妹
「おめでとうございます。」
「大丈夫?学校に行ける?」
「えぇ。」
「イレーニア???」
それだけ言って部屋から出て行った。
ふっくりとした柔らかな白い肌に薄紅色のほほをしたかわいらしいイレーニアはほほはこけ、かわいらしかったときの面影をみじんにも感じさせない容貌に変わり果てていた。
出て行くときもよろよろとよろめきながら。
「イレーニア・・・」
今し方出て行った妹。
少し立ち話をしただけだったのだが、見れば見るほどに痛々しかった。
(ユリーナ様。)
『なぁに?幸せいっぱいな顔をしてないわねぇ~』
(イレーニアについてなんです。)
『あぁ!!それね。』
(どうなるんでしょうか?)
『まぁ、悪いようにはしないでしょうけれど。』
(あのままじゃ・・・)
『後は、レオポルドたち中枢にいる男たち次第だわ。待つしかない!!』
(私が結婚する理由は、貿易のため、フィリアの国民のためです。)
『今はね。』
(でも、最初はイレーニアがスムーズに結婚できるようにという理由でした。)
『そうよね。』
(このまま嫁げません!)
『なによ、それ!』
(このままだと、イレーニアが。)
『はぁ・・・自分のためより他人のためが座右の銘の貴女らしいわ。』
(誰かに掛け合った方が良いのでしょうか。)
『やめておいた方が良いわ。これは、対外政策の一環だし・・・』
(お父様が帰宅後、それとなくどうなったか聞いてみます。)
『決まっていればね。』
その日の夜、レオポルドが帰宅した。
どうなったのか聞いた後、イレーニアの部屋へとやってきた。
「イレーニア、貴女の嫁ぎ先のことなんだけど・・・」
「お姉様。私、覚悟はできております。」
「攻め込んですぐ陥落したそうよ。テオバルドたちの身分は剥奪される見込みだそうよ。
まぁ貴族としての体面はもてるみたいだけど。きっと子爵か男爵程度になるでしょうね。
フィリアを裏切った国としてとても肩身の狭い生活を強いられるでしょう、」
「それは・・・」
「イレーニアとの結婚はなかったことになるわ。おそらくだけれど。」
「そんな・・・」
「私が何か良い案はないか考えてみるわ。お父様たちがそれを聞いてどうなさるかはわからないけれど。」
カテリーナはイレーニアの部屋から出て自室で一晩中考えていた。
妙案が浮かんだのは朝日が顔を出し暗かった空が白み始めた頃だった。
「お父様。エワーズの処遇について皆が幸せになれる方法がございます。」
「それは・・・」
「イレーニアにかつてテレッテ公爵の領地をお与えください。そこで新たなる公爵家エーフィル家としていただければ。」
「・・・テレッテね。考えたね。」
テレッテ公爵とかつてあった王族の一家である。
現在は王領としてエワーズの少し南の方に廃城があり年貢の取れ高も良い。
このままだと戦いに負けたエワーズの領地は王領となる。しかし、イレーニアに王領を与え持参金のようにしてテオバルドと婚姻を結ぶ。それはいわば配置換えをしたようなものである。
「一応、国王陛下に進言してみるよ。」
レオポルドはあまり期待しないように。と言ったが、少しだけ笑みがこぼれていたように見えた。
一晩中考えていたせいか、その日はうたた寝が多い一日だった。
その後、カテリーナの出した案とエワーズ側との交渉によってイレーニアにかつてテレッテ公爵家領地を授け、エーフィル家もその配置換えに合意しイレーニアとテオバルドの婚儀は行われる方向になった。




