令嬢の危険予知
「とにかく逃げなくては・・・」
(伯父様・・・そんなことをなさるなら私にだって考えがあるわ!!!)
考えを巡らせた結果、ここにいてはいろいろと危険と判断し、脱走することにしたカテリーナ。
「と、言うわけで、今から脱走するわ。止めても無駄だからね。」
「はい、承知しております。私と妹は折を見てカテリーナ様と合流いたします。それまでお元気で。」
「また会いましょう。ハロルド、エレーナ。」
「カテリーナ様・・・」
カテリーナは別邸から脱走したのは春も深くなった月明かりのきれいな夜だった。
カテリーナは久しぶりに別邸の外から出てみたが、あまり景色に変化はないようだ。
夜遅くに別邸を出たためか、中にいたものにはばれてはいないようだった。
カテリーナは少し古い靴を履き、普段着の上に薄いフード付きのローブを羽織り、フィリアの王都クウェーラーと別邸の間にある10以上の分かれ道までやってきた。
(ここからが問題ね。西へ行くとダーニャ伯爵領そこを過ぎれば断崖絶壁の海、まっすぐ南へ行くと迷いの森を突き抜けた先がウィリア王国。北へ行くと王都その先はヴィレード帝国。東へ行くとディーレ王国に行き着くわ。他にもエワーズ王国に行く道もあるけれど・・・。
まずは、ここから近くの神殿に行って巫女がどのような修行をするのかこの目と体で確かめないと。
確か・・・ここから一番近いのはダーニャ領の神殿だったわね。
ハロルドとエレーナの一族が治める土地。
本当に私の想像通りの所ならずっとそこにいて巫女見習いになろうかしら。
百聞は一見にしかずだわ。想像通りの所ではなくてもあの方々から逃れる時間稼ぎにはなりそう・・・ね)
分かれ道から30分後、ダーニャ領にある神殿群へとたどり着いたカテリーナ。
「夜分遅くに申し訳ありません。しばらくの間泊めていただけないでしょうか?」
「おやおや、どうかいたしましたかな?」
と一人の初老とおぼしき神官が対応してくれた。
彼はジャンニと名乗った。
「実は、私、人に追われているのです。ですのでほんの数日泊めていただけないでしょうか?」
「はぁ、まぁちょうどここで三日後に結婚式を執り行うことになっていまして今、人手がとても足りないのです。
もし滞在されるのでしたら、是非貴女様の手をお借りできないでしょうか?」
滞在するのなら三日後の結婚式の準備やら何やらを手伝って欲しいとの事で、カテリーナは快く、承諾した。
「分かりました。どのようなことをすれば宜しいのでしょうか?」
朝になり、別邸を走り回る騎士が一人、主の元へやってきた。
「殿下、殿下!!大変です。ご令嬢が、カテリーナ嬢がいなくなりました!!!」
「ん・・・何を寝ぼけたことを・・・」
朝が弱いのか、フリードリヒはぼんやりとしながら答えた。
「エレーナ嬢が起こしに行ったのですが部屋は密室で、忽然といなくなったようです。殿下の思い人、カテリーナ様はどこへ行ってしまわれたのでしょうか・・???」
「・・・いなくなったのなら探すほかあるまい。」
「そんなのんきなこと言ってる場合ですか?もし、カテリーナ嬢が何者かに襲われたりしたらどうするんですか?」
「フラン、あわてるな。彼女はきっとどこかにいるはずだ。普通、急にどこかに消えたりはせぬ。」
「はぁ、ともかく私は執事殿と侍女達に話を聞いてきます。」
「・・・ふぅ、一体お兄様はどこにいらっしゃるのかしら???」
ハロルドを捜して別邸の最上階から1階へ下りていたエレーナ。
2階部分から1階へ下りていたとき後ろから押されたような感じがして思いっきり1階まで転げ落ちてしまった。
すごい物音が聞こえ、2階にいたフランツは急いで階段まで行くと、エレーナが倒れていた。身動きひとつせずに。
エレーナに駆け寄った時、フランツはふと上を見上げるとフリードリヒの侍女の一人と思われる女性の影を目にした。
エレーナを突き落とした人物に対し怒りよりも殺意が芽生えたものの理性が勝って思いとどまった。
同じく駆け寄ってきたハロルドは、とうとう、起きてしまったか・・・と複雑な表情をした。
彼らはともかくエレーナを動かさず、ハロルドが主治医を呼びに言った。
その頃カテリーナは神殿での結婚式の準備で忙しく働いていた。
別邸にてエレーナがそのようになったことなど全く知るよしもなかったのであった。




