対の指輪
「これを渡せばいいのですね。」
『えぇ。』
「よく残っていましたよね?」
『そうね。』
「でも、どうして遺品の中に?」
『きっと、父親のリディオから嫁ぐ前に受け取ったのね。
エルマが亡くなった後、彼がこの指輪だけを引き取ったそうだから。
全く。マリーナったら。”木は森に隠せ”って言うけれど。
こんなところに隠していたなんて。』
小言を言う守護神にまぁまぁと相づちを打つカテリーナ。
「なんだか、お母様から試されているような気がしてなりませんが。」
気のせいよ。とにっこりと笑う知の女神。
あ・・・そうだ!と何かを思い出したように要望した。
『カテリーナ。貴女の指輪ちょっと見せて。』
「あら?何か文字が光っているようですが。」
手のひらを見せるように差し出した。
『”汝はフィリア王女である”よ。古代リア語で書かれているの。あなたたちが読めなくてもおかしくはないわ。』
「はぁ。」
古代リア語はその昔古代リア王国がまだあった頃使われていた文字で、現代では読み解ける者はいないと言っても差し支えない。
唯一読めるとするならば神々だけであろう。
『まぁ。グレーデ家もルドゥーレ家も広く言えばフィリアの王族だし、他国の王族と婚姻する前に結局養女になるのが慣例だから、オーリア家の娘。つまりフィリア王女になるのだけれど。』
「結婚前提での輝きなのですね。」
『そうなるわね。』
「どうしてなのでしょう?なぜ必要なのか私にはわかりません。」
『いずれ知ることになるわ。この指輪、おそらく代々の王妃がこれを一時期は身につけているはずよ。』
「代々??」
『そうしてなくさないように大切にされてきたのよ。でなければ、あの指輪のように大捜索しなくてはいけなかったはずだし。』
「この指輪にどんな秘密が??」
『そうねぇ。』
「やはり秘密ですか。」
カテリーナが、気になりますよ。教えてくださいとどんなに懇願しても答えてはくれなかった。
すかさず話題を換えた知の女神。
『さて・・・一番の問題はコンスタンティーノだわ。』
「???」
『あら??』
「どういうことでしょうか?」
『え・・・』
「見当もつきませんが。」
頭を抱えてしまっている。
そんな申し子にぼそりと漏らした。
『貴女に恋してるってわからないのね・・・はぁ。困ったものだわ。』
やれやれと自身の申し子をあきれたように見ている知の女神であった。
守護神にそのように言われても大してぴんと来ない彼女の申し子であった。
ほぼ時を同じくしてフィリアの王宮の一室。
この男にも指輪発見の知らせが届いていた。
「見つかった??」
「はい。」
「まさか見つかるとは。」
「殿下?よもや見つからないとお思いだったのではありませんか?」
「あぁ。いや。見つかったのは良かった。」
「本心ですか?」
「あ・・・あぁ。見つからなくとも婚儀は行う。」
「で・・・では、はったり???」
「違う。できれば見つかって婚儀をとは言った。」
「ですが、あのときの言い方では”見つからなくては婚儀はしない”当家取られても仕方がございませんでしたが。」
「フラン?」
「はい?」
「このことはフィリア側には言うなよ。」
「・・・殿下。」
この場で否定すると・・・祖国を売ったと言われかねない。
渋々うなずくフランツ。
(このことが知れたら間違いなく陛下の怒りを買う・・・い・・・いや陛下はお許しになられるやも。
もっと恐ろしいのは殿下がカテリーナ様から完全に嫌われるのもしくは婚儀自体が白紙になるのが確実・・・!!
はぁ・・・このことを墓場まで持って行かねばならぬとは・・・)
深いため息が漏れた。
そんな友であり従者のフランツを見てにやりと笑った。
「フランは口が堅いから安心だ。」
「殿下・・・」
疲れているせいか顔色が芳しくない。
「もし、うっかりエレーナに漏らしたら・・・」
「フラン?俺とエレーナどちらを取るのか?」
究極の選択を突きつけられさらに顔色が悪くなっていったフランツであった。




