庭園と畑
「早く計画を実行に・・・移したいわ」
「カテリーナ様、今はまだ時期が早すぎます。もう少しお待ちを。」
「またなんでシャーロットは殿下にあれほど執着するのかしら?
他にも、ウィリア王国には王子がおられたはずよね?」
「カテリーナ様。その方を見つけ出すのは難しいようです。その方はフェルディナンド殿下とおっしゃられまして、女性には全く興味がないとか。
それにいつも王宮にはおられずどこにいるやら見当も付かないとの従者殿からの情報でした。」
「意外とおしゃべりね。彼は。
でも興味がないってだけで除外されるなんて・・・うらやましい限りだわぁ~~。
でも、それって行方不明って事??
私は政略結婚のお相手が何人もいて今までがんばって拒否し続けてるのに。」
「その件に関しましてはカテリーナ様、うんざりされてましたね。
レオポルド様が必死になってどこかへ縁づけようと画策なさって毎日のように届く手紙の山。多くはフリードリヒ殿下からのものでしたが。」
「そうなのよ・・・、あまりにもしつこいから返事を書く気にもならないわ。
下手に出すと国際問題になりかねないし。一度も見たこともない人からの手紙だもの。なんて書けばいいかわからなくって。一応読みはしたけれど。」
「でも、ハロルド。ちょっと気になるのよ。何故フリードリヒ殿下は王太子なのかしら?第二王子でしょ?」
「聞くところに寄れば現国王夫妻に子を望めぬとか。ですので弟君に王位を譲ろうとなさっておられるとか。ウィリア王国では婚姻をしていなければ王太子とは認められないなどという話もございます。」
「そうなの。」
「先ほどからシャーロット様はフリードリヒ殿下にべったりですね。」
「ほんと。ほほえましい限りだわ。」
「どうなさいますか、あの件について。」
「手紙を送ったわ。また約束破って。」
「いつものことです。」
「事前に確認に来るとは。その話本当?」
「ははは・・・皆様には内密に。」
ハロルドは無理矢理笑顔を作った。
(何で散歩の時にまでべったりなんだ???)
寝るとき以外ずっとフリードリヒにべったりなシャーロット。
「彼をこの別邸から逃がさないように」とカテリーナから言われ、喜び勇んでシャーロットはフリードリヒと腕を組み幸せそうに散歩をしている。
ふと、後ろを振り向く。
とそこには、少し離れたところに執事のハロルドとなにやら話をしながら庭園へと歩いてくるカテリーナの姿があった。
その美しさに目を奪われたのは今から5年前のことである。
あのとき、心傷を負っていてフィリア王国に療養をかねて滞在していたフリードリヒはあのときの舞踏会に来賓として出席していた。
騒動のあったときは恍惚として全く覚えていなかった。
カテリーナの名前を知ったのは主催者の王太子からの情報であった。
彼が滞在していたとき3回ほどフィリア王国では舞踏会やパーティーが催されたが初めてあって以来、カテリーナは表舞台から消えた。
そんな彼女にもう一度会いたいと思い、必死になって捜した結果、出会って2年後、彼女がルドゥーレ公爵領の別邸に引きこもっていることを知った。
それからフリードリヒは一度ウィリア王国に戻り、彼女に結婚を申し込む意向を国王に宣言した。
(兄上は、早く見つけて帰ってこいと背中を押してくれた。あのときほどうれしかったことはなかったな。)
この前のフィリア王国と同盟国との戦で、フリードリヒとカテリーナの政略結婚が大幅に進んだことから大きく前進したことは間違いない。
ちなみに、この日はランバートル卿は体調が優れないことを理由に自室と化している部屋にいた。
ウィリア王国の侍女達がせっせと世話を焼いているようだ。
(ん・・・あっ。あそこにいるのは・・・エレーナ嬢だ。)
窓の外にはハーブ園でカモミールを摘み取っているエレーナがいた。
「あっ、そこには立ち入ってはなりませんわ!!お気をつけてくださいませ。」
急に二人と侍女と警護の方々を呼び止めたカテリーナ。
「そこからは毒草を育てているところなので、むやみやたらに入ってはいけませんわ!!!」
見ると、行く手には頑丈な壁があり、ドアにはいくつもの施錠がなされていた。
「これは、伯父様からのお言いつけでして・・・つみ取ったりしただけで即、首が飛ぶものもございますので、ご注意くださいませ。」
とカテリーナは皆に言い聞かせるように言った。
「ですが、こちらより庭園側ではハーブや食用の木の実や果実、野イチゴはありますがまだ時期ではありませんね・・・。そうですね、自家製の野菜などがございますので、そちらに向かっていただきませんか?」
とも提案された。
「では、そちらへ参ろう。」
フリードリヒは腕にしがみついているシャーロットと共に毒草の栽培所を後にした。
その後カテリーナやハロルドらによってハーブや薬草の話、自家製野菜について語り合った。
ひっそりフリードリヒは毒草のことが頭から離れなかった。
何か起らなければよいがと。




