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5年間の空白は

 無事にいろいろ蹴りこむように突入した6月。

 降水量は少なめな気候をしているこの市にも一定量の雨は降る。

「……寒い」

「伊達の薄着をしない千里が好きだよ」

 それでもラインの出る、スキニーパンツを履くのは彼女の意思表示なのだろうか。

 私も姉が買ってくれた、暖かい上着を梅雨があけるまでは手放せそうにない。

「体冷やしたら、師匠に怒られちゃうからな」

「違いない」

 彼女の怒ったところを想像しながら、久星と大月の到着を待つ。

 お昼休みも時間が余っていたので、ジャンケンで負けた二人が飲み物を買出しに行っているのだ。

 4階にある教室から、1階にある自販機まで行くのは非常に面倒だ。

「お師匠さん?」

 すっかり怪我もクマも無くなった檜が料理本から目を上げた。

「健康と美容と蹴りの指南役。私もああなりたい」

 千里が、すっげーお花みたいに可愛いくて素敵で可愛い。と彼女なりの最大限のほめ言葉を並べる。

 語句を増やそうとするあまり、同じ単語を二回言っていることに気づいていない。

「女の人なんだ」

「そう。元・湯本さんの部下でね。千里に教えていたころは警察の人だったよ、今は会社員さん」

 檜の頭の中では元女性警官で可愛いが同居しないのか、師匠の想像図を考え込んでいる。

 師匠さんのことを話していると、ミルクティーやらなんやらを抱えて二人が戻ってきた。

 最近の昼食後は私たち4人と千里を加えて5人でしゃべっていることが多い。


 檜のお父さんは人望はあったらしく、檜はこのままそんなの周りの人間の支えによって東泉高校に残れることになった。

 あの家に住み続けるのは彼なりにちょっと脳内不協和音が(またの名を心の葛藤が)おきたらしいが、時々久星や大月の家に遊びに行って泊まることで解決したらしい。

 しかし、この時期までホットの缶ミルクティーがあるのは素晴らしいね。

 久星からミルクティーを受け取って早速プルタブをあける。

 一口飲んでから、振っていないことに気づいた。

 そんな失敗を忘れるつもりで、とある最近の悩みの元になる話を皆にふる。

「……そういえばこの中で兄弟いるのって誰だっけ?」

「んあ?俺と大月じゃね?」

「そうなりますかね。それがどうしましたか会田さん」

「いや、よその家の兄弟ってどう会話しているのかなって。うちのって会話はよくするんだけど訳のわからない方向に行くことが多々あって。周りの話を参考にしようかと」

 他の4人が黙る。

 ……えーと、何か喋れなくなるほど難しい質問だったかな。

「僕の家は、兄とは喋りませんから少々答えにくいです。兄が気難しいのもありますが」

「そっか、大月の家にはお兄さんがいるのね。久星は?」

「馬鹿みてえに元気な姉とオタクな妹が一人ずつ」

 そうか姉がいるのか。

「あのさ、あのさ。久しぶりに会ったお姉さんとどう会話する?」

「えー、普通にするだろ。仕事の話とか、愚痴聞いたりとか、彼氏がどうとか」

 我が姉にそれを当てはめてみる。

「仕事の話は、うん企業秘密が多々。愚痴は、お仲間さんが皆常識からかけ離れすぎて辛いとか。彼氏は……いるのかな?きいてみよう」

「会話に困るね、史緒さんは」

 千里の言葉に素直にうなづいた。

 お互いに喋らないのも気質としてあるが、一緒に暮らし始めて一月が経過して、わかる。

 阿吽の呼吸で昔のとおりこなせる事もあるが、それ以上に5年の空白期間が大きい。

「成長しているのかしていないのか、評価しにくい」

「しなくていいんじゃぁ?」

 檜の言葉に人差し指を立てて返す。

「姉への恐怖を少しでも取り除くためにはやっておきたい。5年の間に更に怖くなってるんだ」

「まぁ、心配だよな。世話になったとはいえ、あんな男連れてきたら妹としてよ」

 久星が一般的な見解を引き出した。

「私、知らない。どんな男?」

「あー。そうですね、湯本さんに伝えやすいとなると変人、奇人の類です」

 湯本は首をかしげた。

「それ、文の傍にいる人たちと同じ」

「ちょっ、湯本は俺ら変人扱いしてんの」

 即座にうなずいた千里に3人は黙り込む。

 否定できない、どうしてだか解らない、どう辛口に返せば千里が理解できるか悩み中、というところか。

 それにしても彼氏か。盲点だったな。

 ちょっと女の子らしい話題だし、せっかく20と15の年齢になったのだ。

 一度尋ねるのもいいだろう。

「あ」

「どうした、会田」

「もう一人兄弟いる人思い出した」

 帰りにあの人にも訊いてみよう。


 放課後に一つ下の3階の教室に顔を出す。

 先輩たちが多くいる中、目的の人物に声をかけた。

「小向先輩」

 真面目な顔して同級生と話していた彼が飛びついてきたが、友人らに止められている。

「何々?」

「今日は生徒会ですか?」

「うん、あ。でもすぐ終わらせることも可能。ってか終わらせる」

「待て、今日は議題が立て込んでるぞ馬鹿」

 小向先輩は同じ生徒会執行部のメンバーに、頭冷やせと叩かれていた。

 ぜんぜん気にしていない様子の彼をみて、後日にしようと心の中で決定する。

「いえ。もう帰るので今日のお誘いは来る前にお断りしておこうかと」

「そういって、顔出してくれるのが俺への愛だよな」

「違います」

「小向君、それは私たちも違うと思っているよ」

 この前黙って帰ったら次の日が酷かったからな。

 どう酷かったかは、思い出さないようにする。

「晋作、ちゃんと普通にあいさつしろ。それが好感度アップのコツだ」

 うん、普通に挨拶できるように仕込んでくれた学友に感謝は必要だ。

「あ、会田さん」

「はい、何でしょうか小向先輩」

 いつものように落ち着けばいいのにと思う。

「ま、た明日」

「はい、さようなら。失礼します」

 頭を下げて廊下を歩く。

「めーたん、俺はやったぞー!」

「めーたん呼ぶな!ホントお前って奴は、会田ちゃん関わると性格豹変するなぁ?!」

「愛ゆえに」

 何だか聞いているこっちが耳が痛くなる気がした。

 あれでどうして2年生で生徒会長に選ばれたんだろう。

文、姉との会話に悩む


だらだらと喋る高校生を見ていると和む今日この頃、そんな感じ

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