があるのですが、こちらへ来ていただけないでしょうか?」
「はい、分かりました。」
カテリーナが神官について行くと、そこには他の周りの雰囲気とは違った静寂に包まれた軍神アルデの奉られた神殿へ導かれた。




