男爵令嬢の実父と男爵夫人
「カーラ。貴女の気持ちはみんなに伝わったわ。
貴女はできる限りのことをしたわ。
今回の件は残念だったけど。
それよりも貴女は来年、フィリア王立学校を受験するのでしょう?
それなら、お勉強をもっとしなくてはいけないわ。」
カーラは大きな瞳にいっぱいの涙をためている。
「父ちゃん・・・ごめん。」
「大丈夫よ。ね?」
「早く父ちゃんを牢から出さないと・・・」
「カーラ。」
ルドゥーレ家に帰宅後、カーラはずっと部屋で泣き続けている。
翌朝、夫人はカテリーナの部屋を訪れて言い策はないかと相談しに来た。
「それで、お嬢様。そのお方は今。」
「それが・・・ダーニャ家のとある牢なんだそうよ。」
「ダーニャ領。それならば伯爵様に願い出て牢から出していただくことは・・・」
「ハロルドは確かに、当主だけど。不正をはたらいて釈放したら、先代の二の舞になってしまうわ。」
「だめですか。」
「無理でしょうね。あ・・・でも、伯父様には不正があったことを伝えておいたから。
きっと、伯父様が何か示してくるはずよ。今回の件はどう見ても陰湿ないじめだわ。
カーラが養女で庶民のでだからといってそんなことをして良いわけ無いもの。
足で引っかけて転ばせておいて裾を踏むだなんて、わざとに決まってる。
たまたま私が見てたから、良かったけれど。
誰も注意していなければずっとあのいじめは続いていたでしょうね。
そのたびにカーラは耐えなくてはいけなかったでしょう。
カーラが望んで養女になったわけではないのに。
あの後呼び出したから、次からはしてこないでしょう。表だっては。
カーラがあの子に打ち勝てるだけの自信と強い心を持たなくてはいけないわね。
それにしても、あの子ふてぶてしい子だったわ。」
その子は、子爵ご令嬢の娘でかなり甘やかして育てられたせいか自分が一番でないといけないと言ったわがままで、平気で意地悪をするような娘であった。
「でも、それを見て見ぬふりして注意したり止めたりできなかった大人にも原因があるわ。」
「噂では、お嬢様に目をつけられると大変な目にあうという噂もございますし。
あの子の親御さんが肝を冷やしているとか。」
「根も葉もない噂だわ。まぁ、これからはきっちりしつけをしてくれるでしょうね。」
「はぁ。ですが、以前ございましたでしょう?」
「あったけど、多少のことは目をつぶっているのよ。これでも。」
ふぅ。とため息をついてバルコニーに出た。
晴れ渡った空を眺め、鳥たちのさえずりを聞いている。
「私、もうすぐ嫁ぐのよね?」
「はい。」
「このままで良いのかしら?」
夫人は答えなかった。
少し夫人に明るくなってほしいと思ってあることを提案した。
「ねぇ。彼に面会に行きましょう?」
「は?」
「ハロルドに聞けばどこの牢に入れられているかわかるわ。釈放はできなくても話くらいはできると思うわ。」
二人は侍女数人と連れだってハロルドの元を訪れた。
事前に来ることを伝えて。
ハロルドは客間で二人の到着を待っていた。
「カテリーナ様。いかがいたしましたか?」
「カーラの父親に合わせてほしいの。」
「は・・・はぁ。」
歯切れの悪いハロルドに、カテリーナは訳を尋ねてた。
「どうしたの?」
「それがですね、つい今し方王宮の別牢に移動になったのです。」
「「移動???」」
「あそこに移動となるとまぁ、罪が軽くなった可能性がありますね。」
「そ・・・そうなの?」
「はい。模範的な方でしたし、昨日の一件もあったのでしょうね。」
「素早い対応だわ。伯父様。」
「ですから、一度お戻りになってください。国王陛下からの沙汰があると思います。」
「ありがとう。ハロルド。」
カテリーナ一行はルドゥーレ家別邸に一度より、かねてよりジュリアーノに渡すつもりだったフルートを返しに行った。
後日、カーラの父親はピンパル男爵家の牢で3年過ごし、釈放することとなった。
ただし、粗暴が悪ければまた刑期が延びるとの沙汰もあった。
それを聞いた、カーラは、難しい顔をしている。
「父ちゃん・・・私、休みの時にしか会えないけど・・・」
「カーラ。」
「ん。国王陛下の寛大なお心のおかげだもんね。」
「そうね。カーラ。フィリアの王立学校受験に向けてお勉強をしましょうね。」
余りよい返事をしなかったものの、受験に向けて本格的に勉強に取り組む決意を少しは固めたようだ。




