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聖なる空の天女たち  作者: タカハシあん


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第四幕 その五

      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 直ぐそこで銀色に輝く刃が煌めいた。


 なんであるか理解するより早く本能が行動していた。


「ギャーッ!」


 銀色の刃───剣を握る悪党その1が甲殻線に寄って胸を貫かれていた。


 追いついた理性が襲いくる悪党その2の左肩を貫き、石畳に張りつけた。


「お見事」


 横目で見れば転移魔法陣から少し離れた場所に空神とそのお仲間たちがおもしろそうに見物していた───が、取り合えず無視。パルアに悪さしようとする悪党その3を突き殺してやる。


 辺りに目を走らせ残る悪党どもを甲殻線で突き殺した。


「なにコレ?」


 7つのゴミから息を切らすパルアに尋ねた。


「捕獲者だろう」


 代わりに空神が答えた。なんとも呆れた顔して。


「なるほど。よく見たら捕獲者面してるわ」


「殺す前に確かめろよ、そーゆーのは。間違ってたらどーすんだよ」


「そのときはそのとき。なかったことにしますよ」


 世は弱肉強食。文句があるならかかってこいである。


 ……って、あたし、段々と荒んできてるわ……


「セルレインは平気?」


 そう尋ねると、パルアの陰で青くなっているセルレインが「はい」と小さく頷いた。


 身体能力はパルアに匹敵するが、この歳で怖がるなという方が間違っている。まあ、泣かないだけ立派である。


「……ごめん、ねーちゃん……」


「相手は捕獲者。生き延びただけ立派よ───」


 7つの死体を結界で包み込み、消滅魔術で消し去る。後始末しないと入れてもらえないからね。


「恐ろしい女だぜ」


「ああ。ありゃあ、組織の妖術師だな」


 なんて好き勝手にいうお仲間さんたち。こんな可愛いロリーナちゃんに失礼しちゃうわっ。


〈自分がの目より世間の目が正しいってわからないのかしら?〉


〈わからないからロリーナなんだろう〉


 漫才するアホどもに操魔弾を放ってやる。しっかり見張っとけやっ!


「良いのか、殺しちまって? 組織の捕獲者だったら狙われるぞ」


「黙っててくれます?」


 冗談に冗談で答えた。


「まあ、おれには関係ないからな、聞かれるまでは黙ってるよ。それより、オレとどこかで会ったことがあったっけ?」


「あら、誘惑ですか?」


「悪いな。誘うには趣味じゃない」


 まっ、こんな姿では当然か。女としての魅力、全然ないものね……。


「あたしはロリーナ。ちなみに職業は作家です」


「……作家ってのは恐ろしい職業なんだな。オレはアレフ。何でも屋だ」


 お互い、頭の中にある記憶から該当する顔と名前を捜し出すために沈黙してしまった。


 空神の称号持ちの名と顔なら刻まれているんだが、どこをどう捜してもこの顔と名が見つからなかった。


 なんにしろだ。ないというなら刻むのみ。いずれ再会する日に備えてね。


「思い出せないところをみると、誰かに聞いたかだな。わかるか?」


 と、横にいる細身の男性に尋ねた。


「わたしに聞かないでください。船長の私生活まで面倒見切れません」


 見るからに副船長といった神経質(この中ではね)な男の人ね。細かい指示や船の運営はこの人に寄って回っているのが良くわかる図よね。


 それはそれとして、あたしの名を知らないとなると裏稼業歴は浅いようね。


「ロリーナって名は有名なのかい?」


 自分の情報を明かす程バカではないが、なぜかこーゆー我が道を行く人には答えたくなっちゃうのよね、あたしって。


「海賊島に半年もいれば出てくるんじゃないですか?」


「ふ~ん。じゃあ、有名なんだ」


 あたしと空神を取り巻く空気が急激に熱くなり、そして───


「───船長ッ!」


 と、副船長どのがあたしたちの間に入った。


「……良い副船長をお持ちで」


 さすがに副船長さんの表情はかわらないがお仲間さんたちの表情は驚きに満ちている。有力な情報をありがとね。


「……ああ。おれもそう思うよ。で、海賊島のどこで聞けるんだ?」


 空神アレフの目つきが鋭くなる。


 ウフフ。良い目をしてくれるじゃない。あなたで幻想記を創りたくなっちゃうわ。


〈良い実験材料の間違いだろう?〉


〈落ちぶれてもああはなりたくないわね〉


 魔弾を放ってアホどもを黙らせる。


 ったく! 静かに護衛してろ、腐れどもがッ!


「……上になんかあるのか?」


 青空を不思議そうに見上げた。


「気にしないでください。えーと、なんてしたっけ?」


「海賊島のどこでロリーナのことを聞けるんだい?」


「ああ、そうでしたね。まあ、『三大悪』関係のところなら真実以上のことが聞けますよ」


 まあ、『三大悪』に知り合いがいればですけど。


「そちらのことは帝国軍を調べればわかります?」


「いや、無駄だから止めておきな。これは違うところでもらったやつだからな」


 つまり、『三大悪』に匹敵する組織があるってコトか……。


「船長。そろそろ行きましょう」


「ん、ああ。そうだな。じゃーな、ロリーナ」


「はい。またどこかで」


「そんときは酒でもどうだい?」


「あら、趣味ではないんじゃなかったのでは?」


「酒に誘うには好みだよ。色々楽しい───」


「───船長」


 もー! 優秀な副船長さんなんだからっ。


「またな、ロリーナ」


「ええ。またどこかで」


 できれば酒を交わす仲として、ね……。




      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






ファンタジー的根拠はなにもありません。軽く流してください。

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