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駒を手に取り配置せよ

 何となく過ぎていく学校生活の中にも行事がやってくる。

 東泉高校に学校行事というイベントがやってきた。

 夏のイベントである球技大会は、出席がHR単位の認定に関わってくるので気が抜けない。

 HRの単位がないともちろん卒業できないので、参加は必須である。

「それじゃあ、球技大会の説明を始めますねー」

 皆に学級長と呼ばれる彼女は体育委員と共に今黒板の前に立っている。

「東泉高校の球技大会は西平高校……私立の西山平安高校にしやまへいあんこうこうと合同で開催されまーす。伝統的な、交流ですわー、学友との愛に満ち溢れている企画ですねー」

 あまりに、エセ外国人なしゃべり方と個性的なキャラに皆は名前を忘れ、学級長と呼び、そして何とか絡まれないようにすごしてきたのがわかった。

 そんなことを気にせず、彼女は私や千里に絡むのだが。

 ちなみに彼女は純粋な日本人だし、見た目も平均的な高校生だと思う。

「アイダさーん、話聞ーいていましたか?」

「聞いていたわよ、あー、木曽学級長?」

「では、西平高校とどう合同で開催されるのか話してくださいよー。まあ私の名前を間違えてる時点で何も聞いていなかったのでしょうけれども」

「う」

 やっぱり違ったか、まぁわかっていたけど。

 木曽じゃなかったかな。名前はともえのはずなのだ。

「まったくもー、貴女には他人に対するあ・いが足りませーん」

「少なくとも学級長にあげるぐらいなら犬にやるわ」

「ひどいですー。ですが、私の愛を貴女にあげましょうー。ユモトさんもどうぞー」

「「いらない」」

 学級長は残念な日本語を喋りながら、もう一度合同球技大会についての説明を聞く。

 口調が面倒なので簡単にまとめると、今回は西平高校に行って各球技で競い合うとのことだ。

 1年づつの持ち回りで、去年は東泉に西平が来たらしい。

 球技はバレーやらサッカーやらあるが、男子はバレーとバスケとサッカーで女子はバレーとバスケとテニス。

 人数は生徒数の多いあちらが余るが毎年のことだと聞いた。

「というわけで、皆さん。選んでください」

 体育委員が黒板に種目を書いていく。

 女子だとクラス全員参加か。何に出よう。

「文、何出る?」

 千里が話しかけてきて、共に黒板を眺めた。

 はっきり言えば、運動神経は平均より少し劣る。

 千里はもっといい子と出ればいいのだが、と思う。

「学級長、千里と組まない?」

「Oh.それは素晴らしい提案ですアイダさーん」

 千里ににらまれたが気にしない。

 クジで引いても3分の1の確率で学級長と同じ球技をするのだ。

 ならば、ここらで戦略を組み立てて大会に挑もう。

「どうせなら、勝ちたいでしょう?確実に勝利を取るなら二人が組んでバスケに行ったほうがいいと思う。1学年でバスケ部で活動しているの3人だけだし、その子たちが全員バスケに出ても足りないから、運動神経いいところの二人が行けば勝てるかなと。幸い西平は人がいる分、入部している種目には入れないから」

 体育委員からもらったペーパーを眺めながらつぶやく。

「なら、文はバレーだ。サポート入れやすいし多少の余裕があるから交代しやすい」

 千里が黒板まで歩いていって、学級長と私と自分の名前を書きこんだ。

 女子はどうするか戦略的に悩む中で、男子は自由に決めていく。

 久星はサッカーに行くようだ。


 その日の昼は千里と二人で木陰にレジャーシートを引いて、お弁当を並べる。

「ひどいな、文」

「でも実際うちで真面目に運動系部活している子なんていないし、体育の時間の動きを見て、勝ちに行くなら学級長と千里だ」

「まぁ、それはわかる」

「んで、学級長の苗字なんだったかしら。忘れて思い出せない……」

 佃煮に箸を伸ばした時、フェンスを乗り越えてやってくる男の子を目撃した。

 しかも制服だ。西平独特の夏のブルー半そでシャツ。

「西平の人。それと、会長」

 何やっているんだ。裏取引か。

 二人でお弁当をモグモグと小動物のように租借しながら様子を見る。

 まぁ、こんなところでお弁当を食べている私たちも私たちなのだが。

 木陰は木陰でも木の上の木陰。

 ちなみに千里は私より一段高い枝に登って誰にも見られずお弁当を食べている。

 気分はリスだ。

「あ」

「気づいたね」

 西平の少年がこちらに気づいて、私たちのほうを指差す。

 大きく手を振られたので、小さく振りかえした。

 こんなことで気にするようじゃ、東泉の生徒としてやっていけない。

 この前なんて、3年の先輩相手に謎の不良が侵入してきたし。

 倒されそうになった先輩を小向会長がぼっこぼこに倒していた。

 あれは皆が拍手したと同時に皆が口をつぐんだな。

 まさか、20人相手に一人で勝てると思ってなかったし。

 日常になってしまって平然としてしまう慣れとは怖い。

 千里が、私にアイスティー缶を渡して問う。

「文はさ、会長好きなの?」

「嫌いな人間が毎日あいさつしていると思う?」

「思うよ」

 小向先輩は私の中で面倒な人という認識だ。

 好き嫌いとはまだ別の枠の中にある。

 姉のお菓子を代わりに彼女に渡す。今日は水まんじゅう。

「……あの人、特殊なものがひとつあるから。でも、それで嫌いにはなってないよ」

「かわいそう」

「小向先輩が?」

「うん。中途半端で、ひどい女だ文。片思いの会長はそれで毎日心痛めてる」

 中途半端……か。

 でも、しょうがないじゃないか。

 わからないんだもの。応え方が。

 受け入れるだけが良いとは思えないから尚更に。

 恋って何だろうと自問自答してもわからない。

 確かドキドキしていたのだが、中学のとき。

 手をつなぐ前に殺されたからな。

 無意識のうちに押さえつけている感情の一つなのだろうけど。

「うーん……」

「学級長のセリフじゃないけど。愛足りてますか?」

「ひどい」

 大きな課題の一つになりそうだ。

合同球技大会開催予告


変な学級長と生徒会長と交友のある謎の西平生

千里の心配と悩み

文はいろいろ心に抱えたまま高校生活を楽しみ中

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