母の遺品
「はぁ・・・どこを探しても見つからないわ。」
あきらめてルドゥーレ家本邸に戻ってきた。
「いかがいたしましょうか。もう、期限まで数日となってしまいました。」
「あ・・・そうだわ。もう一つ探すところがあったわ!」
少し休息を取ってからあぁ、最後の頼みの綱を思い出した。
ルーチェに棚の一番下にあった袋を持ってこさせた。
中を見ると数え切れないほどの宝飾品があった。
「たくさんの宝飾品があるわね。」
「綺麗ですねぇ。」
『そうね。』
一つ一つ取り出していく。
「指輪もたくさん・・・」
「本当ですねぇ。」
『どれかが対の指輪であってほしいわね』
「対の指輪ってどのようなものなのですか?」
『知りたい?』
「「是非とも。」」
『秘密~』
「ユリーナ様!!!」
「意地が悪いですわ。」
『私もか神伝に聞いただけだし。』
「え・・・?」
『もう、神々より伝説化しちゃっているような代物なのよ?』
「そんなに?」
『どこかに現存するのは間違いないの。ありそうなところを重点的に探しただけだから。』
「確証はなかったということですか?」
『そうよ。見つかったらそりゃ、奇跡だわ。』
「そこまでの代物だったのですか?」
『何か問題でも?』
いいえ。と二人は手を振り、首を振った。
いろいろ机の上に並べていくと一つだけ、一段と古い箱を見つけた。
「あ・・・これ。」
「何でございましょうか?」
「なんて書いてあるのかしら?」
「古くて読めませんね。」
「ユリーナ様・・・読めますか?」
『”対の指輪”の箱だわ。あけてみて。中身が入っているか確認しなくては!!』
カテリーナがあけると自身の指にしている物と同じデザインの指輪が輝いていた。
「こ・・・これが・・・」
『やったわね。マリーナの遺品の中にあったなんて。』
「ほっとしました。」
「見つかったと皆に言わなくては。」
「これで期日までに間に合いましたね。」
「えぇ。お父様知らずに私に渡したのかしら?」
『さぁ?袋の入れ方を見る限りおそらく知らなかったんじゃないの?』
ほかの宝飾品を片付けた後、ルーチェを使いにやって一人と一柱が部屋に残っている。
机の上には確認し終えた指輪と箱が乗っているだけだ。
『ねぇ。カテリーナ。貴女、本当に嫁ぐ気があるの?』
(なんですか?)
『そんな感じには見えないの。もっと会いたい。そばにいたいって言う感じがしないのよね。』
(そう見えますか?)
『そうとしか言いようがないわ。』
怪しいわね。といいつつ顔を近づける知の女神。
(え・・・なぜ近づくのでしょうか?)
『ねぇ。カテリーナ。義務で結婚するんじゃないでしょ?』
(義務ですよ。ほぼ完全に。他に理由はありませんよ。)
『顔を赤くした理由は?』
(え・・・それは。)
『いえないの?』
(そういうわけでは。)
そう聞かれてたじたじになるカテリーナを見て、ふふーん。と小突いた。
『話題を変えましょうか?ルクレツィアってしってる?』
(どなたですか?そのお方は。)
『貴女の叔母に当たる王女よ。ある理由で彼女は幼い頃から修行して巫女になったの。』
(ある理由?)
『そうよ。貴女たちとは違って彼女には守護神が付かなかったの。』
(そんなことがあるのですか?)
『ないわけではないけれど稀だわ。およそ50年ぶりだったわね。
お祖父様が見初めたと人間たちは言うみたいね。ルクレッツィアみたいに巫女になる人生、結婚する人生。どちらが幸せかしら?』
(難しいですね。人によって違いますから。)
『そうよ。貴女は結婚して・・・幸せにならないと。』
(えぇ。)
申し子が余り本心を語らないのでしびれを切らした女神が唐突に言い出した。
『カテリーナ。孤独になったとき頼れるのは誰?』
(一人になったとき・・・ですか??)
そのときを思い浮かべてみた。
十分時間をかけて考えて答えた。
(その方は私よりも先に向こうへ行ってしまうかも。)
『そこまで未来じゃないわ。それにそういう意味じゃないから。』
(え・・・?)
『そういうときに愛する人が支えてくれるんじゃないの?』
(そう・・・ですか。)
『貴女が思い描いた人物はこの指輪を渡す彼でしょ。言わなくったってわかるわ。』
(ご存じだったのでしょう?他の方には言わないでください。とくにあの方には。)
顔を赤くして伏し目がちに言った。
窓からは春の風がそよそよと部屋中を吹き渡っている。




