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食人鬼による殺人事件 07

 千里の脚線美から放たれるキックはいつ見ても惚れ惚れする。

「ナイスキックだ、湯本さん。男だったら許さないぐらい」

「女で幸せだと思ってる。あんたの発言抜きで」

 お相手は小向先輩だ。

 あれくらうと、上履きのサンダルじゃなくて、ブーツだと失神ものなんだよな。

 朝っぱらから何やってんだこの人たちは。

「朝から文に何用」

「会田さんにもし変なホコリがついても大丈夫か確かめてみた」

 小向先輩は千里の蹴りを受け止めた場所を手で叩きながら言う。

「あんたが一番のホコリだ」

 昇降口で私は千里に引きづられてクラスへと向かう階段をのぼる。

 あいさつし忘れたな。


 無事に中間テストも終わって、自転車置き場で会った千里にシフォンケーキを持ってきたことを伝える。

「お昼、一緒」

「もちろん。史緒姉さんに千里のこと聞いたら覚えてない言われたけど、どこで会ったの?」

「ひみつ。それに史緒さん忘れっぽいから5年以上会ってなくてそういわれても平気」

 姉は基本的に駄目な子だからな、抜けているというか何というか。

 でもケーキのことを知っているなら、一度は姉のケーキを食べたことがあるはずだよな。

「千里、ちょっと先教室行ってて。予約するべきところがあった」

「わかった」

 教室に入る前に別のクラスへ……ああいたいた。

「ひーのきー」

「……アイちゃん、どうしたの」

 彼を見上げると目の下のクマがよくわかった。

「放課後つきあって?」

「へ?」

「約束ね。つきあってくれるお礼に先にケーキを渡しておくからちゃんと食べて」

 笑顔で彼にそういってケーキの入った包みをさしだす。

 よくわからないままの彼にケーキを渡して、手を軽くあげた。

「じゃあ、お昼私千里と食べるから。無理に誘わなくていいよ。そして、久星と大月にあげちゃ駄目」

「え、あ。アイちゃん」

 声をかけられても振り返らない。

 よく味わって食べてね、とは思ったけど。


 千里の昼食スペースはいくつかあるが、本日はテストも終わったことから先生のいる準備室になった。

「お前らなぁ。いや、反論はしないがやってること中学と一緒だろう」

 社会科目の教師の一人である笹部ささべ先生はそういいながらも紅茶缶を取り出す。

 中学で二人不登校中に勉強を見てもらった、元中学教師だ。

 転任の話を聞いたとき、笹部先生の心からの『マジか……』は一度聞く価値はある。

「気にしない。先生もいつも通り紅茶の準備してるじゃないですか」

「まあな。」

「昔からですか、笹部君のお茶のみは」

 社会史全般を教えてる老先生の小梅こうめ先生はそういいながら自分の湯飲みを出している。

 彼女の言葉に千里と二人でうなづくと、中学校から愛用しているマイカップを取り出した。

「好きなものですから。ほら、カップあっためるから」

「「はーい」」

 千里とお弁当をひろげた。

 今日の千里のお弁当は、相変わらずの純和風弁当だ。

「それで、今日はどこにデート行くの」

「デートいうなデート。関係のリカバリーしに行くんだ」

「ああ、千里がぼやいていた檜君と大月君とお前たちのクラスの……」

「久星君ですね。いつも寝ちゃう困った子です」

 クラスごと教える先生が違うからか、笹部先生は久星のことを詳しく知らないらしい。

 無言で箸を進める。

 千里も同様だが、私より少々無理やり胃にご飯を詰め込んでいる。

「まぁ、二人が無事に高校生活スタートできてるの見えるだけ、教師として幸せか」

「若いのにそんなこと言っては駄目ですよ、笹部先生」

 えっと、笹部先生今年でいくつだ。私たちのときに新任で、一年浪人してるはずだから今年で27かな。

 笹部先生には私と千里を含む不登校生メンバーがかなりお世話になったから何もいえない。

 しかし姉は今日のお弁当は考え事しながら作ったな。

 卵焼きがいつもと違って甘くない、むしろ塩味だ。美味しいけど。

「もっと女の子の昼食って私たちのころはもっと華やかだったはずなのだけど、時代かしら。」

「小梅先生、二人だけです。中学時代に二人の食事中は、おやつ時以外話しかけないのが不文律なぐらいに。」

 私は必要だから、千里も必要だから。

 特に千里は人に食事の様子を見られるのが好きじゃない。

 食べ終わり。千里もほぼ同じタイミング。

「ごちそうさまでした」

「……でした」

 そして本日メインとなるシフォンケーキ(姉特製)を取り出す。乾燥防止のワンホールです。

「先生切るので包丁ー」

「ほら。手に気をつけろよ」

 さくっと4等分にしてお皿に取り分けて市販のホイップ済みのクリームをかけた。

「小梅先生、笹部先生どうぞ」

「あらあら、ありがとう会田さん」

「うん、ありがとうな」

 そして一番大きな部分を千里に渡す。

「ありがとう」

 彼女は嬉しそうに受け取り、箸でつまむ。

 よかった、千里がちゃんとケーキを受け取ってくれた。

 それだけで、姉に頼み込んだかいがある。

 笹部先生と一緒に千里に何とかして食事とらせようとがんばったもんなぁ。

 などと、しみじみしながら、紅茶を飲んだ。


 私の姿を見て逃げようとした彼を大月が捕獲してくれた。

「ノゾちゃん、放して」

「お断りします。興味深い絵になりますから」

「ありがとう大月。さて、付き合ってね檜」

 檜の服の裾をつかんで、放さないように引いた。

「ノ、ノゾちゃん一緒に来て!」

「あなたは小学生ですか。僕は久星とゲーセンに行ってきます」

 デートだデート。

 どうせ大月のことだ、この前の頼みをしたのは自分だからと久星と尾行するに違いない。

 自転車に乗らず転がしながら校門の外に出る。

「アイちゃん、どうするの?」

「ここからだと、檜の家のほうが近いっけ」

「近いけど……」

「よし、じゃあ行こう」

「ぼくの家に?!」

 だって、家に入れるとまた姉がぐずる。

 ならいっそのこと相手の家にいったら問題あるまい。

「この前さー、お弁当練習中って言ったよね」

「うん、聞いたけど」

「今、姉が仕事で忙しいからね。明日ひとりで夕飯作ってみようと思うんだ」

「それで、何でぼくの家」

「味見&料理を教えてほしいなって」

 檜は目をぱちくりさせて、その後気づいたように首を横にふった。

「だめだめだめだ!ぼくの家汚いし。」

「でも、もうお礼のケーキ食べちゃったよね?」

 しまったという顔の檜を見るのも楽しい。

 普段一緒にお昼を食べてるだけじゃ見れない姿だ。


 スーパーで食品を購入した後、彼の家に向かう。

 一軒家で、どうやら持ち家らしい。

「あれ、思ったよりきれいだ」

 少しほこりっぽいところを除けば、ごく普通の家だ。

「自分ひとりだと、つい適当にするから」

 ダイニングキッチンは人が入っているな、久星とか大月か。

「あの二人入り浸っているね」

「うん。3人でよく飯作ったりとか」

 調理ノートと書かれたものがある。檜の字だ。

「読んでいい?」

「……これは駄目、こっちなら」

 これは知らない字だ。お母さんのかな?

「おー本格的」

「気になったのあれば貸すよ。エプロン庭に乾しているからちょっと持ってくる」

 その部屋に一人きりになって、ノートを拾い読みする。

 ……姉や母のレシピノートは基本のものにアレンジ加えて書き込みするかな、純粋に手書きのレシピは新鮮だ。

 他人の家の味付けって食事のマンネリ化打破に有効だよな。

 例のから揚げの味付けレシピを知りたい。

「……から、父は……てきて…」

 檜誰と話しているんだ。

「ひーのきー?」

 声のするほうへ歩いていくと、檜がスーツ姿の男性二人と話しているのを見つけた。

 あら、知り合いがいる。

 困っている様子の檜を見て、どちらに加勢するかを決めた。

男の子の家に料理を習いに行く主人公の図

文は絡みやすいので檜のことは気に入っています


欄外人物紹介 (とばしても問題ないです)


笹部功ささべいさお:東泉高校社会科教師 男

文と千里の中学時代からの恩師、新任で不登校児の面倒みていた人

専門科目は倫理、ですが他の社会科目も教えてます

お茶やコーヒーに詳しくこだわる人です


小梅里こうめさと:東泉高校社会科教師 女

東泉で最高齢のおばあちゃん先生、通称小梅ちゃん

専門科目は社会史全般、以前は大学講師だったそうです

銀髪が美しい素敵なおばあちゃまと皆に大人気です

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