ピンパル男爵令嬢
「あの子は何をしているの?」
「確か、新年祭のときのダンスの練習を。」
「父ちゃんのためなの!」
夫人にそういいながら一生懸命踊るカーラ。
ここは、ルドゥーレ家の中庭。
くるくるくると回るカーラ。
少しずつ明るさが戻ってきたイレーニアとともに庭を散策していたカテリーナが目をとめた。
近くにいたピンパル夫人が答えた。
近日、本来の時期から外れて新年祭が盛大に華やかに催されるとふれが出ていた。
「一等になれば願いを一つだけ叶えられるというあれね。」
「えぇ。実父は今拘留されています。どうしても釈放させたい一心でああして。」
よよよとハンカチで目頭を押さえている。
「そうね。強盗を働いた上、相手に瀕死の重傷を負わせたそうです。今はすっかり回復しているそうですが。確か、裁判で10年近く牢に入れられるとか。」
「健気な子ね。お姉様。」
「えぇ。どんなことをしても父親を牢から出したいって言う気持ちが強いのね。自身を娼館に入れようとした親だというのに。」
「はい。」
「もし、彼が、釈放されたらどうするつもりなのかしら?」
「そうですね・・・心を入れ替えてまっとうな道にとは思いますけれど。どうでしょうか?」
「えぇ。引受先が見つかれば良いんだけど。それに、カーラはどうするのかしら?曲がりなりとも夫人の養女な訳だから。」
啖呵を切ったのは夫人であった。
「わかりました。私の養女ですので、私が面倒を見ましょう。ですが、私の所領のある北の地へと行っていただかなくてはなりませんが。」
「一度面会して、意志を確認しましょう。」
ダーニャ領で拘束されたカーラの父親は、深く反省しており模範囚人として生活し娘との生活を糧に日々釈放までがんばるとのことであった。
ハロルドから聞いたカテリーナは思慮深く一言。
「そう。」
とだけ言った。
「ハロルド。最近フランツにあった?」
「いえ。全く。」
「そうなの。」
不思議そうにハロルドを見つめていた。
その日の午後。
「カーラ。一等取るわよ。私がダンスを教えてあげる。」
「はい!」
それから、新年祭が始まるまで、暇を見つけてはダンスの練習に明け暮れる、カテリーナとカーラであった。




