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短編小説 「傀儡」

作者: 神門 澪
掲載日:2026/03/14

もし最初から何も聞かなければ、私は誰かを友と呼べたのだろうか。


#短編小説 #創作

 私は人に好かれやすい。

 皆が私に本音を話す。

 想い人のこと。失敗したこと。誰にも言えないような弱み。

 それらはすべて、なぜか私のところへ集まってくる。

 ある日、友人が言った。

「これ、誰にも言うなよ」

 そう言って笑いながら、自分の秘密を打ち明けた。

 私はいつものように頷く。

 だがその瞬間、胸の奥で小さく何かが沈むのを感じた。

 また一つ、私はこの人の弱みを知ってしまったのだと。

 私は友と呼べる存在がいない。

 いや、前まではいたのかもしれない。

 ただ、時の流れとともに考え方が変わり、私の中で友という言葉の意味が変わってしまった。

 皆、私を好いてくれる。

 暇な日には誰かとご飯に行き、遊びに行き、くだらない話をする。

 だが、どこかで必ず本音を打ち明けられる。

 それは信頼なのだろう。

 私も最初は嬉しかった。

 だが、ある時から思うようになった。

 これは信頼ではなく、私が相手の弱みを握っているということなのではないかと。

 もし私がその秘密を口にすれば、その人の人生は簡単に崩れてしまうかもしれない。

 だからなのだろうか。

 本音で話しても、喧嘩をしても、相手はどこか一歩引いている。

 私がわがままを言っても、誰も強く否定しない。

 ある日、冗談半分でこう言ったことがある。

「もし言いふらしたらどうする?」

 友人は笑った。

 だが、その笑いはどこかぎこちなかった。

「お前は言わないだろ」

 そう言いながら、目はほんの少しだけ逸れていた。

 その瞬間、私は理解した。

 私はもう、友達ではないのかもしれない。

 気づけば私は多くの秘密を抱えていた。

 そして多くの人と仲良くなっていた。

 いつからか、周囲は私をこう呼ぶようになった。

 情報屋、と。

 だがその呼び名を聞くたびに、胸の奥が少しだけ冷える。

 私は誰の秘密も守っている。

 それでも、誰のことも信じることができない。

 もし最初から何も聞かなければ、私は誰かを友と呼べたのだろうか。

 私は多くの秘密を知っている。

 それなのに、私は誰一人として信じることができない。

 気づけば、外では落ち葉が風に流されていた。

 私もまた、その一枚なのかもしれない。

信頼の証だったはずの告白。

けれどそれは、主人公にとって呪いだった。


秘密はいつしか、人を縛る糸になる。


短編小説「傀儡」を書きました。

よければ読んでみてください。

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