見返り
「カテリーナ。」
「はい。」
「約束を果たしてもらうよ。」
「はい。」
「グレーデ家の跡継ぎとしてしかるべき人物との婚儀をするんだ。」
「そんな・・・ウィリア側にはなんと?」
「カテリーナを他国に嫁がせようとした僕たちが間違っていたんだ。ようやくわかったよ。」
「それでは国益が損なわれます!」
「そうだねぇ。そこは国王陛下とじっくり話し合わないといけないね。」
周囲が戦の勝利で言祝いでいる一方で、深い悩みを抱えることになった女性が一人。
それは、凱旋したレオポルドが帰宅してきてすぐ、このように言われた。
レオポルドからの発言に手をこまねいている。
「どうしましょ・・・」
『レオポルド・・・勝手が過ぎるんじゃない?確かにグレーデ家は再興させた方が権力バランス的にも必要かも知れないけれど。』
「そうですよね。私がグレーデ家の生き残りだと証明するには私が先代国王の娘だと公表することが絶対条件ですし。それは、マリーナ王妃の遺言に背くことになりかねないのではないかと。」
『レオポルドの先を越される前にリベラートに交渉しに行かないと・・・』
「いえ。リナルド叔父様の方へ。」
『なぜ?』
「ウィリア国王フェリックス様の結婚の条件を覚えていらっしゃいますか?」
『あ・・・でも。そうか。レオポルドの対立の立場のリナルドならリベラートも聞く耳を持つかも。』
「ウィリア側にはまだ返事をしていないという情報があります。今ならまだ間に合うかも。」
『それにはカテリーナが嫁ぐ必要があるわね。それでいいの?貴女、あの男と結婚するって・・・』
「・・・かも知れませんけれど、私・・・」
『なるほどねぇ~。』
顔を赤く染めたカテリーナをからかうように肩を小突いた。
ウィリア国王フェリックスの条件”フィリアのエリデーンとウィリアのヒルアとの間に道を作ること。”
それは、ただの道を造るという意味ではなく安全で確実な貿易道をつなげるという意味であった。
今までは、一歩間違えば海の藻屑と消えてしまう海側を通り抜けることが常識となっていたので、この提案は画期的なものである。
そして、ウィリアだけでなく海外の珍しい品もウィリアとの交易でもたらされることであろう。
ただし、山を切り開く必要が出てくるので、大工事になることは言うまでもない。
「早速、叔父様へ午前中伺うことを伝えてね。」
「わかりました。」
「あら。戻ってきたのね。ルーチェ。」
「えぇ。私は、カテリーナ様の行くところには私はそばにいなくてはと思いまして。かなり説得するのに時間がかかってしまいました。ナタリアはもう、学校に行きましたわ。」
「それだけ?私のそばにいることだけなの?」
「そ・・・それは・・・」
「また後で聞くわ。」
「では。」
うふふ。とカテリーナが笑う中、そそくさと出て行った。
「どうしたんだい?公爵令嬢が自らお出ましとは。」
「叔父様・・・お父様が私に・・・グレーデ家を再興しろと・・・」
「な・・・」
「それでご相談に上がったのです。」
「なるほど・・・これは外務大臣殿に一つ言わなくてはならないだろうねぇ。」
「叔父様・・・お願いします!!」
カテリーナは深々と頭を下げた。
「顔を上げて。カテリーナ。」
「ありがとうございます。叔父様。」
「やっと、恋を見つけたみたいだね。応援してるよ。」
「叔父様まで・・・」
伏し目がちにはにかんでいる。
「ふふ。良いから僕に任せておくれ。」
午後、急遽相談があると人を使いにだし、予告通り王宮の執務室にやってきたリナルド。
そこには、既にレオポルドの姿があった。
どうやら、グレーデ家再興の話をしてしまったようである。
「外務大臣殿。外務の仕事はどのようなお仕事でしょうか?」
「国交などを司る仕事ですよ。それくらい知っているでしょう?」
「では、僕は財務大臣として一言。フィリアとしても、ウィリア国王の申し出を受けるべきだと思います。」
「は?」
「そうでしょう?あちら側からの条件はフィリアにとってかなり実りが大きい。それを知らないわけありませんよね?」
「そうだが・・・」
「ではなぜ、カテリーナにグレーデ家を再興させようとしているのですか?
既に公爵家は4家。近年中に5家の増える。そこまでして増やす必要があるのでしょうか。」
「カテリーナが出した条件は誰と結婚する釜では出ていなかった。とすると相手の決定権は僕にある。」
「もっとフィリア国民に寄り添った判断をするべきではないでしょうか?」
「カテリーナは近い未来即位するであろうコンスタンティーノの支えとなるべくフィリアに残すべきだ!!」
その後も平行線をたどり、とうとう日も落ち始めてしまった。
「リナルド。レオポルド双方の言い分はわかった。とりあえず、今日はここまでだ。」
「「はい。」」
二人は、まだ言い足らないようではあったが翌日以降に持ち越しとなった。




