災厄を撒き散らすは、彼 07
夕方も過ぎたところで待ち合わせをした場所に向かった。
けれど、呼び出された先が居酒屋さんだった件について、あきれていた。
全力で同窓会してますね、あなたたち。
「あー。文が彼氏連れてきた」
店の中にいた美人が開口一番そういってちゃかす。
彼氏といわれて照れないでください小向先輩。
「違いますから」
「おまえ、即座に否定するな。相変わらずごーまいうぇいだな」
「姉のせいです」
「全部史緒のせいにするなよー。史緒は史緒でらぶゆーだったんだぞ?」
「ひらがな英語を使わない。姉の仕事先の人間たちともう一人主賓が来ます」
「ほいほい。あ、二人はソフトドリンクな。今日は貸切にしてあるから、史緒取り戻したら飲むぞ。付き合え」
仕事を終えて一杯引っ掛けている帽子をかぶったままの男性は私たちにコップとビンジュースを渡しながら言った。
「ちょっとツナのみすぎ」
「いいんだよ。史緒の誘拐犯相手なら」
「私も飲みたいのに我慢してるのに」
「史緒とっとと連れ戻して今まで何してたか吐かせるついでに飲めばいいじゃん。旦那がこどもの面倒見てくれるって言ってくれたんだろう?」
「そうだけどー。文、戦の前の腹ごしらえってことで何か食べなさいな。どうせイナダの店なんだから」
「馬鹿いうな!お前らからは金取るぞ!!何かあるたびにうちを根城みたいにして」
父親の居酒屋の手伝いをしているイナダさんはこちらにビンビールを投げながら言った。
ちなみに貸切のせいかツルツル頭の大将は今日はいない。
「危ないわね……。ちょっとみないうちにまた綺麗になって。史緒もお姉ちゃん冥利につきるわね」
投げられたビンビールをさも当然のようにキャッチした美人は栓抜でそれを開封する。
華麗な手つきに思わず小向先輩と拍手してしまう。
相変わらず化粧美人だなユリさん。
「カイもそう思うでしょう?」
騒ぐ席の隅でカタカタとパソコンをたたいている女性はしばし顔をあげて私を見た後うなづいた。
そして再びパソコンに目を戻す。
「それで文。今回はどうして私たちを頼ったのかな?」
「姉におしおき。連絡一本ぐらいいれてあげればいいんだ。もうカタギじゃないからってためらって。そんなことないのにね」
「史緒は甘えベタなところがいいのよ。そうだ、まだ史緒はフリーっぽい?私にチャンスあるかしら?」
「化粧落として男の格好すればいいと思うよ」
カイさんがそういって、女装常習のユリさんに言う。
ああ、まったくもって見事な女装だ。美人だよ。
オレンジジュースに口をつけながら、ヒルが送ってきた情報と今井さんの情報、それにカイさんが引き出してきた情報を照らし合わせながらこれからどうなるのか考えた。
小向先輩はちょっと居場所に困っていたので、私はぐいと彼を近くに引き寄せておく。
AIの4人が来たところで挨拶をすませ、なんだかんだいいつつもとりあえずご飯になった。
今井さんがこの居酒屋の回線速度の速さに目を丸くしていた。
「はやいですよ?!」
「ちょっと親父のコネでね。アジトとしては上々なんだよ今井ちゃん」
もちろん無線LANも対応とイナダさんがノンアルコールドリンクを出しながら伝えた。
「文?」
ああ、沙門さんが怒ってる。弁解しておこうか。
「別に私は姉の友人に姉がさらわれたけど、救出しに来ます?ってメール一本打っただけですよ?それに今回はAIの会田社長よりも私の姉の史緒がさらわれたようなので。あ、このから揚げ美味しい」
腹ごしらえをしながら彼の様子を観察する。
「愛染血糖値さがってるんだよー。ほら食べて飲んで」
浅木さんがサラダを咀嚼しながら彼の取り皿にいろいろ取り分けている。
あ、メールだ。
『文へ どうもそちらへ行くと不利になりそうだ。待ち合わせの時間に後ほど。』
これないか。了解了解。
しかし、これで終わらせると思えないんだよなヒルは。
小向先輩にポチポチとメールを打つ。
隣にいるんだけどさ。
『いやなら帰ってもいいですよ。私のわがままですから』
『構わないよ。傍にいさせてほしい。』
なんか複雑だ。
嬉しいよな、しまったと思っているような。
「文。じゃあプランAでいいの?」
「懐かしいですねその発言。ええ、それでお願いします」
「OK。ツナと……そちらで銃使える方いらっしゃいますか?」
「オレだな」
赤沼さんがユリさんに声をかける。
「じゃあ手伝ってもらえます?カイ予備のスコープは?」
「グッズの中に」
「じゃあ行くかー。文またあとでなー」
ユリさんら3人が出陣した。
カイさんが今井さんの肩をたたいて、ついっとコネクタを差し出している。
「データですか?」
「そう、プランAの」
「なあなあこのタレの隠し味って醤油?」
「そうそう。ちょっとだけいいのを一たらし」
……あそこは放っておいてもいいや、今回浅木さんはケガしてるし。
「沙門さん、老公と話はつきました?」
「ああ。史緒の友人が出ると伝えたら、万事任せておけと回答があった」
さすが老公話がわかる。
これでレイやらトセやらは関わってこない。
「あとは適当にお任せします」
「了解です。あなたは出かけるんですか?」
「はい。文の代わりに」
カイさんがずるずると着ている服を脱いで着替えを始める。
「ばっ?!おま!」
「おお」
「カイさん!奥で着替えて!!あなたまだそのクセ直っていないんですか?!」
「んー」
ストリップとなりかけたところでイナダさんと私が声をかけ、奥に彼女が一度消える。
特殊なメイクを終わらせた彼女は私とそっくりだった。
「おお、文さんが二人」
「声さえ出さなきゃばれない。文はゆっくり後ろで観戦していて。ヒルって人には話してあるね」
「ええ。大丈夫です」
「イナダ、今井嬢のサポートよろしく。ちゃんと史緒女史を連れて戻る。先に行ってる、沙門さん車お願いします」
彼女が一足早く出かけたところで急に静かになった店内で伸びをする。
「さて、もう少ししたら裏から出かけましょうか、小向さん」
「うん。……ところで文、プランAって何?」
「会田のAですよ。救出用プランともいいます」
5年前からどう変わったのかお手並み拝見と行きましょう。
待ち合わせの場所はすぐ移動しやすいという利便性の高い病院の屋上のヘリポート。
使える人間もツテも連れて行って隠蔽できれば問題ないと読んだか。
風が強いけれど、ユリさんたちは大丈夫かな。
現在対面して建っている病棟の屋上で小向先輩と様子見である。
望遠鏡で会場を眺めていた。
「だけど遠くから見ると本当に文と見分けがつかないね、カイさんだっけ?」
「カイさん本業は特殊メイクアーティストの卵ですもの。今日も西からわざわざこられましたし」
何でも弟子入りした先があっちらしい。
よくきたと思う反面、即行でメールを返してきた怖さがあった。
たまたまだと思いたいが、彼女のメールはいつも返信が早い。
「沙門さんは、待機か。ちゃんと今井さんの話聞いているな」
「確か暖気してって話していたよな。……寒くない?」
「実は少し。風が強くて」
小向先輩が上着を脱いで貸してくれた。
一枚あるだけで違うな。
「暖かいです」
「よかった」
ヘリコプターの音がする。
少し風にあおられながらもヘリが着地した。
黒服の男に連れられて史緒姉がヘリからノソノソ出てくる。
……薬打たれてでも寝れなかったくちだな。
足元がおぼつかないくせに目の前をきっちり見ているようだ。
むう、ここからじゃ姉の表情が見れないじゃない。
ヒルの傍からカイさんが離れて史緒姉を抱きしめる。
普通なら姉を支えている男の人に捕縛されてしまうシーンだが今回はそれでも構わない。
ヒルはヘリの中から出てきた人に一言なにかつぶやいたようだった。
口元を読んでみようと思ったがそれと同時に響いた銃声に思わず顔を上げる。
姉を支えていた人が倒れた。
頭から血流しているけど大丈夫かな。死人がでるのはまずい。
ヒルと話していた男性には矢が刺さっている。
「すごいな、20m以上有るのにこの強風の中人体を射れるか」
「ツナさんですね」
角度を確認してだいたいの射撃場所を確かめる。
すでに二本目の矢を番えて構えているツナさんを確認した。
あの人酒入ってるのによくやるわ。酔拳ならぬ酔弓と本人は言っていたけど。
「んー、赤沼さんはペイント弾か。窓まっか」
的が大きいとはいえ、彼もただものではないよな。
カイさんが姉をかかえるように病院の中に引っ張っていく。
ヒルは……あれ、こっちに指示だしてきた。
彼に教えてもらったサインを読む。
戻れ、任せて、後日、かな。
「あっけなかったな」
「そんなものですよ。戻りましょうか。これ以上いると他の会社が来ますから」
もう少しみていたかったが屋上から去ることにした。
今日はもう家に帰ろう。姉と友人らの再会を邪魔したくない。
ヒルもいないんじゃ意味ないし。
帰りも彼の自転車の後ろに乗せてもらった。
「小向さん」
「ん?」
「好きってなんなんでしょうね」
独り言のようにつぶやいて、答えを求めないまま自転車の前で漕いでいる、彼の背中に額をよせた。
「それは文の心の中に、かなぁ。文は俺のことは好き?」
「好きですよ?」
「なら、それでいいんじゃないかな」
「……うん。やっぱり私の答えはひとつみたいです」
もう一度彼と対峙する機会を持たないと。
心の中にある答えを彼に投げかける必要があった。
朝起きると、姉が私の服の裾をつかんで寝ていた。
「え、ちょ」
声をかけてもおきないことか熟睡しているわかる。
「ああ、もう昨日帰ってそのままだな。まったく。ってか口紅つけたの誰だ」
史緒姉の口紅のついた上着を脱がせながら、やはり昨日居酒屋にあの後ついていかなくて正解だったと思う。
彼らの酒癖の悪さ、今年あった成人式の様子を見て知っていたからな。
情報勝ちで災難を避けることに成功した。
小向先輩に送ってもらって、そのあとメールだけ打って寝たからか、史緒姉がいつ帰ってきたのかわからなかった。
起きない姉を放っておいて、朝ごはんの用意をはじめる。
紅茶片手に新聞を読もうと広げると一面には墜落したヘリコプターの記事が載っていた。
「死んだか」
全員死亡と書かれているのであの人たちはお亡くなりになったのだろうな。
唇でカップの温かさを味わいながらつぶやく。
「鳴かずば撃たれまいに」
とりあえず、地図に点を追加して文字が浮かべばその文字を確かめればもう用はない。
そんなどうでもいい記事ではなく社会面にめくって世の中を知る。
階段を降りてくる音に姉が起きたと思った。
「うー、おはようございます」
「あれ、今井さんだった」
「昨日は泊まらせていただきました。史緒さん酔っ払って文ちゃんと寝るんだって」
「ああ、なるほど。それでですか」
姉ってお酒強いのかしら。
「あの後どうでした?」
「史緒さんがゲラゲラ笑わせられてまして、ある意味私新鮮だったよ」
インスタントコーヒーを彼女は一口飲んで落ち着いたようにつぶやいた。
「あの4人は史緒姉の知らなかったフォーオブアカインドですから。強いんですよ彼ら、特に姉の救出戦にかけては」
「だろうね、赤沼がカタギかどうか再確認していたよ。……ねえ文ちゃん。他にももしかしているの?」
「いますよ。今も交友あるのは彼らだけですが、召集は可能です。いちようグループわけはポーカーハンド…ポーカーの役になぞらえてありますけど。お教えできませんよ、今の姉にも」
「そっか、仕事に対して人手不足を解消と思ったんだけどなぁ」
てか皆性格ひん曲がっているからカードとしてきりたくない。
下は12から上は80越えが男女でそろってるし、本当に姉は散歩と共にとんでもない人たちを連れてきて、その人たちは何故か私に何かあったときの連絡先を教えるという。
しかし、姉もあの人たちの情報網からよく潜り抜けていたよな、5年間。
史緒姉いなくなったときすぐ連絡したんだけど。
「だからなのか、今日はよく寝れてるみたい」
「みたいですね。起きませんでしたし、今井さんパンでいいですか?」
「うん、ありがとー」
二人で朝ごはんを摂っているとずるずると引きずるような音がして姉が降りてきた。
「……飲みすぎた」
「そりゃ、薬打たれてアルコール取ったら普通に考えて悪酔いするでしょうに」
頭を押さえて二日酔いに堪える姉は真っ白い顔をして水を飲む。
「文。なんでなんで教えてくれなかったのよ?!あたたたた……」
「むしろ姉がきちんと説明してくれるのを今か今かと待っていたのがあの4人です。自業自得っていうの。野菜ジュース飲んで、今日は寝てればいいんだ」
「ううう、ユリちゃんが16で出来婚なんて予想外よ。しかも子供二人いるし、旦那さんもとい奥さんすごいヅカ系美女だったし、ありえん」
そして本人は現在家族3人を養うためにオカマバー勤務とかびっくりだよね。
ユリさんが、私オカマの星になるわって言ったときは本気かどうか一瞬わからなかった。
西平の進学コース中退したし、姉って本当影響を与える人間だ。
「ユリさんが史緒姉がいなくなって一番荒れたんだよ。奥さんすっごく頑張ってたんだから今度お礼を言いにいけばいいと思うよ」
「そうする……中学の恩師にも顔出すわ。そしてこれから仕事……今井、車の運転お願いできるかな」
「わかってます。そのつもりでいろと沙門にも言われましたから」
今井さんが苦笑しながら彼に渡されたらしい二日酔い対策のドリンクを姉に差し出す。
「文も一緒に来る?ってか一人じゃ心配なのよ」
「ああ。警官の人と喫茶店で今日はすごすつもりだから安心していいよ」
それに彼らには今日は仕事をしてもらう予定だ。
手柄のひとつでも渡してあげたい。
ヒルの暴れようから、そろそろ彼いなくなるし。
「史緒姉、沙門さんに伝えて。喰われないようにって」
「?わかったわ」
「お願いねー。忠告もどきだけど」
ドミノ倒しによく似ている。
緊張するけれど長く大きく続けたほうがくずした時に得られる快楽は大きい。
悪徳と悪意の絵はきっとこの街に綺麗にはえるのだろう。
「文、今日は姉は不在か」
トセが吸っている煙草の煙をくゆらせながらつぶやいた。
副流煙はいやだったが、普通の煙草だったので黙っておいた。
「仕事」
ぶっきらぼうに呟いて、彼から目線をそらす。
「お前、このまま姉が失業してしまえばいいと思っているな」
「……ま、ね。たぶん周りがさせないでしょう。だから好きにさせておく」
あまりにやさぐれていた様子だったのだろう、困ったような顔をしてトヤが煙草の箱を差し出してきた。
「吸うか?」
「いらない」
ココアを飲みながら、今までちまちまと新聞を見ながら印を付けていた地図を広げる。
発生した事件の番号順にラインを引けば見えてくる文字。
うーん、英語じゃないのは確かだ。
「ヒルのメッセージは相変わらずしゃれているな」
マスターはこの言葉を知っているらしい。
hora incerta
「ラテン語の格言でね。検索すれば出るよ」
携帯電話をぽちぽちいじって検索すれば、確かに格言として出た。
「えーと、時は不確実……?」
「そのままだとね。一緒にセットになっている単語がもうひとつあるはずだ」
Mors certa と書かれていた。
これどうやって読むんだろう。モールス、セル……?
「文おーはよ」
レイが後ろから抱き着いてきた。
重さに押しつぶされかけたので相手のアゴを持ってぐいと上げる。
親指に力を入れていちようたずねる。
「何?」
「やさぐれてないでよ、謝ってるんだから。もうしないから。いい加減にオレみてよ」
「……それで?」
すくうように持ち上げた顔をそのまま床に叩きつけるように無造作に捨てた。
そうだな、ワザとだけどまだ許すつもりはないよ。
「いじけてやる」
「ガキか」
トセが新しい煙草に火をつける。
「あーやー……あー……やぁ」
「エロイ声だすな。まったくあなたという人は」
ため息をついて、彼のほうを向くと本気で泣いていたのでびびった。
ぼろぼろとこぼれる滴にが彼の膝に落ちていく。
「あゃぁ」
「だ、大の男が泣かない!ああ、もう涙拭いて」
ハンカチで彼の目元を乱暴にぬぐって、ため息を再びつく。
「……文!」
そんな嬉しそうに語尾にハートをつけるような勢いで抱きつくな。
レイって情緒不安定な気があるんだよな。
性格と行動が首尾一貫のトセと違って対応に困る。
「レイ、もう姉を意図的に巻き込まない?」
「しない」
「うん、ならいつもどおり好きに私の隙を狙ってどうぞ。家族や友人をダシに使うやつを私は私を狙う人間として認めない」
それが、傍で私を狙う人間への最大限の譲歩だった。
今もきっとこれからも。
追加の飲み物を頼むとレイが入れるとのことなので、再びトセと並んでだらだらする。
「行くのか?ヒルと」
しばらく何かを言うのを躊躇っていたのだが、やっと本題がトセの口から発せられた。
「行かないよ。姉がいるからしばらくは、高校出たらわからないけど。……大学行きたいし」
「てっきりそうだと思っていた。コムもレイもオレも」
「だから姉を連れてきたのか。彼の傍にいたいと思ったよ。でも今じゃない。今は私も姉も歪すぎる。私の歪んだものはヒルの傍にいればいいだろう。けれど、姉はそれだと死んでしまうんだ」
無言の微笑、その仮面の下に潜んでいる歪な心。
姉妹で散々お互いにお互いの迷惑を受け持っていたのだ、それぐらいわかる。
「意外とシスコンだな」
「いつまでもお姉ちゃん子じゃいられないから、姉を育ててる最中なんです。……結局は自分のために他人をどうする方法しか私は知らないから」
「それで他人が幸せならいいだろう。何をそんなに嫌がる。忘れさせてやろうか?」
「薬で?やめてくれ、効かないし悪いところにしか入らないんだ」
顔をカウンター席に突っ伏して、次にヒルと会ったら何を話そうか考える。
携帯電話が鳴ったのでそのままの体勢のままで出た。
下田さんたちが最後の事件となる場所で被害者が死亡することなく犯人を捕まえたの報だった。
外国語の文も日本語の文も最後ならなら句点がつく。
地図で文章を書いていたのなら句点の位置は予想ができる。
ごくごく簡単な最後にしかできない予測。
なんだかんだ言って二年前に彼の行動原理やパターンはヒッツキムシのように観察してた。
今思えばすっごく子供で、まるでお気に入りのおにいちゃんについていくようだ。
そのかわり精神ダメージ入ったけど。
今回も少なくとも3回は入ったし。
……あの時ヒルがはまっていたのが悪意の進化だったから。
人間ってそこまで悪意に染まれるもんだと思った反面吐き気がした。
ああ、でもこぼれてしまった笑顔は本物なんだよな。
結局それでヒルが実験終わりと言って帰っていったから。
もう一度電話が鳴る。
今度は違う着信メロディ。
「いつもの喫茶店にいるよ」
電話の向こう側の相手はただ一人だけなので、そう伝えた。




