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それはまるで理想のような

 夏の体育授業は水泳か陸上か選択できるので嬉しい。

 もちろん水泳を選んだ。いくら湿度が少ない地方だとしても暑いものは暑い。

 ちなみに千里や久星それに檜は陸上を選んでいるので、水泳でよく知る友人は大月だけだ。

 千里に何故水泳を選ばないかと聞いたら、カナヅチだったことが発覚した。

 意外だったのだが彼女が真っ赤に顔を染めていたので、それ以上つっこまないであげた。

 ノルマ距離を目指して泳いでいると先にノルマを泳ぎきった大月が声をかけてくる。

「会田さん、期末テストの準備はどうですか?」

「ぼちぼちかな。それがどうした?」

「うちで勉強会を開くことになりまして。よければ湯本さんと貴女も誘おうかと」

 おお、なんか学生っぽいイベントだ。

「待ってて、あと一往復でノルマ達成だから」

「わかりました。ちゃんと日焼け止め塗っていますか?」

「姉に渡されたから塗ってる。大月はもうちょっと健康的に焼けたら?」

 ゴーグルをかけて水の中にもぐり、水を掻き分けた。

 我流だが、そこそこ私は泳げる。

 水の中は光の反射と明るいざわめきに満ちていた。

 ノルマさえ泳ぎきればあとは何しても自由なのが水泳のいいところだ。

「んで、勉強会だっけ」

 ゴーグルを外して彼に近づく。

「じゃんけんで負けまして、うちでやることになりました。男組は泊まりですが、いつものメンバーで面白みがないのであなた方をと思いまして」

 スロープに体を委ねて浮きながら大月の話を聞く。

 中間終わってからあっという間だったな。

 短い夏休みの前の勉強の復習のためのテスト期間。

「いいけど。久星まともに勉強するかな」

「させます。結局中間で赤点2つありましたからね」

 赤点だと受かるまで再テストです。

 あきらめない限り落ちないけど、久星たしか二回落ちた。

 今回赤点だと彼は補習が夏休みに待っている。

「それで、いつ?」

「今週の土曜日に。午前中は兄が不在なので」

「ああ、お兄さんが気難しいとか」

「一つ上なのですが、去年受験に失敗しまして。僕の志望校と被って僕が東泉に志望校を変更することになりました」

 話を聞くとどうやらそれも関係して仲が悪いようだ。

 頭は大月のほうが柔らかくて賢いようだ。

「それに浅木さんがうちに来て試作料理を作ってくれるそうです」

「あの人は本当に食関係でひょっこりでてくるな」

「母がすっかり彼を気に入ってしまいまして。すっかり僕も彼に餌付けを……」

 言っていて彼は自己嫌悪に陥っていた。

 あー、たしかに浅木さんの作るご飯は美味しい。

 眼鏡を外している大月は水も滴るいい男なのだが、目を細めて機嫌悪そうなのが難点だよな。

 勉強会とは別のことを考えながら、足をばたつかせて浮いた状態を維持する。

「千里に話してみる。きっと行くと思うよ最近暇ってぼやいていたから」

 暇すぎて師匠の家にいりびたってるって話してたし。

 授業のあとそれを千里に放すと嬉しそうに行くと返してきた。

 さて、じゃあお土産何か持っていかないとな。

 史緒姉に相談でもしてみようか。


 勉強会のことを話すと史緒姉は眉をひそめた。

「それ、手伝ってって浅木に言われてるわよ私」

「なんだ。それって姉も来るってこと?」

「そういうことね。大月君の家に何か挨拶の品持っていかないと。大月君にはよく世話になってるでしょう?」

「それどういうこと」

 姉はパスタをお湯の中に二束いれて、こちらを向く。

「彼に良く本を借りてるでしょう?」

「ああ確かに。大月のお父さんお医者さんらしくってその手の専門書を大量に。面白くって」

「うちにもある……って、父さんのは次元がぶっ飛んでるわね。精神医学専門なのになんで心臓手術の論文が転がってるのか不思議だったもの。脳医学ならまだしも」

「ちょこちょこ作成したお菓子やらおかずあげてるけど。お父さんの書籍なら何かお礼したほうがいいかな」

 お医者さんのお父さんに喜ばれるものって何だろう。

 まだお母さんのほうに喜ばれるもののほうが予想がつく。

「お姉ちゃんが考えておくわね。大月君のお父さんって外科?内科?」

「ええと、脳外科医って言ってたから国立付属の先生じゃないかな」

「了解。なら喜びそうなもの用意できるわ」

 あんまり変なもの渡さないでねと伝えて器を用意する。

 今夜はボンゴレビアンコです。

 私のリクエスト、貝類好きなんだよね。

 姉は砂抜きしてもじゃりじゃりするから嫌いっていうけど。

 時々外泊して仕事に出かける姉だが、なるべく家にいてくれる。

 彼女はそれが当然だと思っているので、私もそれに甘えてあれこれお願いをする。

 だいぶ自然に話せるようになって、笑いも増えた。

 姉が浮かべる表情の微細に気づくようにもなった。

 昔はだいたいの勘だったけれども、今は違う。

「頼ってね、姉妹なんだから」

「ありがとう、文」

 それだけはきちんと伝えて、些細なことなら姉は頼るようになった。

 例えばお醤油足りないから買ってきてとかそんなお使いやお留守番程度だけれど。

 昔から姉は全部自分でやらなきゃならないって気負っていたところがあったから、ものすごい進歩に思えた。

 今思えば、母がまともじゃない分自分がちゃんとして妹を守らなきゃなんて必死になっていたのじゃないかと想像がつく。

 相談も家族じゃなくて隣の幼馴染のおにいちゃんにするぐらいだもんな。


 その日の浅木さんはテンションがやたら高かった。

 隣の姉がため息をつきながら恥ずかしそうに彼の後頭部を叩いたぐらいに。

「いたい」

「落ち着け。あんたはもう」

「だってー。文さんもいるなんて予想外なんだよ。オレの眼福時間が増える」

「あのねぇ……」

 姉は大月の母にいつも妹がお世話になっていますとテンプレな発言をしてお菓子を贈っていた。

 日持ちを考えたのか今日は手作りではなく浅木さんに買ってきてもらった菓子だ。

 下町で名高い和菓子屋の上菓子らしい。

「本日中に召し上がってくださいね。それではお台所お借りします。」

 そんな姉の姿を途中まで見て大月の部屋へ。

 金持ちの家だからか、妙に広い。

 5人で教科書を広げてもまだスペースに余裕があった。

 男の部屋って、なんていうか無機質だなという印象を持つ。

「さて、今回はしっかり点数とっていただきますよ久星」

「は、はい」

「アイちゃん、化学の式わからないから教えて」

「私も」

「後で社会教えてね」

 そんなこんなで勉強開始。

 大月は久星につききりで仕込み、私は二人に化学と数学を教える。

 代わりに私は二人から語学関係と社会のチェックをしてもらう。

「アイちゃんここの表現テストの正解から外れるよ」

「むう、三度目の間違いか」

「社会の先生なら思想の一つでまとめるけど、国語だから」

 それでも答えを聞かずに自力正答を目指す。

 笹部先生に社会は見てもらっているからまだそっちはいいけど。

『文の答えは基本的に反社会的だからな。無難な答えがないのはいいがペケだ。一般社会的に』

 一般的な回答がいまいちわからないまま進んでいる日々だ。

 まだ理解してくれる人間が回りにいるからいいけどこれから大学でたりしたらそうもいかないもんな。

 大学に史緒姉はいってこいって言うけど、具体的にやりたいことまだないし。

 なんでも父の遺言で私が二十歳になるか大学卒業までは必要な学費は全額遺産から出るように弁護士が管理するそうな。

 祖父もまだまだ長生きしそうだし、生活は心配するなっていったし。

 こういうときお金の心配をしないでいいありがたみはなんとなく身にしみる。

 お金に困ったことはほとんど無い。

 お小遣いに困ったことはたまーにあるけど。

「文、ペンが必要ないところで止まってる」

 千里に指摘されて、意識を戻す。

「ちょっと思考が将来にむかってた」

「今のテスト勉強が大事ですよ会田さん」

 大月に言われて、再びシャーペンを動かす。

「……一期さん何昼飯に作るんだろうな」

「キュウちゃんも意識をご飯にむけない。本当に食いしん坊なんだから」

「二代目一期さんに俺はなる!」

「このプリント終わらないと昼食は抜きです」

 そういってヒラヒラ大月がゆらすプリントは先生が久星他中間で2回以上赤点くらった人間用にこしらえた特別テスト対策プリントだ。

 先生の汗のにじんだ努力が見える。

「昼抜きは嫌だ。がんばる」

「さあ取り組みなさい」

 大月の目は笑っていなかった。

 ……午後は大月の代りに私が久星に教えてあげましょう。

「大月は頭いいよね」

 千里がカリカリと漢字の書き取りをしながら古文を読むという器用なことをしながらつぶやいた。

「まあそれなりに。将来に目標がありますから」

 そのために勉強は必須ということか。

「目標って?医者か?」

「いえ、薬剤師志望です。コンスタントに金銭が稼げますしね。それに僕は血が苦手なので」

 ああ、そういえばそうだった。

 でもそれでよく肉加工できたよな。

「肉肉しいのは平気?」

 男3人組が固まる。

「文なにそれ」

「んー浅木さんって人いたでしょ」

「あーいた」

「彼は食にはとことんこだわるから肉の塊とか持ってきて、さぁトリミング作業しろって言うと思った」

「トリミングって業界用語だよ」

 ちなみにあとは切って調理するだけの状態にすることをトリミング作業というはず。

「私、鶏は首スパッとやってしめたことある。お肉って熟成期間待つよね」

「鶏はすぐ食べられないっけ?」

 そんな会話を永遠と作業をしながら続ける。

 しばらくして、大月が口を開いた。

「湯本さんが会田さんの理解ある友人なのはよく理解できました」

「そんなつもりで話していたわけじゃないけれど」

「ですが肉の話はやめにして目の前の勉強の話をしたほうが今は有効だと思いませんか?」

 軌道修正されたので、おとなしく姉に呼ばれるまでは勉強のことで会話を続けた。


 昼食は浅木さんと姉の力作だった。

 大量に使われた前菜のチーズの量には驚いたがイタリア料理ときいて納得した。

「いや、外国のダチが大量に送ってきてさ。おすそ分け」

 HPのレポートにするそうなので感想よろしくと言われた。

 食べ物に関連する全てに感謝の気持ちを述べて口に運ぶ。

「……思った以上にあっさりだ」

「だろう。千里さんもできる限りでいいから食べて。男はがっつり食う」

「はい、ありがとうございます」

 大きなテープルで試食を兼ねた昼食会が繰り広げられた。

 史緒姉は私の横で食べろと浅木さんに言われておとなしく座っている。

 なので追加の料理は浅木さんと男3人組が作成する。

「望さんお皿用意して。パスタとピザがほぼ同時で出る」

「はい。両方白ですね」

「そう、久さんはこれ運んで。輝也さんはそろそろワインだして、そろそろパパさん帰ってくるから」

 よその家の大黒柱の帰宅予想まで立ててるとはどれだけ来てるんだろう。

「ママさんも飲まれますよね?史緒の仕入れたワイン美味しいですよ」

「あら、じゃあ一杯だけいただこうかしら」

 ママさんも納得の食事にゆったりしている。

「史緒姉さん、ワインの仕入れでも始めたの?」

「ううん、欲しいって頼まれたから手に入れたものの余剰分。浅木が売って欲しいっていうから安く分けたのよ」

「日本のワインですか?」

「下手な外国ワインより美味しい」

 姉が出来立てのピザを取り分けたところで、ただいまと共に玄関のドアが開いた音がした。

「お帰りなさい、あなた。タイミングいいわ」

「ただいま。っとおお今日は花が多いな」

「お邪魔してます」

 千里と口々に言って頭を下げる。

「望パパさんお帰りー。さあさあカバン置いてスーツ脱いで。ちょうどパスタともう一枚のピザがいい感じになった。望さん、オレあらたさん連れてくる」

「新?」

「兄です」

 ああ例の、いつの間に戻ったのかわからないが気づいていたのは浅木さんだけのようだ。

「いっで!」

「おらきやがれ不良息子、おにいちゃんはご飯をみんなと食べれない子に育てた覚えはないぞ」

「誰がおにいちゃんだ!馬鹿かあなた!」

「ほっほっほ。力技で勝とうと思うなら百年甘いわ」

 ……浅木さんノリノリである。

 それにしてもお兄さん大月に声そっくりだなぁ。

 でも下にきた少年は大月そっくりだった。

 違うのは彼が眼鏡をつけておらず、髪も後ろで束ねてくくっていることだろうか。

 髪型違ってなきゃ絶対間違えるこれ。

「よし、今日は特別に文さんと史緒の間に入れ。そしてオレの作った料理を食え」

「あのなあ、一期」

「あ゛?」

 一睨みだった。新さんが黙って折りたたみ椅子を私と史緒姉の間において座る。

「一期、食事中に殺気出すな」

 姉に言われていつもの笑顔に戻った浅木さんはパパさんにお酒を勧めている。

「パパさん午後仕事ないですよね?どうぞ一杯」

「すまんね、いただくよ。今日はこれがあるから気合いれて手術してきた」

「いいっすね。労働と報酬です」

 放置された新さんに姉は切り分けたピザと取り分けたパスタを取り皿によそっていた。

「さ、温かいうちに食べてね」

 姉のほうを向いた彼が頬を染めてこくりと頷く。

「サラダ食べます?えーとお兄さん」

 私も前菜などをよそって彼の前におく。

「……ありがとう」

 小さな声だったがちゃんと聞こえた。

 どうやらシャイらしい。

「どっちだと思う?」

「史緒さん」

 久星と大月が謎の会話をしていたのが耳の端に引っかかった。


 大満足の後再び勉強に戻って、集中力が途切れると話にあがるのは新さんのことだった。

「大月、そっくり」

「ああ。昔はまるで双子のようだと。背丈は僕のほうが上ですが」

 ……いや、何となく仲が悪くなるのわかる気がする。

「私は大月より新さん派かな」

「ええーなんで」

「だって毒舌言わないし。姉に対してを見るとフェミニスト」

 檜に書き上げたばかりの第四稿の現代文プリントを渡す。

「いいですか、あれはヘタレというんです」

「何必死になってるのさ大月」

 そういって、大月の額を小突く。

「必死になんて……」

「なってる。弟だと新さん大変だよね。どうせチクチクチクチク今まで言い返されないことをいいことにさんざん辛口発言してたんでしょう」

 チクチクのところで彼の額を連続して小突くとますます渋い顔をする。

「そういうあなたのこの口はどうなんですか?」

 頬をぐにっと摘まれて横に引っ張られる。

「いひゃいいひゃいいひゃいー」

「友人よりその兄につく口はこの口ですか」

「ノゾちゃん、のびてるよのびてるよ。アイちゃんお兄さんのこと知らないんだからー」

「前回のように小向先輩がやってきませんよ?」

 以前の図書館のことを彼は言っているらしい。

「やめなはいー」

「ふふふふふ」

 このまま彼の気が済むまで続くかと思ったが久星の一言が大月をとめた。

「……お前さ、それ女の子のことが好きな小学生がつい意地悪しちゃう図そのまんまだぞ」

「どうりでみた光景と」

「ああー、キュウちゃんそれビンゴ」

「何がですか」

「だって、大月はお前より新さんについた会田の発言が気に入らないんだろう?まんまそうじゃん。何で俺じゃなくて兄なんだって感情そのまんま」

 指を離したところで予想以上に鋭い追い討ちがかかった。

「よ、よりによって久星に言われるなんて……」

 そこに浅木さんが登場。

「落ち込んでるとこ悪いけど、おやつ食べにおいで。どうしたの?」

「自己嫌悪ですので気にしないでください」

 浅木さんにからかわれる前に自分でそう片付けて大月は立ち上がる。


 パパさんは何か手術の映像を手元にあるDVDプレイヤーで並んで食いいるように見つめていた。

 あれがお土産か。本当にどこから手に入れてきた。

「……史緒さん、画像そっちにつないで欲しいんだが」

「構いませんがTVは高校生組がおやつ食べた後のほうが」

「ん?ああ、そうか」

 お酒飲んでいたけど完全に抜けてるなあれは。

 ママさんが用意してくれた紅茶とラングドシャを食べて休憩する。

「うーん。まさかあれがあんなに貴重だとは」

「何、あの動画」

「え。知り合いのお医者さんにいい挨拶品ないかって聞いたらよこしてきて。もともとやたらあの手の手術動画送りつけてくる人だったから、まあ間違いないとは思ったけど」

 姉のファンですねわかります。

「史緒おねえさま?」

「え、何で怒ってるの文?」

「どこに手術動画挨拶に送る馬鹿がいますか。ちょっと正座」

 椅子に座っていた彼女を正座させて叱る。

 そのお叱りをタイミングよく割って入っていたのは新さんでした。

 ママさんにおやつと呼ばれて、どうやらしばらく姉妹の様子を見ていたらしい。

「文ちゃんはお姉さんのこと好きなんだね」

「違います!」

 あわてて否定する。

「じゃなきゃ、そこまで言わないよ。望は辛いだけだし」

「そうか、お姉ちゃん愛されてるんだね」

「史緒姉はもうちょっと反省してなさい」

「むう。姉は何一つ間違ったことはしてない、たぶん」

「だったらむうとか言わない、いい年して」

「まだ二十歳です。そりゃわかさぴっちぴちの文とか千里ちゃんには負けるけど。お姉ちゃんもてるもん」

「もててるんじゃなくて、付きまとわれてるの!」

「それは文も言えるでしょ?」

 姉のカウンターアタックが決まった。

 言葉に詰まる。

「……負けた」

「いや、文。うん。史緒さんのいうとおりだ」

 千里が慰める言葉が見当たらず、ただ不器用に肩をたたいた。

 もうちょっと普通の人にもてるようになりたい。

 いやもてなくてもいいんだけど、なんていうか普通の好かれかた?

 それが姉妹そろって足りてないと思う。

 浅木さんと新さんが笑うのをこらえていた。

「浅木さんは笑わないで、姉の知り合い変人代表!」

「オレそうなの?てっきり愛染かと。んで妹の知り合い変人代表は?」

 私のか。

 じーっと友人らを見つめてから違うよなと頭を振る。

 まだ個性的ですんでる。

 英理は変人というより怪人だし。

「……父親?」

「ああ、ぶっちぎりで変人だったね」

「会田先生か……そうだね変人が多い医者の中でも彼の変人列伝はトップだった」

 姉が納得したのに加えて同業者で噂を聞いていたパパさんがうなづく。

 身内ネタに走るのはよくないので、大月をぐいと捕まえて新さんの前に座らせる。

「さあお兄さんこの毒舌しか言わない弟にガツンと一言」

「え、弟はオレに辛いし毒だらけだけど、そこが可愛いんだよ?それに俺いじめられるの嫌いじゃないし」

 何だって。

「それに人格的に劣ってる奴等なんてちょっと小突いてやればすぐに自滅するから俺が手をかけて倒すほどの相手じゃないし。どうせやるなら一期レベルぐらいからがいいかな」

「あははは、こいつぅ」

 浅木さんの声は笑っていたが目が笑ってなかった。

「それでも女の子の心遣いは嬉しいよ。ありがとう」

 それを聞いてから黙って大月のほうをみた。

「兄はドMでドSなんです。じゃなきゃ僕東泉行ってませんから」

「ごめん、大月のほうが友人として付き合いが大事です」

「わかったならよろしい」

 これだから人間って怖い。

 ちなみになんで受験失敗したかと聞いたらインフルエンザにかかったそうだ。

 塾もいかずに自宅学習をちょっとするだけで学年首位らしい。

「天才気質なヘタレなんです!」

 そう力説する大月だったが、どうがんばってもヘタレには見えないと答えるしかなかった。

新は自分が好意をよせる相手に対してだけ(好きの幅は問わず)ドMなだけで、彼がSっ気を出すということは相手の格を認めているということ。

大月はそれがわかっているので余計悔しい。


史緒の人脈は変人ネットワークとAIの間では言われています。

最近では仕事用の携帯電話とプライベート(変人含む)用のスマホの二台持ちです。

文は高校まで携帯電話を持っていませんでした。

スマホが嫌いなので折りたたみ式の携帯電話を姉に買ってもらいました。

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