フィリア王子と公爵令嬢
「エレーナ。良いの?」
「・・・」
カテリーナが何を話しかけても黙っている。
見た目はそっくりだが、何か違和感のあるエレーナをじっと細部に至るまで見回す。
「ねぇ?なにがしたいの?」
「・・・」
「答えてくれないのね。エレーナ。」
押し黙っている。
ふぅん。薄く笑いながら、正体を見抜いた。
「あなた、コンスタンティーノでしょ?」
驚く、エレーナ。一言だけ声に出した。
「なぜわかった?」
「コンスタンティーノ・・・何でじゃまするのよ?」
「あ・・・姉貴??」
「この服と鬘はあのときの衣装ね?」
「あぁ。姉貴をここから連れ出すために来た。」
「何それ・・・?」
「良いから。あんな変人と結婚することはない!!!」
コンスタンティーノの一言で怒りが頂点に達した。
「えぇい!!いい加減にしなさい!!!私が嫁ぐと決めたんだから文句を言うなぁ!!!」
「なんだと・・・!!!」
急に怒り出したカテリーナ。
きっとにらむコンスタンティーノ。
「だいたい。何で貴方が妨害するのよぉ!!!」
「俺と結婚しろ!!!」
「何を言っているのよ!!!」
すっと立ち上がる。
「コンスタンティーノ。今度という今度は!!!」
「よ・・・よせ!!!」
「こうしてくれるわ!!!」
手元にあった、本を投げつけた。
ごつんと頭に当たり逃げ出した。
「待てー!!」
「わぁ!!!」
ルーチェは、入り口の鍵を閉めて部屋の外で待機している。
姿が見えないようにしてそばで二人を見ている神々が2柱。
『あらあら。』
『・・・どうなってるんだ?』
『知らないの?フィリアのしきたり。花嫁修業の間、男性との接触は禁止なのよ。』
『あぁ。別のルドゥーレ家の令嬢もそうだったとか。』
『それをぶちこわされて怒っているのよ。あはは。これくらいで婚約が破談になることはないのだけれど?』
『・・・守護神として恥ずかしい限りだ。』
自らの申し子を哀れむ芸術の神。
おもしろそうに二人を眺める知の女神の姿もあった。
「コンスタンティーノ!!!」
追いかけてくるカテリーナはいつもすました顔をしているが、とてつもなく怖い顔をしている。
「わ・・・!!!」
二人に巻き込まれないように場所を移動した2柱。
『あーあ。私、知ーらない。』
『おまえの申し子だろう?止めなくて良いのか?』
『だって・・・カテリーナを完全に怒こらせたら、私でもレオポルドでも止められないんだから。』
『手詰まりと言うことか・・・』
『そういうこと。最小限の被害にするにはやりたいようにさせておけばいいの。』
『私だけでも止めに入ろうではないか。』
『ねぇ、そんなに巻き込まれたいの?』
『あ・・・?』
『カテリーナにどれだけの神々の加護がついているのか知ってる?』
『3???』
『もっと。』
『10???』
『外れ。』
『100???』
2柱が言い合っているうちにコンスタンティーノがどんどん隅へ追い詰められていく。
『あら、嫌だわ。コンスタンティーノが・・・』
『お・・・おい!!!』
だが、既に遅し。
芸術の神はなすすべ無く見守るほか無い。
とうとう部屋の隅に追い詰められてしまった。
『本当に懲りないのね~コンスタンティーノって。まぁ。そろそろ終わるわね。』
鼻歌交じりで彼らを傍観することにした知の女神。
知の女神の予測では息子を心配した国王夫妻が乗り込んでくると読んでいた。
「コンスタンティーノ!!!」
「よ・・・よせっ!!!」
「しきたりを重んじること、国民を慈しみ守ること。ほかにもあるのよ。フィリア王立学校を卒業したんでしょ?それくらいわかっているはずよ。帝王学は貴方必須だったはずだもの!!!」
「わ・・・わかってる・・・」
「わかってない!!」
容赦ない攻めに体を小さくして堪え忍ぼうとするコンスタンティーノ。
近くにあった花瓶やら何やらをつかんで投げつけようとするカテリーナ。
「そこまでじゃ!!」
バンとドアを開けて国王リベラートと兵士達がなだれ込んできた。
「愚息め・・・」
「ち・・・ち・・・父上!!」
「カテリーナは、婚約の儀のすぐ後、我が養女となった。つまり、おまえとの婚儀はできぬ!!!」
会話の一部を聞いていたらしい。
「父上!!!」
意外な言葉に崩れるように座り込んだコンスタンティーノ。
「花嫁修行中の義姉のところにまで女装してくるとは・・・嘆かわしい・・・これでもフィリアの王子か?
国民に知れたら・・・なんと言われるやら。」
はぁと失望の顔をするリベラート。一呼吸置いてからすっと胸を張る。
「来い!!」
いつも温厚なリベラートの悪魔のような形相に二人は固まる。
「お・・・叔父様??」
「カテリーナ。沙汰を待て。」
父親に強く引かれ、兵士達に囲まれながら部屋を後にするコンスタンティーノをただ、見送るしかないカテリーナ。
部屋の外では、ルーチェが一行が見えなくなるまで深々と頭を下げて見送っていた。
『ふぅん。そうなるんだぁ。』
楽しそうに高みの見物をしていた知の女神は、そのまま動揺する申し子をおいて自身の神殿に戻っていった。
そろそろ女神は自身の仕事が忙しくなる時期になったのだ。




