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距離と焦燥と恋慕 独白1

 それは俺の内側からジリジリと身を焦がす願いだった。

 いつからかはわからないけれども、体から外に零れ落ちそうな衝動。

 愛した人の首を絞めたいと考える。


 アブノーマルと思ったから隠していた。

 でも、中学に入ってから出来た親友二人にはどうしてか口を開いて話してしまったのだ。

『手に入れたら、きっと素敵なものなんだろうね』

 俺が好きになった、痩せた親友はその告白を聞いたとき静かにそう返してくれた。

 彼女がいつも何もしようとしない手を動かして、俺の両手を自分の細い首に当てていた。

 背中に電流が走るような突き抜けた感覚に身を任せ、彼女の首を力いっぱい絞めていた。


『幸せ?シン』

 親友はただ首を傾げるだけだった。

 まるで人形のようだと印象に残る無表情。

 彼女の問いは幸福とは別のところにその本能があったことに気づかされる。

 それと同時に、嬉しさと悲しみがこみ上げた。

 俺は彼女のことが異性として好きなのだと気づけた喜び。

 彼女は俺を救えても、俺は好きな彼女を救えないと理解した悲しみ。


 俺はハリネズミで彼女に近づいたら彼女を傷つけて殺してしまうから。

 だから悔しくて仕方が無かったけれど、幸せにできるもう一人の親友に願った。


 俺を好きになる人は多かった。

 でも皆、俺の外見や上っ面の言動だけで、痩せた親友のように愛して理解はしてくれない。

 何人も何人も首を絞めたけれど、満たされずにいて。

 探しても探しても愛する人は見つからなくて。

 痩せた親友は黙って俺が首を絞めたくなると親友として首を貸してくれた。


 でも、そんな時間は長くは続かない。

 彼女の恋人は好きな女が首を絞められているのを許せる男じゃない。

 殴り合って、当たり前だが負けたのは俺だった。


 もう、探すことにも疲れて、いっそのこと消えてしまえばいいと思った。

 空は青くて、きっと明日以降も親友たちを見守ってくれると思えたから。

 ある、ビルの屋上に出て下に飛び降りようとした。


 それが、俺の恋する一分前の出来事。

 俺と同じハリネズミの少女。

 ハリネズミのジレンマを共有できる相手。

とある少年の独白


・ハリネズミのジレンマ

 どこかのお話。元はヤマアラシのジレンマ。

 ハリネズミ同士くっついて暖まろうとするとお互いの針が邪魔でくっつけない。

 そんな2匹は針の痛みに学習しながら暖かくてお互いを傷つけない距離学ぶ。


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